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■ とべない学芸員
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ヒヨケザルと同じ??
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空をとぶことには特別なあこがれがあります。かのレオナルド・ダ・ビンチも、空を飛ぶための道具のスケッチを残しています。
けもののなかまでは、はばたいて飛ぶことができるコウモリのほかに、ムササビなどグライダーのように膜をひろげて滑空する能力を身につけたものがいます。インドネシアの研究者と共同調査をしているマレーヒヨケザルは究極の滑空動物ともいえるほど広い膜をもっています。
ところで、動物学者は調べている動物にどことなく顔つきや仕草が似てきます。ネズミの研究者はなんとなくネズミに、サルの研究者はサルっぽく、タヌキならごそごそと、キツネならちょっとすまして、などなど。逆に、その動物に似てきてようやく一人前とも言われます。
くだんのヒヨケザル、とてもよく寝ます。B学芸員は「空飛ぶナマケモノ」と呼んでいます。夜行性ですから、昼間の12時間は動きません。夜間でも、ちょっと動いていたかと思ったら、枝にぶらさがったり幹にしがみついたりして休みます。ある夜の9時半ころのこと、ぶらさがって休んでいるのを見つけました。一時間後、様子をみるとまだ同じ場所でじっとしています。二時間後、変化はありません。三時間後、四時間後・・・。結局、動き出したのは7時間も後の明け方近く、4時半ころ。5時半ころには明るくなりますから、あと活動できるのはがんばってもせいぜい1時間です。B学芸員、いくら観察しても飛べるようにならないのは仕方ないとして、「あまり似たくはないもんだ」といいながら、どことなく似ている?
ヒヨケザルやナマケモノの名誉のために付記すると、彼らはなまけているわけではありません。食べ物の消化に時間がかかったり、できるだけエネルギーを節約するような戦略をとっているらしいのですが、それはこれからの研究課題です。特別展では、そんな珍獣たちもたくさん登場します。
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