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■ 木の実の季節の不思議
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どんぐりvsねずみ
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ここにきて、ようやく本格的な秋を感じるようになってきました。野山の植物もみのりの季節を迎えたようです。木の実は、動物にとっての貴重な餌となります。でも木の実は、ただ食べられているだけではないのです。
果実を鳥類に食べてもらい、果実に含まれていた種子を糞とともに排出してもらうことで、色々な場所に種子を運んでもらっている植物は数多くあります。このようなタイプの木の実をつける植物にとって、木の実を食べる鳥類は非常にありがたい存在です。このため植物は、鳥たちに気に入ってもらえるよう、栄養のある実や鳥類に目立つ色をした実を進化させてきたと考えられています。さらに、温帯域の植物の多くは、果実の成熟期を渡り鳥の飛来時期と合致させていると考えられています。秋~冬に熟する木の実が多いのは、このためであるとも言われています。
一方、みのりの量が年ごとに大きく異なる『豊凶(マスティング)』という現象を示す植物も知られています。中には、同種の植物の豊凶が広い地域で一致する例まで報告されています。このような不思議な現象は多くの生態学者を魅了し、この現象の理由を説明する仮説がいくつも提唱されています。それらの中から、ちょっと面白い仮説をご紹介しましょう。
ブナ科の樹木はネズミなどに食べられればそれでおしまい・・・といった実(いわゆるドングリ)をつけますが、数年間連続して凶作にすると憎っくきネズミたちの数が減少してしまうかも知れません。そうなった後に大量の実をつけると、沢山のドングリが生き残れるようになる、という訳です。『植物が動物の数をコントロールする』とも言えるこの仮説は、時間的逃避仮説あるいは捕食者飽食仮説と呼ばれています。これまでに、この仮説が成り立たないことを示す観察結果が報告されている一方、この仮説を支持する観察結果も多数報告されています。「植物の豊凶」という同一の現象ですが、それが起こる原因は、どうも沢山あるようなのです。
しかしながら、以前にご紹介しましたとおり、ドングリもいろいろな所に運んでもらうためにネズミを利用しているようなのです。自然界の仕組みは複雑怪奇、一筋縄では理解できそうもありません。
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