-
■ 新属新種のシーラカンス パルナイバイア
-

パルナイバイア
|
新属新種のシーラカンス パルナイバイア
シーラカンスは南アフリカとインドネシアの深い海に2種がすんでいます。南アフリカのシーラカンス(学名の日本語読みはラティメリア カルムナエ)とインドネシアのインドネシアシーラカンス(ラティメリア メナドエンシス)で、いずれもラティメリア科に属しています。現在のシーラカンスはこの2種だけですが、化石は80種以上が知られています。
ラティメリア科に最も近いシーラカンスの仲間は中生代のマウソニア科です。マウソニア科のシーラカンスは淡水性で、北アメリカから化石が発見されている三畳紀のチンレアと南アメリカとアフリカから化石が見つかっている白亜紀のマウソニアとアクセルロディクチスがいます。三畳紀と白亜紀の間にはジュラ紀があり、このグループの化石記録には約1億1000万年もの空白期間がありました。この空白を埋める化石が発見されたのです。
写真の化石がそれで、アースモールの右側(スペースワールド駅側)の壁にウィンドーミュージアムとして展示されています。2000年にイギリスのポーツマスで開催された学会に出席した時にこの標本の存在を知り、入手することができました。当館がオープンした2002年に現在と同じ場所に“シーラカンスの一種、時代は三畳紀”というラベルを付けて展示したのですが、入手前から新種であることが分かっていたので、一年後に展示から外して研究することにしました。
研究の具体的な方法は写真撮影、詳細なスケッチ、骨格の記載、他のシーラカンスとの比較などです。スケッチは骨を一つ一つ何という骨か確認しながら描いていきます。時には顕微鏡の下で骨を被っている石の部分を取り除きながら骨を確認していきます。そして、化石シーラカンスの論文を集めて、これまでに報告されている化石種との違いを調べました。論文に書かれていない部分については論文に使われた標本が保存されている海外の博物館に行って標本を直接観察しました。その結果、この化石はマウソニア科のシーラカンスで、新属新種であること、時代は三畳紀ではなく、後期ジュラ紀が妥当であることが判明しました。このシーラカンスを産地のブラジル北東部のパルナイバ州マラニャンに因んで、Parnaibaia maranhaoensis(パルナイバイア マランハオエンシス)と命名し、日本古生物学会の英文誌に投稿、2008年に論文として発行されました。
論文の内容は、この化石がマウソニア科の新属新種のシーラカンスであること、約2億2000万年前の超大陸パンゲア(南北アメリカ、アフリカ、南極、ユーラシア大陸からなる一つの大陸)に生息していたシーラカンスのチンレアが、その後の南北アメリカの分裂とともに分布域が分断され、ジュラ紀に本種パルナイバイアが南アメリカに出現、そして白亜紀になってアクセルロディクチスとマウソニアへと進化したというものです。すなわち、この化石はマウソニア科のシーラカンスが大陸の分裂と移動に伴って進化したことを示す重要な証拠の一つとなったのです。
このウィンドーミュージアムでは、論文に使った実物標本(完模式標本:学名を与える時の基準となる一個の標本)を展示し、大陸移動と進化の様子を解説しています。世界唯一の素晴らしく保存状態の良い化石です。この美しい化石を見ながら雄大な地球の歴史に思いを馳せるのも良いかもしれません。
自然史課 学芸員 籔本 美孝
|