埼玉県警本部=鈴木拓也撮影

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 NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を悪用した商品詐取事件で、埼玉県警などの合同捜査本部に逮捕された商品購入役の中国籍の男性容疑者が、中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」で指示役とみられる人物からパスワードなどの情報を伝えられていたことが捜査関係者への取材で判明した。捜査本部は、中国の犯罪組織が不正に関与しているとみて調べている。

<ドコモ口座不正引き出し>被害拡大の背景は?

 捜査関係者によると、中国系アプリの使用が判明したのは同県所沢市の大学生、王允程容疑者(24)。王容疑者ら中国籍の男女3人は1月19日、約44万円相当の物品を不正購入したとして詐欺などの容疑で逮捕された。捜査本部は9日、さらに約34万円分の不正購入にも関与したとして、同容疑で3人を再逮捕した。

 ドコモや捜査本部によると、指示役とみられる不正利用者は被害者になりすまして被害者の預金口座をひも付けしたドコモ口座を勝手に開設し、預金を送金。王容疑者ら「買い子」が、ドコモ口座と連携したスマートフォン決済「d払い」で商品を不正購入していたとみられている。

 捜査関係者によると、王容疑者はスマホの解析などから、指示役とみられる人物と「微信」でやり取りし、「d払い」に必要なパスワードやIDを伝えられていた。また3人の通信記録を解析したところ、ドコモ口座開設に必要なアカウントが何者かによって不正に取得されてから24時間以内に商品が不正購入されていたことも判明した。

 3人は約10日間に約670万円分の物品を不正購入したとみられている。3人の一部は物品について「知らない人に渡した」「自宅から発送した」などと供述しているという。捜査本部は、中国の犯罪組織が不正発覚を防ぐために「買い子」に短時間で大量の商品を購入させ、換金目的で物品を送らせたとみている。【成澤隼人、中川友希】