和歌山市と酷似した経緯、不透明すぎる選考経緯

 第一に、門真市の計画は京阪電鉄古川橋駅の再開発事業に組み込まれており、「賑わい創出」に力点が置かれていること。寂れつつある古川橋駅北口に賑わいを取り戻すために、廃校になった中学校跡地を活用しようということから始まったプロジェクトだった。

 和歌山市百貨店撤退後の南海市駅前再開発の一貫として、新市民図書館を建設移転したのとよく似た経緯である。再開発の総事業費は127億円(うち複合施設建設費は50億円)で、和歌山市の123億円とほぼ同規模。複合施設の基本構想を担当したコンサルタントについて問い合わせてみると、これも和歌山市と同じくCCCのフラッグシップ・代官山蔦屋書店を手掛けたール・アイ・エー(RIA)というから、二度びっくりした。

 2012年に行われた門真市複合施設の基本構想・基本計画の立案業務の指名競争入札には2社が応札した結果、RIAが380万円で落札していたことが判明。これについて、建築業界に詳しい関係者に聞いてみると、こんな感想を漏らした。

「タダみたいな価格です。いわゆる1円入札と同じ(構造)です」

 ダンピング価格で調査業務に入り込み、その後、プロジェクト全体の設計業務も受託しようというもくろみなのだろうか。和歌山市では国の補助金が47億円(うち図書館建設への補助は15億円)も投入されたが、門真市でも複合施設建設にかかわる50億円のうち4割(約20億円)を補助金でまかなう計画だという。

大阪府門真市、ツタヤ図書館建設に50億円投入…CCCの公共施設受託、また不可解な選考の画像2
門真市議会議員 福田英彦ブログ サウンディング型市場調査の提案内容は「のり弁」! 2020年02月06日 https://kadomasigi.exblog.jp/30703415/より

 第二に、事業プロセスが不透明なこと。上の写真は2019年12、門真市の福田英彦市議が市当局に開示請求して、翌年2月に開示された再開発事業の提案資料である。

「門真市旧第一中学校跡地整備活用事業」に関する提案を民間企業から「サウンディング型市場調査」という方式で募集。サウンディングとは、民間事業者との対話形式で自由な提案をしてもらう方式のこと。気楽に参加してもらえる半面、提案した企業名や詳しい提案内容は公表しなくてもよいとされており、昨年CCCによる賑わい施設を検討していた山口県宇部市でも、この方式が採用された(CCC提案を基にした施設条例は、その後の議会で否決)。

 開示結果は、見ての通り約120ページのほとんどが真っ黒の”のり弁”状態。提案内容はもちろん、提案企業名も”企業秘密”扱いで不開示。2018年に和歌山市が、筆者の情報開示請求に対して、関係者会議資料1400枚の97%を黒塗りで開示してきたのと、これまたソックリだ。

 すでに同地域に生涯学習施設や交流広場を整備し、その周辺に高層共同住宅や商業ゾーンを配置する基本計画は確定。その具体的な手法についての提案を覆面方式で募るという珍妙な公募で、募集期間は2週間足らず。専門チームによる検討も、たった1カ月。その結果、新図書館の指定管理者が施設の基本設計から関与していくデザインビルド方式を採用する方向が示されたという。営者が設計段階から関与して独自の空間演出をしていく”ツタヤ図書館方式”へのレールが、この段階できれいに敷かれたかのようだ。

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