子どものころよく通っていた駄菓子屋に、おっぱいプリンという駄菓子が置いてあった。
 一口サイズのプリンで、ビニールの容器が半球型で、底にわずかな突起があり、乳首よろしく食紅が小さな桜色を作っていた。
 一口サイズとはいえ、見た目はまさにおっぱいだった。
 まだ小学生だった俺たちにとって、おもしろがる格好のネタだったが、おっぱいプリンを食べるとネタですまない不思議なことが起こる。
 おっぱいが出来るのだ。
 小学生の男の子でも、年と体格相応にAカップにも満たないであろう大きさだったが、風呂で見た母親の乳房とそっくりな形に、自分の胸が膨らんでおっぱいになるのだ。
 胸が膨らんでいる時間は三十分ほど。
 子どもだった当時はそんな不思議なことを不思議とも思わず、ただ小さくとも膨らんだおっぱい触って、その柔らかさに驚いたり騒いだりだった。
 今考えても不思議としか言いようがないことだが、俺にとって忘れられない出来事が、おっぱいプリンにはある。
 何を隠そう、俺の精通はおっぱいプリンで体験したのだ。
 俺が小学五年にあがって少し経ってからだ。いつものように学校帰り、駄菓子屋のお婆さんからおっぱいプリンを買い、口に放り込む。
 五年生になってから前よりも胸が大きく膨らむようになり、揉み応えが増して毎日楽しみにしていた。
 今考えると、思春期に入ったことが影響していたんじゃないかと思う。
 とにかく、俺はいつものように、膨らんだ胸の感触を楽しみにしておっぱいプリンを食べた。
 そのころはすでにおっぱいに対して性的な認識を持っていたのだろう。股間のものは硬く充血しており、期待と興奮にズボンを突き上げていた。
 一分も経たず、胸が膨らみだす。待ちきれずに自分の胸を掴み、膨らみ続ける胸を揉み始めた俺だったが、いつもと違う感覚が股間にあった。
 なにか、じわじわと中から突き上げるような快感。
 おしっこを漏らしてしまうような、でもそれとは明らかに違う、体験したことのない快感。
 乳房となった自分の胸を抱きながら腰をガクガクと震わせ、「あっ、あ、あぁっ!」と声をもらしたのを覚えている。
 そうして、パンツの中に初めての精液を放ったのだ。
 押し寄せる波のような快感に翻弄され、三度ほど腰を突き上げて出し尽くした俺は、ふらふらと駄菓子屋の床に座り込んだ。
 うちっ放しのコンクリートの冷たい感触と、放ったばかりの熱い精液であふれるパンツ。
 胸は、手の平からあふれるほど大きく膨らんでいて、奥にしこるような固さと、尖るように立った乳首があった。
 震えながら座り込んだ俺を見た駄菓子屋のお婆さんは慌てて俺に駆け寄った。
 そしてお漏らししたように染みたズボンを見、すぐに店の奥へ通してくれた。
 そのあとの記憶はどうにも曖昧だ。ズボンとパンツを脱がされ、ティッシュで股間を拭いてからタオルを渡された。それで股間をくるむように言われ、洗濯が済むまで待つように言われた。
 それから、胸が元に戻るまでだから、たぶん三十分くらいだろう。
 タオルに包まれた股間のものはずっと固くなったままで、少しするとまたあの気持ちいいのがやってきた。
 そのたびに腰を震わせ、声をもらし、タオルに精を放った。そして俺が射精するたびに、胸が大きく膨らむのだ。
 小学生の手だったが、最終的には、両手からあふれるほどの大きさになった。
 しばらくしてから押し寄せる波が収まり、洗濯が終わるころには胸はしぼみ、元のまっ平らな小学生の胸に戻った。
 そして駄菓子屋のお婆さんは俺を送り帰すとこう言った。
「あんたにはもうおっぱいプリンを売れなくなったよ」
 それからお婆さんの宣言どおり、俺はどんな手段を尽くしてもおっぱいプリンを手に入れることが出来ず、やがてオナニーを覚えてあの時の追体験で自分を慰め続けて――
 そうして十年が過ぎた。


 今考えればあまりに不思議というか異常というか。
 しかし、あの強烈な快感、初めての射精の快感を、俺は今まで片時も忘れられなかった。
 あれからおっぱいプリンのことを周りの連中に聞きまくって調べ続けた。
 すると、俺と同じ体験をしたのは他にもたくさんいたのだ。
 男だけじゃない。女の子の中にもあのプリンをよく買っていた子がいて、胸が膨らんだまま戻らなくなったのだ。
 そのうちの何人かは高校まで一緒だったが――全員、小柄で華奢な体格ながら、FやGではすまないほどに成長している。
 あの駄菓子に何があったのか。今考えればホルモンとか薬物とか、いろいろ思いつくが、結局俺が思い至るのはただひとつ。
 もう一度おっぱいプリンを食べたい。食べて、またあの快感を味わいたい。自分のおっぱいを、自分で思う存分揉み尽くしたい。
 そしてあれから十年。駄菓子屋のお婆さんが亡くなり、店を閉めるという話を聞いたのだ。
 独り身だったお婆さんの葬儀は市と近所の人たちが執り行っていて、昔なじみの縁でご焼香したあと、俺は店の倉庫に入り込んだ。
 別に忍び込んだわけじゃない。お店の駄菓子が懐かしい、と言ったら、なら持って行ってもいいよ、と葬儀を執り行っているおばさんが言ってくれたのだ。
 そのほうがお婆さんも喜ぶだろう、と。
 とにかく俺は倉庫で箱詰めにされていたおっぱいプリンを見つけ、あるだけ持ち出した。
 そしてこれから、十年前の精通を再体験するのだ――



 服を脱いで全裸になり、姿見の前に立つ。
 どこにでもいる成人男性の姿だ。平均的な身長に適当な筋肉。髭の剃り跡がある顎にそこそこ濃い腕毛やすね毛。薄い胸毛に腋毛と、当然股間にも黒い体毛が茂っている。
 股間。すでに精通の再体験を期待して、固く反り返っている。
 見慣れた姿をいつまでも見ている理由などない。俺は手にしたおっぱいプリンの封を切り、口に放り込んだ。
 懐かしい甘み。歯に当たるまでもなく舌と上あごに潰され、数秒と経たず嚥下した。
 どんなことが起こるのか、期待に鼓動が高鳴る。
 鏡の自分を凝視し、最初に異変が起こったのはやはり胸だった。
 もともと薄かった胸毛が消えていき、乳首の色が薄く桜色に染まってピンと立つ。
 我慢できずに手で胸を触る。固く勃起した乳首。その下で肉がしこり、それがどんどん大きくなっていく。
 まだ乳房とは呼べない、固くしこった胸。と、股間に感じた快さに腰が震えた。
「あっ、あ、あぁぁ……!」
 あの時の再現だった。反り返ったペニスの先端からダラダラと透明な粘液があふれ出す。
 腰が震えて先走りが飛び出し、鏡に少しだけ飛び散った。
 触ってもいないのに射精してしまう――。
 胸は柔らかな感触を持ちはじめ、手の平いっぱいになるほどの大きさになっている。
 腰の震えが止まらず、ひざを着いた。左手を床に付いて、右手は乳房になり始めた自分の胸に。
 鏡に中には、四つん這いになって自分の乳房を揉みながら股間を勃たせて汁を垂れ流し、快感に喘ぐ男とも女ともわからない自分が映っている。
「あ……あぁぁ! イっ――あっ、イク――!」
 右手が乳房を圧迫すると同時に、ペニスの先端から白濁が飛び出した。
「あ、ああぁ――! あぅ、うぁ、あぁ――!」
 あわれもない声を上げて、床に精液が飛び散る。腰の震えが止まらず、射精も止まらない。
 乳房を掴む右手の指が内側から押し返される。胸が射精の脈動のたびに大きくなっている。すでに手の平では乳房の半分も隠せていない。
 射精が一段落して、少し落ち着くと、腕やすねの毛が薄くなっているのに気づいた。
 それどころか、体が縮んでいるような気もするし、肌も白く、まるで女のように――
 押し出されるような快感がまた股間に溢れてくる。
 二度目の射精が始まろうとしている。
 そこで俺は初めてこの事態に恐怖を感じた。一度目の射精で膝元の床は白濁で覆われており、明らかに異常な量。
 これだけの精液が蓄えられていたとは思えない。
 そして射精のたびに乳房が大きくなり、体毛が薄くなって、体格や肌まで変わっていく。
 まるで、男の成分を精液にして排出しているように……。
 このまま射精し続けたらどうなるのか?


 すでに乳房は両手でも持て余すほど大きくなり、ゆらゆらと揺れる乳房に隠れて股間を確認することが出来ない。
 鏡に映して見ようと、ひざ立ちになったところで、腰が震えて快感と共に精液を噴き出した。
「うぅっ、あっ! あぁ……!」
 腰どころか全身を痙攣させ、精液を鏡にぶっかけていく。いや、それが精液なのかはもうわからない。
 正体不明の白濁を噴き出すたびに、胸が大きくなり、肌が白く、背が縮み、腰がくびれて肩や腕、脇腹のラインが細く官能的な曲線を描いていく。
 射精が終わる。荒い息をつきながら鏡の白濁を拭う。
 すでに腕や脚に毛は一本もなく、つるりとした白い肌。その下には筋肉ではなくしっとりとした脂を宿してふくよかな印象を持たせている。
 背は明らかに縮んでいる。ひざ立ちだから余計そう見えるにしても、たぶん一六〇を下回っているだろう。
 それにともなって手も小さくなっているだろうが、それにしても――乳房は、手を広げてもその球体の三分の一も隠せていない。
 カップサイズにしたらHか、Iか――。心地良い重さが肩と下から持ち上げる手の平に感じる。
 それほどの大きさ、重さでありながら重力に逆らうように前に突き出て、白く瑞々しい肌がふくよかな曲線を描いていた。
 その球体の頂点には可愛らしい桜色咲いており、俺の動きに合わせてぷるぷると震えている。
 鏡から白濁を拭い、自分では見えない股間を凝視する。
「あぁぁ……」
 男の象徴は、あった。
 背が縮み、筋肉も体毛も失って、芸術的な巨乳を胸に実らせて、それでも確かに、俺のペニスは股間にぶら下がっていた。
 同時に、鏡に映った自分の顔を見る。
 やはりというか、以前の面影はない。細面ながら丸みを帯びた輪郭に瑞々しくきめ細かい肌。髭の剃り跡などあろうはずもなく、いくらか伸びたらしい髪の毛は濡れたような光沢を放ってショートカットを形作っている。
 つぶらな瞳にまっすぐに筋の通った小鼻、薄い唇。
 どこともいえないどこかに数分前の俺の特徴をわずかに残すだけで、股間以外は完璧なプロポーションと美貌に、豊満すぎるほどの乳房を実らせた美少女と化していた。
「すごい……」
 快感に朦朧とし、股間のものを確認した安堵から、とりあえずそんなことをつぶやいた。
 その声ですら、澄んだソプラノ。
 と――
「あぁっ!」
 わずかに残った腋と股間の体毛が薄くなり出し、瞬く間に消えてしまった。
 同時に、肉棒があふれるような快感にビクンビクンと上下しだす。
 こんなになってまで、まだ射精する――? これ以上射精したら、どんな姿に――?
 恐怖と、同時に期待。
 股間のものが消えてしまうのではないか。戻れるのか。もっと胸が大きくなるのか。これからもっと綺麗になるのか――?
 複雑な感情が入り交じり、混乱した気持ちのまま先端から白濁があふれた。
 三回目ともなるともう最初のような勢いはない。漏れ出るようにどくどくと、白濁した粘液が先端からこぼれ、そこだけ男を残した肉棒を伝って床に滴っていく。
 力なく射精が続く。相変わらずの快感。脈動のたびに変化する身体。
 射精が止まらない。快感は増していく。身体の変化は留まるところを知らず――




 もとの姿に戻れたのは、プリンを口にしてから十時間も経ってからだった。
 あれから三十分間悶え続け、最終的に股間のものも白濁液に溶けてなくなり、完全な女の子に変身した。
 射精した分変化が続き、落ち着いてから色々調べたりしたが、結局身長は一五〇ギリギリまで縮み、髪はボブカットほどまで伸びた。
 バストは一〇〇センチ前後まで大きくなり、アンダーが六〇と少しだったから、LないしMカップ相当、ということになる。
 おっぱいばかりに気を取られ、ウェストやヒップのことをすっかり忘れてしまったのは失敗だった。
 とにかく、それから数時間、女の子の姿で過ごした。といってもすでに異常な量の射精にすっかり参っていた俺は床の白濁液を片付け、裸のままベッドに横たわり、再び体に変化が訪れるまで気を失っていた。
 股間に生じた感触に起き上がって鏡で確認すると、そこに小さなペニスがのぞいていた。
 小指ほどの、幼児程度のモノだったが、男に戻り始めたのだ。
 が――そこからが試練だった。
 小さなそれは瞬く間に固く反り返り、じりじりと快感をあふれさせ始めた。
 最初は何が起こったのか混乱するばかりで――快楽にまかせて白濁を放ってしまった。
 すると、また胸が大きくなり、背が縮み、腰の曲線がより顕著になった。おそらく髪も伸びたのだろう。
 まだ変化は終わっていなかったのだ。
 だが、今回の射精は我慢できないわけじゃなかった。そしてこれは我慢しなければならないと直感し、俺は試練に臨んだ。
 何度快楽に押し流され、射精してしまったか。
 一時間以上悶え続け、その間にも胸や身長が変化していたから最終的にどんなプロポーションになったのかはわからない。
 そして快感の波が治まり、ある程度落ち着くと、胸がしぼみ、背が伸び、脂肪が筋肉に変わり、そして体毛まで元に戻り始めた。
 その変化が始まればあとは早かった。
 そしてもとの姿に戻ったのだが――駄菓子屋のお婆さん、こんなものをどうやって手に入れたのだろうか。
 いや、それより、あのまま快楽に流されて射精を続けていたら、どうなっていたのか。
 お婆さんがあの時俺の精通に気づいて売るのを辞めてくれなかったら、俺はそのうちとんでもないことになっていたのではないか?
 このおっぱいプリンは危険だ。
 もしかしたら、取り返しのつかない状態に陥るかもしれない。
 でも――
 箱からおっぱいプリンを取り出して眺めてみる。
 見るだけだ。指先で転がし、形を確かめる。半球の先端、乳首を模した突起に触れ、股間がぴくりと反応した。
 封を切る。ただフタを開けただけだ。食べなければ大丈夫。口をつけ、含む。
 噛まなければ、飲み込まなければ大丈夫――。
 甘みが広がり、吐き出すことを思いつく前に嚥下した。
 大丈夫。また、最後の射精を我慢すれば戻れるから――
 鏡の中で、胸がまた膨らむ。すっかり反り返ったペニスの先端からは、早くも白濁した汁があふれ始めていた。

おわり
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