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ある特殊能力を備えた人

作者:ナオ

自分はゲームが好きだ。

でも人生はやり直しがきかない。

もしもゲームの様にセーブ&ロードが出来たなら・・・。

 僕はゲームが好きだ。

勿論この世界はゲームの様にセーブ&ロードが出来ないただ1度きりの人生。

現在の記憶を持ちゲームの様に人生をやり直して別の選択を選んだ道を進んで来ていたならどの様な道を過ごしてきただろうか。

小説の様に未来の知識を持つから成功していただろうか?

もしくは知識がある故不幸な道を歩むだろうか・・・。



ある日の事、夢を見た。

内容はにわかに信じられないが、『君に特殊能力を授けよう。目が覚めたら確認してみるがよい。』

と何者かが言い放った。


翌日目を覚ますと見知らぬ空間にいた。何事かと思い辺りを見回すと白い空間にいる事が判る。

しばらくするとどこからともなく何者かが現れた。その者は人形の様であり、妖精の様でもある。

その者にふと聞けばその時により姿、形を変える事ができ今からチュートリアルを説明すると言われた。

何の事かと思っていると、


「君に特殊能力を与えた。まずは説明をするからよくお聞きなさい。」


何者かの説明によると、ゲームで言う所のセーブ&ロード、性別変更その他もろもろゲームでよく聞く内容であった。

忘れない様に説明文として設定に記るすとも言われた。


現在の人生を主体として、設定を変える事が出来るらしい。

ひとまず試しとして性別を変更してみた。

他にも現在の僕の容姿を基準としての基本体型、設定による体型の変更、例えばプロポーション等の設定等が出来るらしいがおいおいと試そうと思う。

聞く所によれば、自分自身じゃなく自分と同じ世界で生きる事が出来る自分と言う物もあるらしい。

すなわち自分自身がいるが、自分と接する事も出来るし、赤の他人として関与しないと言う事も出来ると言う。


まずは性別の変更だけして記憶を持ちつつどの様な人生を歩む事になるのだろうか・・・。


「では、準備が出来たなら言いなさい。念じればまたここの場所に戻り設定し直す事が出来ますから安心なさい。」


僕改め私は心の準備ができた事を言うと、しばらくして視界が暗転した。




私は気が付くと若かりし頃の両親がそばにいた。まずは自分の姿の確認とばかりに鏡を見に行く。

確かに性別が変わっていた。試しに手足を動かしてみると鏡の中の私も動いていた。

気になる自分の声を録音してみて聴いてみると満足する声だった。


気が付くと元の人生では他界していた祖父母がいた。

なつかしさのあまり、思わず抱きついてしまい困惑されてしまった。


「あらあら、この子は。どうしたのかな?」


「ううん、何でもないの。しばらくこのままでいさせて・・・。」


「おやおや、甘えん坊さんだね~。」


しばらく抱きついた後、名残惜しいが離れた。

それから可愛らしい衣装を着せられ、これから外出すると言う。


「なにかあるの?」


と私は聞くと、


「今日はあなたの誕生日でしょ?」


言われてカレンダーを探し、今日の日付を聞く。

確かにカレンダーの所に私の誕生日で花マークがついていて、備考欄になにやら文章が書いてあった。

よく見ると私の誕生日の事が記るしてある。


近くのレストランに予約をしており、私の誕生日会が行われ無事終了した所でふいにお手洗いに行きたくなりいつもの様に1人で向ってしまい用を足してトイレの外に出た所、見るからに怪しい人物に声を掛けられレストランの外に連れ出されようとされ家族や店員に助けを呼ぼうとしたら口をふさがれ荒い息で興奮した顔を近づけられ一言言われた。


「お嬢ちゃん、1人での行動は危ないぜ~。これから楽しい事しようね~。」


私は今現在の状況を把握する。小さい子が親も同伴せず1人で個室に来た。多分私の事を狙って来たのだろうと悟った。


『いけない。このままの状態だとどうなるかわからない。』


おのれの不注意さを悔やみ、この先の危険を防ぐ為早速能力を試してみる。


念じると時間が止まり、セーブ&ロードの画面が出てきた。どの時間でロードするか選ぶ事ができ私はお手洗いに行く前に選択した。すると見知らぬ人に連れ出されようとする前に戻り親同伴でトイレに向かった。

ひとまず事態を回避し、能力のすごさを知る事になった。

ちなみにやり直す前の連れ出された後どうなるかもロードすればわかるらしいがとてもじゃないが試す気にはなれなかった。どうせ不幸が待っているだろうから・・・。


とどこおりなく誕生日会が終わり帰宅の途につく。

家について衣装を着替えお風呂に入ったが、まるで洗髪や身体の洗い方もろもろ手順や仕方がわからない。

まごまごしていると、怪訝そうな顔の親がお風呂に入ってきて、「どうしたの?」の声を掛けてくる。


「ううん、なんでもない。」


湯舟につかりながら答えた。


「そう。では洗髪と身体を洗いましょうね。仕方は覚えた?」


と言ってきた。

すかさず今はまだ練習中なのだと理解し、


「ううん、まだ。また教えて。」


と言い、教えてもらえる様頼み一生懸命手順等覚えようと努力した。


風呂から上がり寝間着に着替え布団に入り就寝の時間を迎え意識を手放した。

すると以前のこの人格である私が夢と言うか頭の中に浮かび、今まで彼女の記憶が私の頭に入ってきた。

これまでの体験。思った事。今後したい事。夢。様々な事柄が頭の中に入り彼女は魂となり私と同一化すると言ってきた。少し後ろめたい気持ちになったが彼女の記憶を継承し、なおかつ私自身の記憶を元に人生をやり直そうと誓った。

性別が変わった為、以前と違う道を歩むだろうが後悔しない様に頑張ろうと彼女の魂に宣言する。


「私は元の貴女の記憶と『僕』の記憶を元に精一杯頑張るからね。」


人知れず誓いをたてた。





それから数年後、ピンチな時にセーブ&ロードを繰り返し過ごしてきて成績優秀で身持ちが固い大人に成長していきひとまずこの成長記録を一つのセーブデータとして残す事にして、新たなデータを作成したいと思い念じた。


今度は設定で、親が仲良しの元々の自分と将来結婚する。今回はロリ巨乳になり好きなゲーム会社に就職する。あまつさえ今までの記憶が有るので制作の無双が出来る様にする。等々他人から見たら都合の良い設定をしていく。


再び私となり3回目の人生を歩む。ある程度の人生の設計をしたがはたしてどの様な結果に繋がるだろうか・・・。

ちなみに今回は昔とあるゲームに搭載されていたシステム、『インタラクティブ・シナリオ・システム(ISS)』

この機能は今の私の行動が次回する予定の本来の僕としてのやり直しの為の布石。

すなわち、データを色々介入する事が出来るらしい。設定上3回目の私と4回目の僕が同一世界に生き、

お互いに理想の自分自身と結婚して幸せな家庭をはぐくむ計画である。




3度目の人生はいままでの自分の生活のトレースじゃなく新たなる人物の生涯だから成長しがいがあった。そういえば成長と言えば設定で『ロリ巨乳』としたので早々に身長が伸びなくなり形の良い理想的な胸に育った。漫画みたいに重力に逆らう様に主張している。ネックは足元を見る時に胸元が邪魔になるくらいか。肩こりしやすくなると言うのは設定で感じない様にしている。それはいいのだが2回目の人生で慣れたと思っていたが、自意識過剰かもしれないが多くの視線を感じる。特に胸元に。人により、ちらっと見ては見てませんアピールする人。ガン見する人。色々いるのでへきえきしていた。


親が将来大企業になるゲーム会社に勤めている。おこがましい事だが何気ない私の助言で出世街道を走ると言うなんでもござれ設定をしている。

セーブ&ロードの能力と世に出る作品の内容を知っている為、そろそろこのタイトルを作成してるはずだと当たりをつけたり、サンプルソフトのテスターを志願したりして完成形との違いを指摘し改良点等をあげていた。

親の成績にもつながるし、より良い作品作りに貢献していた。


 新発売のソフトを親に頼んで親経由で元の『僕』に贈ったりしていて、『僕』は大変喜んでいたと言う。

勿論、箱と説明書は大事にとっておくようにとの助言も忘れない。私もプレイ用と保存用のソフトを貰い、保存用は大事にとってあった。

 過去の自分の趣味は知ってるつもりなので、昔『僕』だった頃購入出来なかった物もプレゼントする。

それはゲームだけにとどまらず、本やおもちゃ等々今の時代でしか入手出来ない将来絶版になる物をプレゼントした。




 同時進行で4回目の人生。すなわち3回目の『私』と結婚する『僕』もプレイする。

1回目の人生の反省点を見直して、遊び惚けていたのを止め勉強をして将来3回目の『私』の親の勤めている将来大企業に成長するゲーム会社に入社する事を目指し、プログラムの勉強等PC関係の勉強もしていた。


 わかっている物の『僕』も将来絶版になる漫画やおもちゃ等々収集する。時折『私』から色々なプレゼントが贈られてくるが僕も価値を知っているので大事に取り扱っていた。



『私』も『僕』も将来活躍する人が事前に知っているので出来る限りファンレターを送ったり、じかに挨拶したりして時が進んでいった。

 そして念願の入社、のちに結婚をして子供が産まれ家族安泰で過ごしていった。



 夫のゲーム会社主催の公式大会が開かれ、『私』はセーブ&ロードの能力を駆使し、優勝をおさめる。

体型がロリ巨乳だからなのか観客からの視線が熱い。好奇の目を浴びせられるのを我慢し表彰を受ける。

内心後ろめたい気持ちはあったのは素直な感想だろう。





思えば能力に頼り、あらかじめ生涯のレールを定め生きてきた。それに伴い色々な有名人と知り合いになり、自分自身も有名になった。

でも有名になりすぎても息苦しい気がしてくる・・・。



ひとまず成功として3回目の『私』と4回目の『僕』のデータをセーブする。

そして無名な1回目の自分をロードした。

有名人という事で周りがちやほやせず、視線を感じない。握手やサインを求められないで自由に行動できるありがたみさを知る事になった。


3回目、4回目の人生はもしもの願望を込めた人生であったから勿論1回目の人生で知り合った有名人とは赤の他人である。わかっている物のファンレターに現在の自分には知りえない有名人の過去のエピソードを送って驚かれたりした。

所詮、夢物語。時々気が向いたら能力が保持している限り、やり直しの人生の続きを味わおうと思う。

1回目とやり直し人生の時間が逆転し、やり直していたからこそ知りえた情報を1回目の人生で有名人と絡んだ時にびっくり情報として話すのも悪くないかもしれない。

最悪1回目の情報伝達する前に戻ればいいのだから・・・。




 また新たな設定でやり直す事が出来る。そう今は・・・。

この先どの様な人生を送り直すかわからない。

もしかしたら突如として能力が消えるかもしれない・・・。

後悔しない様に今後も歩んでいこうと心に誓うのであった・・・。







                                             完














もしもゲームの様にセーブ&ロードが出来たなら。

自分の理想の人生を歩む事が出来たなら。


がテーマです。

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