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【WEB版】冒険者ライセンスを剥奪されたおっさんだけど、愛娘ができたのでのんびり人生を謳歌する 作者:斧名田マニマニ

10章 おっさんとかつての仲間編

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81話 おっさん、娘にとって恥ずかしくない父親でありたいと思う

本日、コミカライズ1巻が発売されました!

また明日は『冒険者ライセンス』2巻の発売日です。

あわせてよろしくお願い致します!(*´`*)

 アランの居所は、情報屋のドワーフ・ハムが調べてくれることになった。


「話は聞いた。1時間、いや30分くれ。すぐに居場所を見つけ出してやる」


 たった30分でと思ったが、ハムはそれから20分でアランを見つけ出してきた。

 ハムがどこまで情報を得ているかはわからない。

 でも何よりこの件を優先させてくれたのだろう。

 感謝してもしきれない気持ちで頭を下げると、ハムはポンポンと俺の腕を叩き、一言「解決させてこい」と言った。


「ああ、わかった。ありがとう」


 俺はしっかり頷き返すと、ラビの手を引いてエイハブの店を出た。


 ハムから渡されたメモを頼りに向かった先。

 アランの滞在しているという宿は、スラムの入口にある傾きかけた安宿だった。

 他の宿泊客がぎょろぎょろとした目でこちらを値踏みしている。


 無数に亀裂が走った壁や、ひび割れた柱。

 めくれかかった屋根の板。

 それに周囲には、果実が腐ったような嫌な臭いが漂っている。

 埃まみれの看板は、風が吹くたびキィキィと耳障りな音をたてた。


 かつて落ちぶれた俺が一人旅をしているときだって、ここまでオンボロな宿に泊まったことはないぞ……。


 こんなところにいるアランを、俺は想像することができなかった。

 心の奥の方で気持ちが怯むのを感じる。

 俺は、正直怖かったのだ。

 かつての自分以上に悲惨な状況となったアランを見ることが……。


 それにこんなところにラビを連れていくのは……。

 しかし、ラビは俺が言葉を発する前に、俺の目を真っ直ぐに見てから、しっかりと首を横に振った。


「私も一緒に行く」


 この子がこんなふうに、きっぱりとものを言うのは初めてかもしれない。


 ラビ……。

 俺を守ってあげたいと言ってくれた。

 そのために、共にあることを望んでくれているのだろう。


 こんな小さな娘に心配をかけるなんて、俺はだめな父親だな。

 もっとしっかりしなければ。

 アランがなんだ。

 彼が今、どんな状況に晒されていようと、目を逸らさず、受け止め、通りすぎた過去のひとつとして、見送ればいいだけだ。


「ありがとう。ラビ」


 よし。行くぞ。


 ラビと手を繋いだまま、安宿の扉をくぐる。

 軋む床を踏んで、受付カウンターへ向かう。

 ぼろぼろの椅子に座って、ぼーっと天井を眺めていた老婆がじろりとこちらを見た。


「3号室の客に用がある。部屋へ向かっていいか?」


 老婆は声を出すのも億劫なのか、興味なさそうに視線を階段のほうへ向けた。


「知り合いが来てくれて良かった。明日までの分の金はもらってるけど、どうせ持たないだろうからね」


 俺がどうしたいかなんてどうでもいい。

 アランのためでもない。

 俺が導き出す答えは、いつもラビのために。

 この子がまっすぐに成長し、幸福な人生を歩めるように。

 俺は娘に対して恥ずかしくない行いをしたい。


 かつての仲間。

 俺に呪いをかけて、ひどい目に遭わせた男。

 弟のように想い、その成長を喜んでいた時期も確かにあった相手。


 そいつの命が、消えかけている。

 この瞬間。

 俺が、ラビのために選ぶ道は――。


「ラビ、俺はこの男、アランに呪いをかけられたんだ」


 ラビが大きな目を見開く。


「呪い……私と同じように……?」

「ああ、そうだ。なんでそんなことをしたんだと、心の中でこいつを責めた日もあった。裏切られたんだと悲しくなったりもした」


 目の前に死にそうな人がいて、自分はその命を救えるかもしれない。

 たとえばそれが憎んでいる相手であったとして、その相手を見捨ててしまったら?

 きっと一生、見捨てたことへの罪悪感を抱えながら生きていくことになる。

 もしラビがそんな状況に立たされたとき、その後の人生に闇を背負うような選択はして欲しくない。


「ラビ。下がっていてくれ」

「うん……!」


 俺は、アランに向けて手を翳した。


 試しに回復魔法をかけてみたが、効果はまったくでなかった。

 アランのHPは1のまま。

 呪詛返しにかかっている体をなんとかしなければ、HPを回復するのは不可能なのだろう。


 この衰弱も、恐らく呪い返しによるものだ。

 ただの解呪でどこまで通用するかは賭けだな……。


 それでも、やれるだけのことはしよう。

 俺は短く深呼吸をすると、スキルを詠唱した。


 《瞬く希望の粒子ここに集え、いま我が命じる――呪詛解除!!!!》


 その瞬間、火花のはじけるような音とともに、俺の手から光の粒が溢れ出した。

 粒子はやがて光の筋となり、アランに向かって伸びていった。

 しかし、アランの体に辿り着いたところで、弾かれるように空中に分散し、弱々しく瞬いたあと消え失せた。


「くそ……」


 やはり、弾かれたか。

 呪詛返しによって跳ね返った呪いは、通常の呪いより、ずっと手ごわい。

 ……この調子では、解呪には至らないな。


 そのとき――。


「おっ……さ、ん……?」


 か細い声が聞こえてきた。

 もはや眼球くらいしかまともに動かせないらしいアランが、俺を見上げる。


「どう……し、て……ここに……」


 その目から涙が一筋流れ落ちた。


「喋らなくていい」

「お父さん……! 頑張って。負けないで……!」


 ああ、そうだなラビ。

 俺はおまえの父として、決して屈したくはない。

 呪いにも、情けなかった過去にも……!


「解除スキル1つでどうにもならないのなら――この方法でどうだ……!」


 ごり押しだとわかっている。

 それでも試してみる価値はある!


 《瞬く希望の粒子ここに集え、いま我が命じる――呪詛解除!!!!》


 再び生み出された光の粒子。

 そこにさらなる解除スキルを重ねがけする。

 スキルの二重遣いだ!


 ふたつの光が合わさった瞬間、目を開けていられないほどのまばゆい輝きが部屋中に溢れ出した。


「わあ……!」


 俺の後ろにいたラビが、眩しさから逃げるように抱きついてくる。


 解き放たれた光に包まれたアランは、ベッドの上で絞り出したような悲鳴を上げ始めた。

 魂にまで沁みこんだ呪いに、解呪が干渉しているのだろう。


「あっ……ぐぁあ……ああ……」


 弱っているせいで、ほとんど音にはなっていない。

 それでも彼の苦しみは伝わってきた。


「あっ……ああっぐ……」


 やつれた顔を横に何度も振って、アランが落ちくぼんだ目を見開く。

 堪えろアラン。


「アアアア!! アッ、ウワアアアアアアッ!!」


 一際強い閃光が弾けて、アランの体が跳ねた。

 その瞬間、この部屋を覆っていた嫌な空気が消え失せ、肩の辺りが軽くなった。


 俺はすかさず回復魔法を発動させた。


 目を閉じ、意識を失っているアランの顔色は、つい先ほどに比べてもだいぶマシになっているようだ。


「お父さん……! 魔法成功したの……!」


 ラビの安堵したような声に、頷き返す。

 そのままステータスを確認した。


 ***************

 名前:アラン

 職業:無職

 レベル:1

 HP:100

 MP:100

 魔法:-

 スキル:-

 ***************


「!? これは……」


 レベルが1に戻り、ステータスもすべてそれに合わせたものに変化している。

 呪いがかかっているときでさえ、レベルが初期値に戻ることなどなかったのに。


 これが呪詛返しの代償か……。


「お兄さん……どうなったの……?」

「勇者として培ったステータスはすべて失って、スキルを使うことも出来なくなったようだ。――だが、命は助かった」

「……!」


 恐らく、アランは一度死んだようなものなのではないか。

 しかし、呪いが解けたことにより、間一髪で魂が戻ってきた。

 力を全て失いはしたが、命だけは残り、生まれ変わったような状態になっているのかもしれない。


「じゃあ……元気に、なる?」

「瀕死だったから、目を覚ますまでには時間がかかるかもしれない。でも、きっと大丈夫だろう」


 ……それでも。

 アランはすべての力を失ってしまった。

 勇者として生きていくのは、難しいかもしれない。

 目覚めたとき、アランはその事実をどう思うだろうか。

 少しずつ気持ちが沈んでいくのを感じていると……。


「よかったあ」


 胸に手をあてたラビが、ほっとしたように息を吐き出すのが見えた。


「ラビ……?」

「勇者さんが大変って聞いてから、お父さん、ずっとすごく辛そうな顔をしてたから。勇者さんも死ななくて、お父さんの辛いこともなくなって……本当に、よかった」


 ラビ……。


「……ありがとう、ラビ」


 ラビの笑顔、ラビの優しい言葉に救われるのはもう何度目だろう。


 難しく考えたってしょうがない。

 アランがこの先どうなるか。

 それはアラン自身の問題だ。


「ひとまず安心とはいえ……アランは当面眠ったままだ。目覚めるまで、毎日回復魔法をかける必要があるな」

「じゃあ……私たちも、ここに泊まる?」

「ここじゃあ衛生状態が心配だ。そうだな……」


 俺は眠っているアランの体を抱え上げた。

 すっかり痩せて、軽い体だ。

 マッスルパワーを使うまでもなく、軽々と持ち上げられた。


「――さて。行くか、ラビ」


 アランを背負ったまま、ラビに笑いかける。


「うん! 私、扉を開けてあげる……!」


 そうして俺たちは、宿を後にした。

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『幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった』
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【あらすじ】
一個下の幼馴染で彼女の花火は、とにかくモラハラがひどい。

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身も心もボロボロにされた俺は、ついに彼女との絶縁を決意した。

「颯馬先輩、ほーんと使えないですよねえ。それで私の彼氏とかありえないんですけどぉ」
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