Interview

梶 裕貴、立花慎之介が語った“声優に求められる必須スキル”とは? 新撰組と、すれ違いに翻弄された時代の物語─劇場版『PEACE MAKER 鐵』キャスト対談

梶 裕貴、立花慎之介が語った“声優に求められる必須スキル”とは? 新撰組と、すれ違いに翻弄された時代の物語─劇場版『PEACE MAKER 鐵』キャスト対談

“切り替える力”がないと、声優としてやっていけない

先ほど梶さんがお話しされていたように、私たちは新撰組がこの先どんな道を歩んでいくかを知っています。そうやって史実を知りながらも演じるときに、意識することなどはあるのでしょうか?

 僕が参加した段階ですでに、どんどん暗いほうに話が向かっていたので(笑)、「明るくしなきゃ、元気にしなきゃ」というわけでなく、あるがまま全力で目の前のことに立ち向かって「生きる」姿を演じるのが、この時代に生きた鉄之助たちの感情なのではないかと思いました。

たとえこれが『PEACE MAKER 鐵』ではなく、ほかの戦争ものの作品だとしても……内容によっては死を覚悟しながら生きているものもあるかもしれませんが、それでも「大切な人にもう一度会いたい」とか「自分の信じる未来をこの目で見たい」といった希望を持って生きていたと思うので、“現代に生きる、キャラクターを演じる僕の気持ち”とは別として、その人間としてそこに居ることを表現するだけかなと思っています。

立花 そうだね。史実として結末を知っていたとしても、それを出してはいけないのが役者だと思います。それを出してしまうと芝居のニュアンスが違ってきちゃうし、“先のことを知っているキャラクター”の芝居になってしまうので、そこは忘れないといけないというのが役者の仕事ですよね。

知っていても出さないというのが重要なので、そのジレンマを制御するのは難しいところだと思います。場合によっては、“あえて先を読まない”なんていうときもありますからね。でも『PEACE MAKER 鐵』で演じていらっしゃる先輩方は、そういった部分を微塵も出さずにお芝居されていますから(笑)、本当に勉強になるなと思います。

キャラクターを演じたことがない人間からすると、知っていることを忘れて演じるというのはすごく難しく思えるので、「声優のみなさんは、いったいどのように切り替えているのだろう?」と思うのですが…。

 声優は、同じ一日のなかでいくつもの役を演じる機会が多いので……自分の気持ちや、ほかのキャラクター、ほかの作品に引っ張られすぎていると、そもそも演じることができないんです。その瞬間瞬間で切り替えて、目の前の作品やキャラクターに入り込んでいく。なので、切り替える力は自然に備わっていくというか、それがないと声優はやれない気がしますね。

立花 声優として持っておかないといけないスキルのうちのひとつだよね。

 もちろん、ひとりのキャラクターとある一定期間生きることが必要な表現の場所もあると思いますが。でも声優は、切り替える力が大事なのかな とは思いますね。

立花 切り替えるスイッチって、声優独特のものだよね。

そのスイッチって、どこにあるのでしょう?

立花 アフレコ現場で「はい!」って言われたら変わります(笑)。でも、慣れるとそうじゃない? VTRがまわったらスタートだし。

 そうですね(笑)。そういうものだと思ってやっているというか。

立花 声優の仕事って、自分のタイミングでお芝居を始めるんじゃなくて、「このタイミングで始めてください」って言われるので、「はい!」で始めざるを得ないんですよね。

 そういった意味でも、ある程度どこかで客観視できていないといけないところがありますし……完全に役とシンクロするというよりかは、俯瞰して見ている部分も必要なのかな、と。 マイクワーク等も考えないといけないですし、映像の役者さんとは必要なスキルが少し違うかもしれないですね。

立花 やることが多いから、必要なスキルが多すぎるんだよね(笑)。前に言われて「あ、なるほどな」って思ったんだけど……声優さんってアフレコが終わって「はい、OKです」って言われた瞬間、地声に戻るじゃない?「そうやって一瞬で声を切り替えられるのが不思議だ」って……僕らは普通にやっていることだから、そういうふうに感じないんだけどさ。

 いつもやっていることだから、そういうもんだと思っちゃってますね(笑)。だから、ほかのフィールドの俳優さんとお話ししたりすると、お互いに発見があって面白いです。

立花 そうそう。それぞれ独特だからね。だからさっきの「先を知ってる・知ってない」っていうのもたぶん、俳優さんの感覚と、我々声優の感覚ってまた少し違うんじゃないかなと思いますね。

友の存在の大きさや、時代に翻弄される人々のドラマにどっぷり浸かってほしい

作品のお話に戻りますが、いろんなキャラクターの生き様が描かれている『PEACE MAKER 鐵』のなかで、特に共感するキャラクターはいらっしゃいますか?

 やはり、鉄之助です。オーディションを受けた上で決めていただいたのは、自分のパーソナリティとどこかしら近い部分があったからだと思いますし。もっとシンプルに考えても……僕も熱っぽいところがありますし、自分が信じたものに対して、自分でも驚くぐらいまっすぐすぎるところがあるので(笑)。鉄之助を見ていても「そうだよな!」と共感できるところが多いからこそ、心を重ねて演じることができるのかもしれないですね。

立花 僕も鈴と言いたいところですけれども……ははは!

 “いつ”の鈴かにもよりますよね(笑)。いまの鈴って言われるとちょっと……悪いヤツじゃないと僕は信じていますが、怖いですよね(笑)。

立花 いまの鈴は、もう完全に悪いオーラしか出てないからね(笑)。まあでも……斉藤さん(斉藤一:声/松山鷹志)かなあ? 僕は後ろに引いて全体像を見ていたい人間なので。

 あ、でも僕、立花さんは山南さん(山南敬助)な部分もあるんじゃないかと思います。今回のアニメ『PEACE MAKER 鐵』には出ていませんが…。

立花 あ、そうかも(笑)。熱しやすくて冷めやすい部分をあんまり表には出さず、粛々と物事を進めていくタイプなんですよね。

 でもその「熱しやすくて冷めやすい」っていうのが、立花さんの場合はだいぶ熱してるし、だいぶ冷めてる感じがします(笑)。何事も突き詰める立花さんの姿勢は、すごく尊敬しているところのひとつです。

それでは最後に『劇場版「PEACE MAKER 鐵」後篇~友命~』をご覧になられる方へ、見どころやメッセージをいただけますでしょうか。

立花 後篇は怒涛の展開といいますか、新撰組やあの時代に生きる人たちがいろんなものに翻弄されていく様子が如実に描かれています。ですからもう僕は多くを語らないので(笑)、ぜひ後篇の最後まで観ていただいて……観ていただいたみなさんの心を翻弄するような作品に仕上がっていると思いますので、どっぷり浸かって楽しんでいただけると嬉しいなと思っています。あとはね、ちゃんと鈴も喋っているので(笑)、聞いていただけると嬉しいです。

 原作や史実から、今後彼らが進んでいく先というのはみなさまの頭のなかに浮かんでいるかとは思いますが、そこに黒乃奈々絵先生の個性やセンスが混ざって、本当にドラマチックな物語になっているなと改めて感じております。

後篇に関していえば、鉄之助にとって友という存在がどれだけ大きいかを感じていただける物語になっていると思いますし、本作をもって今回の劇場版はいったん幕を閉じますが……友や家族、恋人のほかにもうひとり、鉄之助には鈴という大切な存在がいるので、彼との物語も、いつの日かアニメとしてお届けできる機会があることを僕も祈っております。なによりもまずは、後篇を劇場でご覧いただければと思います。

フォトギャラリー

劇場版「PEACE MAKER 鐵」後篇~友命~

2018年11月17日 公開予定

【キャスト】
市村鉄之助:梶 裕貴(青年期)/小林由美子(少年期)
土方歳三:中田譲治
沖田総司:斎賀みつき
山崎 烝:櫻井孝宏
市村辰之助:うえだゆうじ
永倉新八:山口勝平
原田左之助:乃村健次
斉藤 一:松山鷹志
島田 魁:岩崎征実
近藤 勇:土師孝也
沙夜:高橋美佳子
大和屋 鈴:立花慎之介
山崎 歩:永島由子

【スタッフ】
原作:黒乃奈々絵(掲載「月刊コミック ガーデン」/WEBコミックサイト「MAGCOMI」)
監督:きみやしげる
脚本:梅原英司
キャラクターデザイン・総作画監督:小磯沙矢香
セットデザイン:岩畑剛一
色彩設計:土居真紀子
撮影監督:佐藤光洋
編集:後藤正浩
音響監督:亀山俊樹
音楽:中西亮輔
アニメーション制作:WHITE FOX
配給:ショウゲート
特別協力:京都市

©黒乃奈々絵/マッグガーデン・PEACE MAKER 鐵 製作委員会

オフィシャルサイト

原作本 『PEACE MAKER 鐵』
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