いい意味で「浮いている」、入野自由の“王子”の芝居
内山昂輝さん演じる“神童”や入野自由さん演じる“王子”をはじめとして、本作にはほかにも個性的なメンバーが多く登場します。気になるキャラクターはいらっしゃいますか?
興津 みんなだね。
株元 全員ヤバいですよね。
大塚 みんなですね。
豊永 ヤバさの意味は違うけど、みんなそれぞれがヤバいですからね。
株元 でもみんな、そのまんまというか……星野(貴紀)さんは“ニコチャン”そのまんまだし、双子の兄“ジョージ”(声/榎木淳弥)と弟“ジョータ”(声/上村祐翔)もあの感じだし。北沢(力)さんなんか、本当に“キング”そのものでしょ? そんななか、入野さんの“王子”だけは明らかに違うところを演じているから面白いし、「あ、こういう演技をされるんだな」って、見ていてすごく勉強になります。
豊永 ほかのキャスト陣はキャラクターと被る部分があって、そこがリアリティにつながってくるんだと思いますが、自由くんは“王子”というキャラクターを完全に作って出しているので……いい意味で、ひとりだけポンって浮いてるんです。その、自由くんのアプローチだからこそ出てくる空気感やバランス感覚が面白くて、「ああ、面白いお芝居をするなあ」って、毎回見ていて思いますね。
アフレコ現場の雰囲気はいかがでしょう? 初めて共演する方がそれぞれ結構いらっしゃると思いますが。
大塚 僕は本当に、みなさんと共演させていただくのは初めてですね。
株元 僕も全員初めてです。
大塚 最初のほうは、台本を手に自分の席で佇んでいました(笑)。でも、印象としては思ったより賑やかな感じでしたね。
興津 だいぶ賑やかだよ(笑)。
大塚 本当にみなさんと面識がなかったので……特に「内山さんって、こんなに喋るんだ」って思って。
豊永 ははは(笑)、そうだね。
杉山高志[神童](声:内山昂輝)
柏崎 茜[王子](声:入野自由)
大塚 内山さんと入野さんがいつも賑やかにお話しされていて、ブースから出たロビーのところでもお話ししているんですが、全部声が聞こえてくるんです(笑)。それを聞いて、ブース内で笑っちゃったりとか。笑いの絶えない現場ですね。
株元さんはいかがですか?
株元 みなさん初めましてだったので、僕も最初はめちゃくちゃ緊張して、隅っこのほうに座っていたんです。そうしたら、たまたま横に北沢さんがいらっしゃって、その隣が星野さんで……いまもその並びは変わらないんですが、収録の回数を増すごとにちょっとずつみなさんと話せるようになってきて、いまは完全にアオタケの雰囲気ができあがっている感じがしますね。
豊永 株ちゃんが北沢さんに向かって、本当にどうでもいいことをツンツンツンツン突いていくんですよ(笑)。「好きな食べ物なんすか?」って聞いて、その話がひと回りしたら次、「好きな果物なんすか?」って(笑)。
大塚・興津・株元 あっはっはっ!
豊永 北沢さんがその都度「なんだよオマエ、うるせえよ!」って言うのに、ちゃんと答えてくれるんです。「洋ナシ」とかって(笑)。そのやり取りがもう本当に面白くて、収録してみなさんにお届けしたいくらいです(笑)。
株元 ははは(笑)。そういう話がやっとみなさんともできるようになって、最近は入野さんとかも会話に入ってくださって、楽しい現場ですね。
「豊永さんから盗めるものは盗んでやろう」(大塚)
そういった楽しい現場の雰囲気もあるなかで、お互いに「役者として魅力的だな」と改めて思った部分をご紹介いただけますか? “駅伝”にかけて、大塚さん→豊永さん→興津さん→株元さん→大塚さんのリレー形式でお願いしたいと思います。まずは大塚さんから見た豊永さんはいかがでしょう?
大塚 まだアフレコが始まる前、豊永さんとお話ししていたときに「ハイジを掴むのに時間がかかるかもしれない。悩むかもしれない」といったことをおっしゃっていたんです。でも、いざアフレコに臨んだら、もう「清瀬灰二がそこに居る」って思いましたね。ハイジの底が知れない感じとか、ミステリアスな部分とか、視野の広さといったところを、本当にバチっと合わせていらっしゃって。
それに、この作品のイベントや取材で豊永さんとご一緒する機会も多いんですが……役者としてはもちろんのこと、そうやって表に出るときの豊永さんご自身の立ち居振る舞いも勉強させていただくことが多いので、もう「盗めるものは盗んでやろう」っていう感じで……。
豊永 えー、恥ずかしい!
興津 さすが、コンビニ泥棒ですね。
豊永・株元 ははは!
大塚 そうですね(笑)。そういう感じで、いつも見させていただいております。
豊永さんから見た興津さんはいかがでしょう?
豊永 興津さんの演じるユキが、僕は本当に好きなんです。『風が強く吹いている』は会話劇が多い作品で、基本的にはアオタケのみんなが会話をやり取りすることで物語が進んでいくんですね。監督からも一番最初に「アニメーションではあるけれど、ドラマにしたい」というお話をいただいて、僕も「だったら、セリフをセリフでないものとして、自然な感情を乗っけるように繰り広げていくのが面白いだろう」と思っていたんです。そんななかで、興津さんから出てきたアウトプットっていうのが……本当に心から作って出した、ユキの言葉だったんです。
興津 いやいや、うるさいだけですよ? 「えぇ!?」って言ってるだけだから(笑)。
豊永 いやあ、もう本当に……視聴者のみなさんには、ユキとニコチャン先輩の何気ないセリフのやり取りを聞いていただきたいです。僕も「あ~、すげえ!」って、アフレコ現場で思いながら聞いていましたから。具体的にどうすごいのかって、なかなか言葉では形容できないのですが、とにかく僕は興津さんが放ったユキの言葉に毎回鳥肌を立てながらお芝居していたので……僕の理想のお芝居がここにありました。
興津 (褒められすぎて)怖い怖い。怖くて鳥肌が立ってきました。
大塚・株元・豊永 (笑)
豊永 尊敬してます!
そんな興津さんは、株元さんのことをどう感じましたか?
興津 株元さんはね、見た目もカッコいいんですけど、すごいカワイイんですよ。アフレコ現場で時々、笑顔でチラッてこっちを見ることがあって、「あ、いま困ってるんだな」って(笑)。そういった不思議な愛嬌があって……演じているキャラがムサっていうのもあるかもしれないですけど、なんか「本当にタンザニアから来たんじゃないか?」って思いますよね(笑)。
大塚・豊永・株元 (笑)
興津 ムサって絶対に難しい役なんですよ。でも、株元さんがムサのセリフを喋ると場が和むんです。本当に普通のことを喋っているんですけど、セリフを出す間(ま)と強さがバッチリなんですね。で、思わずみんな笑っちゃってリテイクすることもあるぐらい(笑)、自然にムサが入ってくるので……すごい役者さんだなって思います!
株元さんは大塚さんをどう思いますか?
株元 大塚さんは、もう全部がキレイですよね。周りにある空気もキレイだし……。
興津 なんだこの褒め合い(笑)。
大塚・豊永 ははは!
株元 “汚れてない感”がすごくて、それがカケルのまっすぐなお芝居にも影響しているんだろうなと思います。だから大塚さんはこのまんま、汚れないでいてほしいというか……盗むところは盗んでいいんですけど、悪いところだけは盗まないで(笑)。
豊永 そうだよ。俺のばっかり盗むと汚れていくから!(笑)
株元 いやいや、そういうことじゃないです(笑)。でも本当に、大塚さんってめちゃくちゃ真面目だし、僕が女性だったら付き合いたいぐらい……もうほんと、キレイなイメージです。インフルエンザとか絶対にかからなそう。
大塚 それちょっと意味が違くないですか?(笑)
株元 いやもう、それぐらい纏っている空気がキレイで、お芝居にもまっすぐ伝わってるのがすごいなあと思います。
では最後に、そんなキレイな大塚さん(笑)。みなさんを代表して、始まったばかりの『風が強く吹いている』ですが、今後の見どころを教えていただけますでしょうか。
大塚 はい(笑)。こういった感じで、本当に和気あいあいとアフレコが進んでいます。みなさんお話しされていたように、本当にリアルな人間関係が描かれている作品で、箱根駅伝を目指すアオタケの10人のリアルを切り取ったようなお話が今後もどんどん展開されていきます。
キャラクターそれぞれの走りもそうですが、互いの関係性や人間的な成長も見どころになってくると思うので、ワンシーンワンシーン、一言も見逃せない内容になっています。今後もどんどんアツい展開が続いていくので、見逃していただきたくないです!
フォトギャラリー
TVアニメ『風が強く吹いている』
日本テレビ、BS日テレ、読売テレビ、静岡第一テレビ、札幌テレビほかにて放送中
■キャスト
蔵原 走[カケル]:大塚剛央
清瀬灰二[ハイジ]:豊永利行
杉山高志[神童]:内山昂輝
柏崎 茜[王子]:入野自由
城 太郎[ジョータ]:榎木淳弥
城 次郎[ジョージ]:上村祐翔
岩倉雪彦[ユキ]:興津和幸
ムサ・カマラ[ムサ]:株元英彰
坂口洋平[キング]:北沢 力
平田彰宏[ニコチャン]:星野貴紀
■スタッフ
原作 三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮文庫刊)
監督:野村和也 シリーズ構成・脚本:喜安浩平 キャラクターデザイン:千葉崇洋
キーアニメーター:高橋英樹 向田 隆 音響監督:菊田浩巳 音楽:林ゆうき
制作:Production I.G
企画協力 新潮社
©三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会
原作本 『風が強く吹いている』
三浦しをん(著) / 新潮社