博多川端商店街からスグ、冷泉公園の近くにある博多で最も古い鉄筋コンクリートのアパートに行ってきました。
佐賀の街もレトロ感が素敵ですが、博多もこれまた古い街なんです。開発が進んでしまい、多くが失われていってるのが残念ですが、それでもポツンポツンと残っている場所があります。そんな場所の一つが今回紹介する「店屋町ビル」です。なかなかネットで調べても出てこないのですが、僅かな手掛かりを元に何とか見つける事が出来ました。
場所はちょうど川端商店街から冷泉公園に向かう道、公園を過ぎてしばらく進むと、右手にドーンと重厚なビルが建っていました。
おぉっ!まだまだ現役のテナントビルですよ、見るからに歴史を感じるビル。一階部分は改装を重ねて、もはやカオス状態。
建築は昭和24年(1949年)、敗戦の4年後です。
住居部分もまだまだ使われているようで、窓がアルミサッシになっています。階段の蛍光灯の明かりも見えます。
いや~、スゴイ迫力ですね。やっぱ歴史を重ねた建物って、新しいビルにはない強烈な存在感があります。
建物の側面には木枠の窓がありました。窓の下、バルコニーといえばいいのか、落下防止の鉄筋みたいな鉄の骨組みが見えますね。最近は全部アルミですから、とっても珍しい。
コンクリートの外壁が所どころ剥げていて中の鉄筋が見えていますが、強度には全く問題がなさそう。鉄筋コンクリートのビルは改装すれば100年くらい十分持つと言われていますが、築70年近いこのビルを見れば納得。
私は自衛隊に居たので旧軍の施設なんかも見てきたのですが、ほんとにコンクリートの構造物って丈夫です。ビクともしません。
木枠の窓がここに残っていました。建築当時のものでしょうか。
ビルの裏側も見てみようと思い裏に回ってみたのですが、とりあえず半分だけ見えていました。大きな建物があるので全部を見る事は出来ないんですよね、ちょっと残念。
コッチの窓にも、鉄筋で作った手すりのようなものが付いています。
出入り口は昔よく見た団地スタイル。部屋と部屋の間に階段があります。
この中はどうなってるんでしょう、せっかくなので入ってみました。住居表示のプレートに対して、ビル名のプレートは新しいです。
鉄の質感がメッチャレトロ、戦中・戦後のイメージにピッタリな色。完成当時もこんな個別メーターがあったのでしょうか、戦後の電気事情・・・気になりますねぇ。
階段はとても綺麗なので、何度か補修されているのでしょう。
しかし!
この手すりは木製ですよ、とってもレトロ、感動ものです。武骨なコンクリートと、年季の入った重厚な木製の手すり。モダンだなぁ。
部屋の扉は鉄製、これもまたレトロ。
共用部の蛍光灯もちゃんと点いています。人も住んでいるまだまだ現役のビル。シンプルだけど、この木製の手すりがメッチャ渋い。
階段を上っていくと、屋上に出る事が出来ました。
屋上への出口はこんな感じで、階段の数だけ出口があります。
屋上に建っている鉄の筒というか、煙突みたいなのはなんだろ?
何を排気していたんでしょうか、どう見ても煙突ですよね。
屋上は思った以上に広く感じますね、かつては子供がここで遊んだり、お母さんが洗濯ものを干したりしていたのでしょう。
戦後すぐといえば、まだ洗濯機なんて各家庭に無い時代ですよね。屋上に水道があるので、ここで洗濯をしていたのでしょうか。どう見ても洗濯所っぽいです。
屋上から表の通りを見下ろしてみました。この建物が出来た当時、周辺では一番高い場所だったのでしょう。
裏側も見てみました。ベランダに物置のような小屋があって、ダクトが突き出ています。
こちらは何もないベランダ。戦後すぐに建てられたアパートのベランダです。
う~ん、素晴らしいですね、とにかくレトロ、昭和レトロ成分が充満した空間です。ゆっくり屋上を堪能したので、そろそろ下へ降りていきましょう。
この階段口、どうですかこれ、武骨で重厚、スゴイ迫力でしょ。
降りていく階段の途中にあった窓から外を見てみると、広いバルコニーのような場所がありました。テナントの屋上部でしょうか。
ということは、最初から1階部分は店として作られていたんでしょうかね。
他の階段の窓から外を見てみると、コチラには建物が建っていました。ビルのバルコニーに小屋を建ててます。こういうのって、昭和らしいというか今ではお目にかかれないですね。
このビル、何か情報はないかとネットで探してみたのですが、ほとんど出てきません。唯一分かった事は、昭和24年に建築され福岡市で現存する最古の鉄筋コンクリート製集合住宅であるという事だけ。
この辺り一帯は空襲で焼け野原になっていた地域。なので、建築当時はとても目立つ建物だったでしょう。戦後復興のシンボル的なビルだったんじゃないでしょうか。
大博通りの交差点から見た「店屋町ビル」前の通り。この道を真っ直ぐ行くと、冷泉公園を過ぎて川端商店街へと続きます。
このビルが建てられて約70年、もはや文化財級のビルだと思いますね。
古い物を残すには大切に残していく意志が必要になります。だからこそ、ほとんどの建物が老朽化すると姿を消していくんですよね。残り少なくなった歴史の生き証人、大切に活用して次の世代へと引き継いでいってもらいたいですね。
佐賀からだと博多までは特急で1時間弱、博多へ行く人も多いと思います。たまにはこんな博多のレトロを楽しんでみるのも良いんじゃないでしょうか、意外と奥が深そうですよ。
「店屋町ビル」
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