新型コロナウイルスに感染すると、無症状であっても体内にずっと影響が残るかもしれないことが最近の研究で明らかに
By Sumathi Reddy
2021 年 2 月 3 日 15:27 JST 更新
新型コロナウイルスに感染すると、無症状であっても体内にずっと影響が残るかもしれない。最近の研究でそうした事例が示され、感染後の人生に起こり得るリスクについての疑問が持ち上がっている。
最新の研究によると、コロナに感染しても4分の1から3分の1が無症状だと推定される。無症状者の肺のスキャンに異常が見られるケースのあることが複数の研究で明らかになった。小規模な調査では学生スポーツ選手の心臓に問題が見つかり、その一部は無症状の感染者だった。また無症状および軽症の子どもの患者を調査したところ、血管の小さな損傷とみられる兆候が見つかった。
医師によれば、こうした後遺症がたとえあるにせよ、健康にどのような影響を及ぼす可能性があるかは定かではない。新型コロナほど綿密に調査されるウイルスは他にほぼないため、他のウイルスも同様の影響を残すが大きな問題は生じていないという可能性もある。医師らは多くの場合、損傷は自然に治る可能性が高いと指摘する。一方で、長期的な影響がもしあるならそれはいかなるものか、また人々の監視やスクリーニングを続けるべきかどうかを判断するために、もっと多くの研究が必要だという。
米カリフォルニア州ラホヤにある医療研究機関、スクリプス・トランスレーショナル研究所の創設者で所長のエリック・J・トポル氏は「表面から見えない体内でゆっくり進行すれば、気づいた時には慢性的状態かもしれない」と指摘する。
同氏が共同執筆し、1月に米国内科学会の医学専門誌にオンラインで公表された研究によると、コロナ陽性者の少なくとも3分の1が無症状とみられる。これは180万人強を対象とする61件の研究を調べたデータに基づく。
複数の研究結果が示すように、無症状にもかかわらず、肺のスキャンで異常が見つかるケースがある。例えば、医学雑誌ネイチャー・メディシンに6月に掲載された研究によると、無症状感染者37人のうち60%近くのCT画像に軽度の肺の炎症が起きている兆候が見られ、一部はコロナ患者に特徴的な「すりガラス陰影」を示していた。
「無症状者の肺のCT画像について少なくとも4件(の研究が)あり、半数の人がコロナによる肺炎と合致する異常を示しながら症状が無いことが分かった」とトポル氏は話す。
もう一つ懸念されるのは心臓の問題だ。7月に米国医師会が発行する雑誌JAMAに掲載されたドイツの研究チームの調査結果では、コロナ患者100人中78人が発症から2カ月後に心臓MRI検査で異常が見つかり、60人に心筋の炎症が認められた。調査対象には無症状の19人が含まれており、病気の重症度や経過と心臓への影響は無関係であると研究チームは結論づけた。
また感染後に無症状のスポーツ選手も、心臓の異常に見舞われるかもしれない証拠がある。
ウェストバージニア大学心臓病科のパーソ・セングプタ医長が11月に米国心臓病学会の専門誌に発表した研究では、コロナに感染していた学生スポーツ選手54人の心臓画像を撮影し、うち30%が無症状だった。
54人のうち、3分の1以上にあたる19人に心臓の異常が認められた。心筋そのものではなく、心臓の周りを覆う心膜や心嚢(しんのう)に炎症や過剰な液体が見られた。そのうち9人は無症状の感染者だった。
炎症は大抵、2〜4週間以内に治まるとセングプタ氏は話す。この研究では心不全や突然死につながることがある心筋炎を起こした例はなかったが、学生スポーツ選手を対象にした他の数件の研究でまれな事例として見つかっている。
研究者らは、無症状や軽症が多いとみられる子どもへのコロナの影響を調べることも重要だと話す。
12月に米血液学会の専門誌に掲載された研究によると、コロナに感染していた子ども50人(うち軽症・無症状が21人)で、血管損傷に関連するバイオマーカーの数値が上昇していることが判明した。論文の共同執筆者で担当医を務めたフィラデルフィア小児病院のデービッド・T・ティーチー准教授が明らかにした。
同病院の研究グループは、血管損傷のマーカーである「C5B9」の値が著しく高い子どもが大多数を占めたことに驚いた。対照群の健康な子どもには数値の上昇は見られなかったとティーチー氏は言う。
「これが子どもにどのような意味を持つのか、正直言って分からない」とティーチー氏は話す。「何でもない可能性はある。彼らは完全に回復するかもしれない。あるいは長期的な合併症状を引き起こす子どもたちが出てくるかもしれない。子どもの頃に新型コロナに感染しても、何も影響がないと決めつけることはできない」
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