医療のひっ迫が懸念される中で、新型コロナに感染すると特に重症化が心配されるのが、人工透析を受けている患者です。

感染拡大に伴い深刻さを増している現場を取材しました。

◆病院スタッフ

「N95マスクを着けます」

マスクの上にさらにマスクをつけ、ゴーグルなども身につけていく病院スタッフ。

新型コロナの感染予防のために欠かせない準備です。

完全防備のスタッフが入っていく部屋にあるのは、人工透析の機材。

ベッドに横になっているのは、新型コロナに感染しながらも「透析」を受けなければならない患者です。

感染者専用の部屋で、スタッフは呼吸がしにくく体温調節もままならない状態で、長いときは5時間、患者の側に留まり対応に当たります。

◆小倉記念病院 金井英俊副院長

「これ以上、全体のコロナ病床、並びに透析患者が増えるようになると、入院してのコロナの管理、かつ透析を両方してやるのは厳しい状態になるかもしれません」

現在、福岡県内で透析を必要とする人は約1万5000人。

感染拡大が続く中でも、週に3回の透析を受けなければなりません。

2020年12月以降、全国の透析患者の新型コロナの感染者は急増し、1月28日時点で1000人近くに。

福岡県内でも透析施設でクラスターが発生したことなどもあり、2020年末から3倍のペースで増加、1月末には73人にのぼっています。

日本透析医会によると、透析をうけている人が新型コロナに感染するとその死亡率は健康な人の8倍以上。

県内では、新型コロナに感染した人が透析を受けられる病床はほとんどない状況が続いていて、命の危険を高めているといいます。

◆小倉記念病院 金井英俊副院長

「自転車操業という状態で1人出したらその空いたところ(病床)に次の人を埋めるという、ピストン輸送でやっている現状」

こうした状況に、実際に透析を受けている患者はー

◆福岡県腎臓病患者連絡協議会 森満義彦会長

「このコロナについては、それぞれの患者が不安を抱えながら孤立状態になっている状況」

県の腎臓病患者連絡協議会の森満義彦会長。

自身も透析を必要とする生活を20年以上続ける中で、今の状況に危機感を募らせていました。

◆福岡県腎臓病患者連絡協議会 森満義彦会長

「明日(治療を)休もうということができない。休むということは命を縮めるということ。透析治療そのものが安心してできるような環境というのはまだ難しいのかなと、その辺が心配」

「命を保つため」に透析を受ける患者たち。

新型コロナに感染する不安を抱えながらの治療が続きます。