医療募金呼びかけの英100歳男性が死去 女王も哀悼

【ロンドン=篠崎健太】英国で新型コロナウイルスと向き合う医療従事者を支えようと、自宅の庭を100往復する挑戦で募金を呼びかけ一躍有名になった退役軍人のトム・ムーアさん(100)が2日、死去した。肺炎を患って新型コロナへの感染が確認され、1月31日に入院していた。「キャプテン・トム」の愛称で慕われた英雄の死に地元で悲しみが広がった。
ムーアさんは99歳だった2020年4月、英南部の自宅の庭を100歳の誕生日までに100往復すると宣言し、国民医療制度(NHS)への寄付金を募る運動を始めた。歩行器を使ってひたむきに歩く姿が感動を呼び、100往復を達成する瞬間はテレビで生中継された。寄付金は最終的に約3300万ポンド(約47億円)と、当初目指していた1000ポンドとは桁違いの賛同が寄せられた。
家族の説明ではムーアさんは数週間前から肺炎の治療を受け、先週の新型コロナ検査で陽性が確認された。自宅で療養していたが、自発呼吸が難しくなり1月31日に入院した。英メディアによると、肺炎の治療のためワクチン接種は受けていなかったという。
医療関係者を鼓舞した功績が評価され、20年7月にはエリザベス英女王からナイトの爵位を授与された。女王は死去の報を受けて遺族に哀悼のメッセージを寄せた。
ジョンソン英首相は「真の意味でヒーローだった。戦後最も深刻な危機に直面するなかで我々を団結させ、元気づけてくれた」とのビデオ声明を出し、死を悼んだ。ロンドンの首相官邸は弔意を示す半旗を掲げた。