『あざとくて何が悪いの?』『ノブナカなんなん?』など、出演番組での飾らない人柄が視聴者から支持され、2年連続で「好きな女性アナウンサーランキング」1位に選ばれたテレビ朝日アナウンサーの弘中綾香さん。多忙な彼女にとって、癒やしのひとつとなっているのが“アイドル”。『Hanako.tokyo』の連載コラム『弘中綾香の「純度100%」』では何度もアイドルへの熱い思いを文章にし、そのたびにSNSでも話題になっています。今回は弘中アナが今推しているアイドルグループやその魅力について話していただきました。
撮影:田中達晃(Pash)/取材・文:東海林その子
記事制作:オリコンNewS
きっかけは「ももクロ」 “非現実”へいざなわれ
――弘中アナは以前、『Hanako.tokyo』の連載でアイドルを好きなことを「ライフワーク」、そしてその始まりは「2012年に、ももクロちゃん(ももいろクローバーZ)に出会ったこと」と書かれていましたね。
はい。アイドルの、いわゆる“現場”に初めて自覚的に行ったのは2012年でした。当時のアルバイト先で仕事を教えてくれた30代後半くらいの男性の先輩が、ももクロちゃんにすごくハマっていて。当時はももクロちゃんが本格的にテレビに出始める前だったので、「俺の好きなアイドルを見せたい! 伝えたい!」という感じだったんです。映像などを見せてもらううちにすごく興味が湧いてきて、ライブに連れて行ってもらいました。
――そのときはどんな部分に興味を持ったのでしょうか?
その先輩が、10代半ばの女の子たちのことをすごく目をキラキラさせて笑顔で語っていて、最初はさすがに「どうしたんだろう?」って思ったんです(笑)。でも「え?」と思ってからが興味というか、「この人をここまで熱くさせるものってなんなんだろう」と思ってしまったことが始まりでしたね。
ももいろクローバーZ
――初めてライブをご覧になったときはどう思いましたか?
その前からライブDVDなどは見ていましたが、現場に行くとやっぱり、熱気や熱量が違いました。本人たちだけではなく、こちら側、つまり観客の人たちの盛り上がりがすさまじくて。そこがすごく印象的でした。
――そこからいろんなアイドルに触れていき、いわゆる“DD(誰でも大好き)”というスタイルになっていくのですね。
2013年にテレビ朝日に入社してから『ミュージックステーション』を担当していたので、アイドルの方と毎週会う機会があって、それからですね。お仕事としてライブに招待していただく機会も増えたので、男性女性問わず、アイドルだけではなくいろんなアーティストのライブを見に行く機会があって。自分が興味ある・ないに関わらず様々な方を観られたので、すごく恵まれていました。
――ももいろクローバーZを好きになる以前から、例えば女優やモデルなど、かわいい女の子はお好きだったんですか?
好きではありましたが、それに加えて、アイドルの歌って踊ってという、ちょっとした“非現実感”に私は魅力を感じていて。現場でしか感じられない熱量や、彼女たちの衣装や自己プロデュース力など、いろんなものが複合的に絡み合った“アイドル”が好きですね。
“ハロヲタ”デビューで「まさに沼にハマる感じ」 メンバーも曲も刺さりまくる
――『Hanako.tokyo』の連載では、これまで好きになったアイドルとして、ももいろクローバーZ、坂道グループ、K-POPを挙げていましたが、弘中アナにはどんな部分が魅力的に映っていますか?
ももクロちゃんは、とにかく一生懸命なところに心が洗われます。アイドルというと“前髪は1ミリもズラしたくない”みたいなイメージがあったりしますが、ももクロちゃんは私たちと一緒になって楽しんでくれる。そして私にとっては年下の女の子なので、彼女たちがあそこまで頑張っている姿がすごく活を入れてくれますね。
坂道は、独特な世界観がブレないのが非常にいいなと思っています。衣装やミュージックビデオも完成度が高いですし、楽曲もちょっと聴いたら「あ、これは坂道ですね」と分かるほどで。コンセプチュアルな部分が一貫していることにすごく安心感があると思います。
K-POPは歌と踊りだけじゃなく、自己表現や自己プロデュースとか、それこそ表情管理(楽曲などにあわせて表情をコントロールすること)といわれるもののクオリティーが高い。外から見えているものはものすごくキレイで、すごいことをやっているのですが、そこに行き着くまでの話を聞いていると、やはり壮絶な努力をしていて。この世界に入ってからみなさんのプロ意識の高さを垣間見ることができて、それがすごく励みになるというか、「頑張んなきゃ〜!」と思いますね。
――最近では、ハロー!プロジェクトもお好きなんですよね。
本当にここ最近ですけど、ハマっています。ハロプロはひとりひとりの完成度が高い。ひとりひとり個性も強いですし、もちろん全員パフォーマンスのレベルが高くて、楽曲もいい。(自分の)年齢が上がっていくにつれて聴きたい曲が変わってきたというのもあるかもしれないですが、ハロプロさんの曲や歌詞が刺さる年代に入ってきたなと思いますね。
――好きになったきっかけはJuice=Juiceさんの『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』という楽曲ですよね。
そうです。まさに沼にハマる、という感じでした。「この曲もいい、あの曲もよかった」とか、「え? この子がいいと思ったらもう卒業してた……」「このあいだ入ったと思ったのにこんなに垢抜けてる!」とか、そういったうれしい発見や誤算が、ひとつ見始めたら次々とたくさん出てくるんです。
Juice=Juice『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』
今の推しは…… 個の歌唱力で魅せるJuice=Juice、芯ある強さのTWICE
――いろんなアイドルをご覧になってきた中で、今現在、弘中アナが推しているグループを教えてください!
まず、Juice=Juiceですね。本当にひとりひとりソロでやっていけるくらい歌がうまい子が集まってグループをやっているので、穴がないというか。ライブに行って思いましたけど、本当に歌がうまい。ずっと聴いていられるなと思いました。
――昨年12月には、武道館で行われた宮本佳林さんの卒業コンサートにも行かれていましたよね。
はい。佳林ちゃんは中心メンバーだったので、卒業する寂しさはもちろんあったのですが、ご本人がすごく前向きな卒業とおっしゃっていたし、抜けたあとにグループやひとりひとりがどう変わっていくのか楽しみだなとも思っています。
私はハロプロの良さって、新陳代謝というか、入れ替わりが激しいところにもあると思っているんです。メンバーが固定されていない分、みんなが刺激を受けて成長する過程が見られて、「ちょっと目を離した隙にあの子がこんなに変わっていた!」ということがすごく多い。だから、「気を抜いていられない!」というのがありますね(笑)。
――『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』以外にお好きな曲はありますか?
山崎あおいさんの曲や児玉雨子さんが書かれた歌詞がすごく好きです。『微炭酸』(山崎あおい作詞・KOUGA作曲)とか、女の子の“大好き”だけじゃないドロッとした部分とか、あんまり人に表立って言えるものじゃないところを描いた歌詞に共感できる。そこをピンポイントに押さえてくるところが、非常にいいなぁと思います。
Juice=Juice『微炭酸』
あとはTWICEかな。『TT』(2016年リリース)の頃より、今のほうが断然見ちゃいますね。以前は“ザ・アイドル”という感じでしたが、最近は歌詞の内容もMVの世界観も強めで、芯があって。年齢が上がるにつれて変わってきているTWICEを見るのがすごくうれしいというか、楽しいというか。韓国語は全然わからないですが、『Feel Special』はすごく好きです。この曲からガラッと変わって、最初は「お? どうした?」と思ったのですが、すごくいいですよね。今はカッコいいグループだなと思っています。
TWICE『Feel Special』
――女性が憧れる女性、という感じですよね。
そうですね、その華麗なる方向転換にグッときています。私が『ミュージックステーション』を担当していた頃に出演していたときもものすごくかわいかったのですが、今は今ですごくセクシーだし、女の子が見ても「うわ〜! 美しいな〜!」って思ってしまう。MVとか何度も見ちゃいます。私が今、しっかり聴いているグループでいうと、この2組です。
――追えてないけど気になっている、というグループはいますか?
今は結構いっぱいいっぱいですけど、強いて言うならアンジュルムですね。最近ライブにも行ったのですが、Juice=Juiceとはまた違ってパワフルでダンスもガシガシ踊るし、パワーをくれる感じがあります。元気なときはアンジュルムを聴きたいけど、元気じゃないとき・普通なときはJuice=Juiceを聞きたいという感じ(笑)。アンジュルムは背中を押してくれる曲が多いのかなというイメージがあります。特に『忘れてあげる』が好きです。
アンジュルム『忘れてあげる』
「世の中、捨てたもんじゃない」 アイドルがくれる“もうちょっと頑張ろう”の気持ち
――弘中アナは特定のひとりを推すというよりも、箱推し(グループ全体を応援する)ですか?
結構、箱推しですね。もちろん入り口はこの子!ということもありますが、「頑張っていていい子たちだな〜」と思うと、そのうちみんな好きになっちゃうんです。どのグループも「この子が欠けたらダメ」とか、「この声がないと!」みたいなことがあって、特にハロプロさんはそういう部分が強いなと思うので、「みんながいてこそだよね!」という感じになっていきます(笑)。
――まさに先ほどお話されていた“沼”ですね(笑)。ちなみに、今年はNizi Projectが大ブームとなりましたが、オーディション番組はご覧になりますか?
オーディション番組、すごく好きです。ニジプロも見ましたし、プデュ(韓国の公開オーディション番組『PRODUCE 101』)ではIZ*ONE(2018年に『PRODUCE 48』で結成)、X1(2019年『PRODUCE X 101』で結成)、JO1(2019年『PRODUCE 101 JAPAN』で結成)を見ました。
――オーディション番組の面白さはどんなところにありますか?
私よりもだいぶ年下の子たちが毎日いろんな課題に一生懸命取り組んで、そこで起きる葛藤やみんなとのチームワーク、もちろん亀裂もあったり。そういう人間味溢れるストーリーが好きですね。あとは自分がいいなと思った子がグループに残るのかという、「果たして自分に審美眼があるのか?」というのを試せるのも楽しいですし、「私だったらこのメンバーにする!」って友達とわいわい話すのもすごく好きです。
――そういったアイドルたちが持つストーリーや頑張る姿に励まされるという人は多いですが、弘中アナもアイドルに励まされた、元気をもらった経験はありますか?
私は仕事が立て続いていて大変なときや、悩みごとがあるときに見ることが多いですね。考えたくないことを忘れさせてくれる存在なので、そういうときはライブ映像を流しっぱなしにしています。
――お仕事でアイドルの方々と共演されることもあるかと思いますが、理想的な関わり方を考えたことはありますか?
あまり好きすぎるとプライベートで会いたくなくなってしまうというか、好きすぎるとお仕事でも喋れないというか。自分の現実に入ってくることに正直、戸惑います(笑)。みなさん、私の知らないどこかで頑張って、幸せに暮らしていてほしいと思っているところがありますね。お仕事でお話しできるのはありがたいことですし、親交がある方もいるのですが、できれば影から見ていたい(笑)。ずっと、いちファンでいたいです。
――改めて、弘中アナにとってアイドルとはどんな存在でしょうか?
やっぱりヒーローですね。疲れているときに見ると元気をもらえるし「世の中、捨てたもんじゃないな」「この子たちに会うためにもうちょっと頑張ろう」って思える。そんな、いつも私を救ってくれる存在です。
「100%責任を持てる」言葉で記した初のフォトエッセイ
――そんなアイドルへの情熱についてもたびたび書いてきた『Hanako. tokyo』での連載『弘中綾香の「純度100%」』が、2月にフォトエッセイとして出版されることになりました。どういった経緯で書籍化することになったのでしょうか?
もうすぐ30歳になる私に自分から贈り物をしたいと思ったことがきっかけでした。私の中で“30歳になる”というのが結構大きくて。昔から本が好きで、書くことも好きで、得意というわけではないですが、形にしたい夢があったんです。ですから、せっかくこういうお仕事をさせてもらっているし、「このタイミングで出したいです」と私から提案しました。
――好きなアイドルのことから日常の些細な出来事まで、扱う内容が多岐に渡っていますね。テーマはどう決めていかれたのですか?
「こういうことを書いてほしい」というのは事前に全く言われていなくて、その時々で書きたいことを書いた感じです。その時の興味や好きと思えるものを書いていますね。アイドルのことを書いたら途端に大きな反響が来て、友達から「Twitterにまわってるの見たよ、こんな連載してたんだね!」とか。それまでもいろんなことを結構しっかり書いていたんですけどね(笑)。
――静かに自分の内面を見つめるような、素朴な文体にとても味わいがあります。文章表現でのこだわりはありますか。
あまり背伸びしない表現、ということを考えています。私は書くことに関しては本業ではないので、上手くできないなと思っていて。いつも、テレビの収録だと面白いことを言わないといけなかったり、その場に合わせて少し誇張があったり、テクニックとしてやることもあります。しかし、(文章では)そういうこと一切なしに、思ったことを等身大の言葉で、責任を持って書くというのが私の中でテーマとしてありました。ですので、ここに書かれていることに関しては、私は100%責任を持てます。
テレビだと、どうしても(発言などの)切り抜きがあったり、こういう文脈で言ったことではなかったのに、ということがありますけど、1000~1300字くらいを使って一つのテーマを扱うと、考えたことを誤解のないように書けるのが醍醐味なんだと感じました。
こうしたインタビューでも、質問されて数分で的確な答えが出てくるものではないですけど、3~4時間PCの前に座って1300文字を書くと、自分の本当に言いたいことが言えるんだ、と。アナウンサーという“瞬発力”が大切な仕事をしている分、練りに練った文章の良さというのを改めて感じています。
――文章と向き合うそうした時間のなかで、ご自分の考えが“深まった”と感じられたことはありますか?
文章だと「こういうモヤモヤした気持ちってどう言ったらいいのだろう、どうしたら相手に理解してもらえるのだろう」みたいなことをものすごく考えるじゃないですか? だから類語辞典などで調べたりもしたので、まず語彙力が上がったというのがあります。
あと、言語化すると頭の中がスッキリしますよね。私は何をこんなにモヤモヤしていたのだろうとか、なぜこんなに嫌なのか、好きなのか。文字にすることで何時間もそうした考えと向き合う。人間って、最近はインプットばかりで、そういう時間が少ないですよね。だから、大事な時間だなと思いました。
――少し気が早いですが、書籍第2弾や、これからも書いていきたいなど、今後の構想はありますか?
正直、当初は「月に2回、1000文字以上」って仕事の負担になると思っていたのですが、今はすごく良い時間になっています。私のアナウンサーという仕事と(表現手段が)相反するのですが、2つが両輪となって生きていけている感じがするので、発表する・しないにかかわらず続けていきたいと思っていますね。日記などでも良いですし。多分インタビューに答えるより、得意な気がします(笑)。
プロフィール
弘中綾香(ひろなか・あやか)
慶應義塾大学を卒業後、2013年4月にテレビ朝日入社。同年より音楽番組『ミュージックステーション』などを担当。現在は『激レアさんを連れてきた。』『あざとくて何が悪いの?』『ノブナカなんなん?』など多くの人気番組に出演している。今年、ORICON NEWS発表の第17回「好きな女性アナウンサーランキング」で2連覇を果たした。
書籍情報
フォトエッセイ『弘中綾香の純度100%』(2021年2月12日発売)
雑誌『Hanako』の公式ウェブメディア『Hanako.tokyo』で2019年5月から掲載中の同名連載に、書籍オリジナルコンテンツを加えた初のフォトエッセイ。2021年2月に30歳の誕生日を迎える弘中さんが、全編自身の言葉で書き綴る「いま」(29歳)と「これから」(30歳)の2つのパートで構成されている。
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