腰椎骨盤固定ベルト装着による坐圧変化
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抄録
【目的】<BR> 臨床上,腰痛既往者の多くは腰椎を後彎し,骨盤を側方に傾斜した坐位姿勢を呈していることが見受けられる.これは,骨盤と腰椎部を取り巻く筋群にとってストレスが多く,腰痛を生じさせる不良姿勢である. 腰痛発現予防のためにとるべき最も基本的な姿勢は,腰椎の生理的前彎位である.これは,骨盤の前傾と強く関連し,腰痛の治療,予防に重要であるといわれる.そこで今回,自作の腰椎骨盤固定ベルトを使用し,腰椎を生理的前彎位で固定保持させたことによる,坐圧中心点,坐圧分布の変化について検討したので報告する.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は健常成人13名(男性6名,女性7名)とした.平均年齢 は24.0±2.5歳であった.測定肢位は股関節90°,膝関節90°で足底を床面に接地する端坐位とした.坐圧測定には,圧力分布測定システムBIG MATT(NITTA)を使用し,通常の端坐位,ベルト装着直後,脱ベルト直後,脱ベルト5分後の経時的変化を計測した.まず,被験者に通常の端坐位になってもらい坐圧を測定し,次に腰椎骨盤固定ベルトを装着し5分間固定した.腰椎骨盤固定ベルトは,両側にバックルを取り付け,ベルトの左右の長さ調節が可能で,腰椎部(上部腰椎)と骨盤部(腸骨稜)に2本のベルトを巻き付け,両膝蓋腱部と下腿上部で固定するベルトである.計測に際しては,骨盤を軽度前傾位,腰椎を生理的前彎位に保持させるようにベルトを装着し,3m前方の指標を見るように指示した.その後,ベルトを外し5分間そのまま端坐位を意識的に保持させた.得られた結果から,通常端坐位と各端坐位における坐圧中心点,接触面積を比較した.接触面積は,通常端坐位を基準とし各端坐位の変化率を求めた.統計学的処理は反復測定分散分析を行ない,多重比較検定にはDunnett法を用い,危険率5%未満をもって有意とした.<BR>【結果】<BR> 坐圧中心点はベルト装着直後2.4±1.5cm,脱ベルト直後1.8±1.2cm,脱ベルト5分後1.5±1.1cmとすべてにおいて通常端坐位よりも前方偏位量の増加が認められた(p<0.01).接触面積は,通常端坐位よりもベルト装着直後9.3±4.6%,脱ベルト直後7.3±3.3%,脱ベルト5分後5.2±3.1%の減少が認められた(p<0.01).<BR>【考察】<BR> 腰椎骨盤固定ベルト装着により,生理的前彎位で端坐位を保持させた結果,装着直後から坐圧中心点を前方に偏位させることができた.また,脱ベルト直後,脱ベルト5分後でも前方に保持することが可能となった.福井らは,坐圧中心点は上半身の身体質量中心の坐面投影点とほぼ一致し, 腰椎運動と相関を示すと述べている.よって,坐圧中心点が前方偏位したことにより,上半身の身体質量中心は前方に位置していることが予測される. したがって,腰椎骨盤固定ベルト装着により,経時的に骨盤前傾位,腰椎前彎位に維持できたと考える.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003(0), C0881-C0881, 2004
公益社団法人 日本理学療法士協会