日本COVID-19対策ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計

このグラフ群は横断的ICU情報探索システム(CRoss Icu Searchable Information System, 略称CRISIS, 非公開) に蓄積されたデータベースを視覚化したものです。このCRISISには日本集中治療医学会専門医認定施設、日本救急医学会救急科専門医指定施設を中心に日本全国600以上の施設が参加されており、それら施設の総ICUベッド数は5500にのぼり、日本全体のICUベッド(6500ベッドほど)の80%をカバーしております。本事業は各病院担当者の方々の善意により忙しい合間を縫って任意に手入力いただいているものです。そのため精度はかなり高いと存じますが完璧なものではないことをご理解いただければ幸いです。当初我々はECMOに関するデータを中心に集めて参りました。しかしながら人工呼吸器を必要とする重症の方々のデータも必要であると改めて認識し、データの精度を高めるよう努力しております。少しずつではございますが改善させ、このコロナ禍を乗り切った暁には重要な資産として次の世代に遺せるものを目指しております。

国内のCOVID-19におけるECMO治療の成績累計

ECMOに関しては電話相談などでECMOnetに寄せられた情報から、その予後追跡を行っています。従ってここに表されている数は下記のECMO装着症例数(CRISIS申告のみ)と異なり、ほぼ国内の全症例を網羅しております。人工呼吸が必要な患者のほぼ5人に1人がECMOも必要と判断されます。 2020/5/27記載 第3波である2020/11/15以降では人工呼吸が必要な患者の10人に1人がECMO装着されております。この比率の減少については、腹臥位を含めた人工呼吸管理のスキル向上によるECMO回避ができているのか、重症患者が比較的減少しているのか、逼迫のためECMOが避けられているのか、原因を検証中です。2020/12/4 追記
2/5 現在     ECMO離脱 279例,   死亡 137例,   ECMO実施中 51例

COVID-19重症者におけるECMO装着数の推移

このグラフはCRISISに申告されたECMOが必要な重症患者さんの推移を地方別、都道府県別に示すものです。
2/5 現在     実施件数 9件

国内のCOVID-19におけるECMO治療の日数と転帰(確定症例のみ)

軽快 死亡
軽快
平均 : 15.0 中央値 : 11.0 第1四分位数 : 9.0 第3四分位数 : 18.0
死亡
平均 : 24.0 中央値 : 18.0 第1四分位数 : 11.0 第3四分位数 : 31.0

国内のCOVID-19におけるECMO治療の年齢分布と転帰

離脱軽快 死亡 ECMO実施中

国内のCOVID-19におけるECMO治療の性別と転帰

離脱軽快 死亡 ECMO実施中

国内のCOVID-19ECMO症例における肥満度分布

低体重 18.5未満 / 標準 18.5-25未満 / 肥満1 25以上-30未満 / 肥満2 30以上35未満 / 肥満3 35以上40未満 / 肥満4 40以上 BMI(Body Mass Index)にて分類
軽快 死亡 加療中 n=452
  • 死亡率
  • 20%
  • 32%
  • 29%
  • 32%
  • 18%
  • 21%

国内のCOVID-19における人工呼吸治療(ECMO除く)の成績累計

この図はCRISISに申告のあった症例のうち、上記ECMO症例以外に人工呼吸管理を行った症例の推移を表したものです。こちらもあとから各施設が入力された症例もありますので、過去にさかのぼって日々数が変異しております。人工呼吸だけの症例についてはおそらく全国で施行された人工呼吸管理のうち80%程度を捕捉していると推察しています。2020/5/27記載 この下に示す折れ線グラフの人工呼吸実施数とかなり乖離しておりますが、これは一部の施設でその日の実施数だけを入力されているところがあるためです。ご了承ください。2021/1/15記載
2/5 現在     軽快 2013例,   死亡 562例,   人工呼吸実施中 534例

国内のCOVID-19重症者における人工呼吸器装着数(ECMO含む)の推移

このグラフはCRISISに申告された人工呼吸が必要な重症患者さんの推移を地方別、都道府県別に示すもので、上図とは違いECMOを装着した方々も加えた数になっております(ECMO患者はほぼ人工呼吸器も装着しているためです)。現在精度を上げるべく努力しております。全体の流れは把握していると自負しておりますが、かならずしも正確な数が示されている訳ではないことをご理解ください。COVID-19では長期の人工呼吸となる患者さんが多い傾向があります。2020/5/27記載
2/5 現在     実施件数 90件

国内のCOVID-19における人工呼吸治療(ECMO除く)の日数と転帰

軽快 死亡
軽快
平均 : 12.3 中央値 : 9.0 第1四分位数 : 6.0 第3四分位数 : 13.0
死亡
平均 : 18.5 中央値 : 16.0 第1四分位数 : 9.0 第3四分位数 : 24.0

国内のCOVID-19における人工呼吸治療(ECMO除く)の年齢分布と転帰

軽快 死亡 人工呼吸器実施中

国内のCOVID-19における人工呼吸治療(ECMO除く)の性別と転帰

軽快 死亡 人工呼吸器実施中

国内のCOVID-19における人工呼吸治療(ECMO除く)の肥満度分布

低体重 18.5未満 / 標準 18.5-25未満 / 肥満1 25以上-30未満 / 肥満2 30以上35未満 / 肥満3 35以上40未満 / 肥満4 40以上 BMI(Body Mass Index)にて分類
軽快 死亡 加療中 n=2199
  • 死亡率
  • 23%
  • 18%
  • 17%
  • 17%
  • 10%
  • 15%
救命率変化

2020年2月から2021年1月にかけて3つの大きな波がみられたので、それぞれ第一波、第二波、第三波として図示を行った。ここでは人工呼吸だけで管理した方と、さらにECMOに移行した方をあわせた救命率(次図はそれぞれを分けて図示)を示す。あわせて人工呼吸症例のうちどのくらいの方がECMOに移行したかを表に示した。第一波では人工呼吸からECMOに移行した方は4人に1人だったが第三波では移行の割合が第一波の1/3となっている。全体の救命率はむしろ第一波より二波、三波の方がよい傾向にある。この間CRISIS統計上、これら重症の方の2000人近くが救命され600人ほどの方が亡くなられた。国内の死亡者数は2021/1/23に5000人を超えたことを勘案すると600人は大変少ないが、CRISISの統計から漏れたECMO症例はほとんど無く、また人工呼吸症例も80%以上を把握しており、多くの方は高齢などを理由に重症治療をせず亡くなられたと考えられる。2021/1/22

救命率変化

たとえば第一波では705人の方が重症として人工呼吸治療を受け、そのうち531人の方が人工呼吸だけの治療を受け74.6%が救命されている。また174名の方は人工呼吸だけでは生命維持が難しいと判断されECMOを導入し69.5%の方が救命された。人工呼吸だけの治療の方で亡くなられた方々については、多くはECMOに移行しても救命は困難という判断がなされECMOへの移行が断念されたと考えられる。第一波から第三波をみていくと、次第に人工呼吸治療だけに止まった人の割合が増え、その救命率は高いままであるが、ECMOに移行した方々の救命率が徐々に下がっている。これには様々な理由が考えられるが、より重篤な患者さんがECMO治療の対象となる一方で、人工呼吸管理のノウハウが向上しECMOに移行せず救命されている方が増えている可能性が高い。また患者数の増加による負担増でECMO移行を回避している施設がある可能性も否定できない。また薬物治療、様々な酸素療法、意識下腹臥位療法などにより挿管人工呼吸自体も数多く回避されていると考えられる。救命された方々についても様々な後遺症が報告されており、現在調査を準備している。2021/1/22