消え行く歴史~なくなる地酒『吟雪』~(1)
せむし男。
130年もの歴史をもつ武蔵村山市の地酒、「吟雪」のイメージキャラクターである。「テレビCMに出てなかったっけ?」と錯覚を起こすほど、その風貌は地元民に定着しており、誰もが一度は目にしたことがあるであろうおじさんである。きっと。
その有名おじさんの酒蔵が、もうすぐなくなってしまう。せめてなくなる前の様子をと思い、足を運んでみた。
■ かくれおじさん発見
電柱に隠れているが、ダブル看板。
吟雪がなくなってしまったら、あの看板もおじさんもなくなってしまうのだろうか。
■ なつかしの外観に思いを馳せる
それらしい壁を見て、胸が高鳴る。
昔から「忍たま乱太郎」を観ていた私は、よく昔の城と勘違いした。だって手裏剣とか飛んできそうじゃないか。むやみに壁に張り付いてみたかったが、くるりと回転したら怖いのでやめた。ちなみに妹もやはり「歴史的な建造物」と勘違いしていたらしい。やはり兄弟だ。
この壁もみんな壊されてしまうのかと思うと、もったいない気がしてたまらない。地方の町だったら、たぶん観光資源として残してくれるのになぁ。
煙突に見せかけたモチーフはフェイク。
高さ10メートルくらいありそうな、吟雪の瓶モチーフ。その隣にお酒のケースが絶妙なバランスで積み重なっていた。こいつらはみんなどこへ行ってしまうのだろうか。
■ 突撃ショールーム
吟雪商品が売っているショールームに入ってみることに。人気が無いので、入るのには勇気がいる。日本酒なんて、おみやげでしか買ったことがない。
「長い間ありがとうございました」セールが催されていた。
紅白の垂れ幕が切なさをそそる。ああ、本当になくなってしまうのか。何とかして残せないものか。
値下げの仕方が尋常じゃない。
値下げの上に、さらに値下げ。この後店に入っても、衝撃的な値下げを目にすることになる。
「あ、不思議なお酒」を発見した。
とにかく安い。私は日本酒をほとんど飲んだ事がないため、お酒の知識が全くない。一番安いお酒を目当てに足を運んだため、何を買ったらいいのか迷ってしまった。
店内には私のほかにもう一人おじさんがおり、カウンターの女性と話をしていた。どうやら男性は「日本一うまい日本酒を飲む会」というのに所属しており、以前から吟雪のファンだったという。何度も「本当になくなっちゃうんだよね?」と聞き返す姿勢に、吟雪への愛を感じた。
酒屋さんが使っているような財布も売っていた。500円。
話の流れによれば、女性は渡辺酒造の社長の妹らしい。「何で無くなっちゃうの?」というおじさんの質問に対し、「いろいろありまして・・・」と苦笑いで答えていた。100年もの歴史が途絶えてしまうわけだ。相当な理由があるのだろう。
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