この記事は Florina Muntenescu による Android Developers - Medium の記事 "WorkManager — Kotlin APIs" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。


WorkManager — Kotlin API

WorkManager は、非同期タスクのスケジュールを簡単に設定するための一連の API を提供します。これにより、アプリが閉じられた場合やデバイスが再起動した場合にも実行されることが期待されるタスクを即時実行または遅延実行できます。また、WorkManager は Kotlin ユーザーに最大級のコルーチンのサポートを提供します。この投稿では、WorkManager Codelab の内容に基づいて、WorkManager とコルーチンの基本について説明します。では早速始めましょう。

WorkManager の基本

ユーザーが特定の画面から離れたり、アプリがバックグラウンド状態になったり、デバイスが再起動したりしても実行を続ける必要があるタスクには、WorkManager ライブラリを使うことが推奨されています。一般的には、以下のようなタスクが考えられます。

  • ログのアップロード、データのレポーティング
  • 画像へのフィルタの適用、画像の保存
  • ローカルデータとネットワークの定期的な同期

ユーザーが画面などの特定のスコープを離れたときに即時実行したタスクが終了する可能性がある場合は、直接 Kotlin コルーチンを使うことを推奨します。

WorkManager Codelab では、画像をぼかしてその結果をディスクに保存します。これを実現するために必要なことを確認しましょう。

まず、work-runtime-ktx 依存性を追加しました。

implementation "androidx.work:work-runtime-ktx:$work_version"

そして、独自の Worker クラスを実装します。ここに、バックグラウンドで実行する実際の作業に必要なコードを含めます。Worker クラスを拡張し、doWork() メソッドをオーバーライドします。これは一番重要なクラスなので、のちほど詳しく説明します。最初の実装は次のようになります。

次に、作業のリクエストを作成します。今回の場合は、作業を一度だけ行いたいので、OneTimeWorkRequest.Builder を使います。入力として、ぼかしたい画像の Uri を設定します。

Kotlin のヒント: 入力データを作成するために、workDataOf 関数を使うことができます。この関数は、データビルダーを作成し、キーと値のペアを格納してデータを作成します。

作業のスケジュールを設定して実行するには、WorkManager クラスを使います。その際に、実行するタスクと、タスクへの制約を指定できます。

Worker による作業の実行

Worker を使うと、WorkManager は自動的にバックグラウンド スレッドで Worker.doWork() を呼び出します。doWork() から返される Result は、WorkManager サービスに作業が成功したかどうかと、失敗した場合には作業を再試行すべきかどうかを通知します。

Worker.doWork() は同期呼び出しです。バックグラウンドの作業全体をブロックありで実行し、メソッドが終了するときには完了していることになります。doWork() で非同期 API を呼び出して Result を返すと、コールバックが正しく動作しない場合があります。

非同期作業を行いたい場合

もう少し複雑な例として、ぼかしをかけたすべてのファイルの Uri をデータベースに保存する場合を考えてみましょう。

これを実現するために、以下を作成しました。

  • 単純な BlurredImage エンティティ
  • 画像の挿入と取得を行う dao クラス
  • データベース

実装はこちらをご覧ください。

Kotlin でデータベースへのデータの保存やネットワーク リクエストなどの非同期作業を行う必要がある場合は、CoroutineWorker の利用を推奨します。

CoroutineWorker を使うと、Kotlin コルーチンを使って非同期作業を行えます。

doWork() メソッドは suspend メソッドです。つまり、中断を伴う dao を簡単に呼び出すことができます。

デフォルトで、doWork() は Dispatchers.Default を使います。この動作は必要な Dispatcher でオーバーライドできます。今回は、既に Room が挿入作業を別の Dispatcher に移動させているので、これを行う必要はありません。詳しくは、Room Kotlin API の投稿をご覧ください。

ぜひ CoroutineWorker を使って、ユーザーがアプリを閉じても完了しなければならない非同期作業を実行してみてください。

WorkManager についてもっと詳しく知りたい方は、今後のシリーズで詳しく解説しますので、ご期待ください。それまでの間は、Codelab やドキュメントをご覧ください。


Reviewed by Chiko Shimizu - Developer Relations team

この記事は Google Chrome、エンジニアリング ディレクター、Jochen Eisinger による Chromium Blog の記事 "Limiting Private API availability in Chromium" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。

最近の監査により、Google 専用の機能として想定されていた Chrome の同期や Click to Call などの Google 機能が、一部のサードパーティ製の Chromium ベースのブラウザに組み込める状態だったことがわかりました。これは、ごく一部のユーザーが Google アカウントにログインし、ブックマークなどの個人の Chrome 同期データを、Google Chrome だけでなく、一部のサードパーティ製の Chromium ベースのブラウザに保存できていたことを意味します。この対策として、2021 年 3 月 15 日より、プライベートな Chrome API へのアクセスを制限します。


サードパーティ製の Chromium ベースのブラウザから Google 機能(Chrome 同期など)にアクセスしていたユーザーのデータは、Google アカウントで引き続き利用でき、ローカルに保存したデータは引き続きローカルで利用できます。ユーザーは、My Google Activity ページで通常どおりにデータの表示や管理ができます。また、Google Takeout ページからデータをダウンロードしたり、こちらからデータを削除したりできます。 

サードパーティ製の Chromium ベースの製品ベンダー向けのガイドは、Chromium Wiki で公開しています。

Reviewed by Eiji Kitamura - Developer Relations Team

この記事は Miguel Guevara による Android Developers Blog の記事 "How we’re helping developers with differential privacy" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。


Google は、イノベーションとプライバシーは車の両輪だと考えています。その一環として2021 年 1 月、オンラインのユーザーの安全を確保するための私たちの取り組みについてブログでお知らせしました。その中では、差分プライバシー(ディファレンシャル・プライバシー / differential privacy )などの先進的なプライバシー技術に言及しておりました。

毎年 1 月 28 日は、データ プライバシーの日です。そこで、それに合わせて、Google のプロダクトに差分プライバシー技術を適用し、この技術を世界のデベロッパーや企業に広めていこうという新しい取り組みをここに詳しく紹介させていただきます。この取り組みにより、個人情報を確実に保護しつつ、データや知見に広くアクセスできるようになります。 


差分プライバシーで中核プロダクトを強化する


差分プライバシーは高度な匿名化技術で、初めて Chrome に導入されたのは 7 年ほど前になります。そして現在では、Google マップや Google アシスタントなどのプロダクトに日々活用されています。昨年、世界が COVID-19 と闘う中、COVID-19 コミュニティ モビリティ レポート(英語)を公開しました。差分プライバシーを使っているこのレポートは、世界の公衆衛生当局、エコノミスト、政策立案者がコミュニティにとって重要な決定をする際に活用していますが、いかなる時点においても、個人を特定できる情報は利用できないことが保証されています。


Google Play Console では、今年中に差分プライバシーの手法を用いたアプリの新たな指標やベンチマークをデベロッパー向けに提供する予定です。この機能がリリースされると、デベロッパーは個人が特定または再特定できないことが保証される方法で、日々のアクティブ ユーザー数、アクティブ ユーザーあたりの収益など、アプリがどのくらいユーザーを惹きつけているかを表す指標に簡単にアクセスできるようになります。

このようなアプリの新たな指標に差分プライバシーを加えることで、デベロッパーに有用な知見を提供し、アプリの改善に役立ててもらうことができます。その一方で、ユーザーのプライバシーやデベロッパーの機密性が損なわれることはありません。今後は、差分プライバシーを使った指標を増やすことを計画しています。 


OpenMined と連携し差分プライバシーを広める 


Google のプロダクトにおけるプライバシー保護技術は進化を続けていますが、デベロッパーがこの技術を利用できるようにすることも重要です。そこで、2019 年に差分プライバシー ライブラリをオープンソース化し、世界中のデベロッパーが自由にアクセスして簡単にデプロイして活用できるようになりました。それ以降、たくさんのデベロッパーや研究者、団体が Google の差分プライバシー アルゴリズムを利用して、プライバシーが保護される方法で責任をもってデータを使い、新しい問題の解決に取り組んでいます。そのような企業の 1 つに、フランスの新興医療企業 Arkhn があります。Arkhn は、差分プライバシーによって複数の部門にまたがる病院のデータを安全な方法で収集、照会、分析できるようになり、それを活用して人工知能で医療業界に革命を起こすというミッションを掲げています。


Arkhn のようなデベロッパーのチームに、高度な差分プライバシー ライブラリを広く提供するため、 2021 年 1 月 29 日(現地時間 1 月 28 日)、OpenMined との新たなパートナーシップを結びましたのでお知らせします。


OpenMined は、プライバシー保護技術を研究し、その活用法を世界中に広めることに注力しているオープンソース デベロッパー グループです。Google は、今後 OpenMined と協力し、差分プライバシー ライブラリの Python デベロッパー専用のバージョンを開発する予定です。Python デベロッパーは、Google の差分プライバシー対応インフラストラクチャと同じ仕組みを活用することで、ワールドクラスのプライバシーを備えた他にはない新しい方法でデータを扱うことができます。


昨年と同様、デベロッパーが既存の差分プライバシー ライブラリをさらに簡単に使えるようにする作業も継続します。たとえば今月には、Google で日々何千件ものクエリに利用されている、新しい差分プライバシーに対応した SQL データベース クエリ言語拡張機能をオープンソース化しました。アナリストがこのようなクエリを活用すれば、ビジネスに関する知見を得たりプロダクトのトレンドを確認したりできます。これは、プライバシーが守られたデータ分析を広め、世界中のデータ サイエンティストが個人のプライバシーを保護および尊重しつつ、強力な洞察を得られるようにするための一歩です。 


機械学習を進展させる連携的アプローチ


2 年前、TensorFlow Privacy(GitHub)をローンチしました。TensorFlow Privacy はオープンソース ライブラリです。これを使うと、デベロッパーがプライバシーに配慮した機械学習モデルを簡単にトレーニングでき、研究者は TensorFlow Privacy を使ってより安全なプライバシーを保証し、機械学習の水準を高めることができます。


昨年は、このライブラリを拡張して TensorFlow 2 をサポートするとともに、Keras モデル インターフェースと TensorFlow の既製 Estimator の両方をサポートしました。また、ウォータールー大学の研究者と連携してパフォーマンスを向上させています。これにより、新しいリリースでは一般的なワークロードのトレーニングが 4 倍以上高速になりました。


さらに、プライバシーを考慮した機械学習のトレーニングはコストが高くなってしまい、現実的ではない可能性があることがわかっています。そこで、機械学習モデルはどの程度プライベートなのかを理解するための調査を開始し、昨年、それに役立つ仮想攻撃ライブラリをオープンソース化しました。このライブラリを使うと、機械学習モデルの全体的なプライバシーの保護状況を確認できます。


その後は、プリンストン大学やシンガポール国立大学の研究者と連携。ライブラリのスコープを拡張して生成モデルや非ニューラル ネットワーク モデルをテストする新機能を追加しています。


先日、スタンフォード大学医学部の研究者がこの機能をいくつかのモデルで試しました。そのテストから、モデルの中でのプライバシーに関する動作が明らかになりました。その中には、それ以前はできなかったことも含まれています。 


また、差分プライバシーと堅牢性のトレードオフに関する新しい研究を発表しました。これは、AI 倫理の中核にあるもう 1 つの特性である、プライバシーと安全性に関わることです。


健全なオープンソース エコシステムを育み、広げていく一方で、Google 製品を使うユーザーをアルゴリズムによって保護するために、Google は高度なプライバシー保護を行う取り組みに投資をしております。私たちは、世界中のあらゆる人がトップレベルなプライバシー保護を享受すべきだと強く確信しています。そのためにさまざまな組織と協力してそのミッションを果たしてまいります。


Reviewed by Khanh LeViet - Developer Advocate and  Hidenori Fujii - Google Play Developer Marketing APAC



Google Cloud Japan は 2 月 3 日 (水)、2 月 10 日 (水)、3 月 17 日 (水)の 3 週にわたって Google Cloud App Modernization OnAir を開催いたします。

Google Cloud App Modernization OnAir では、Google Cloud のエンジニアが、モダンなアプリケーション開発で利用可能な Google Cloud のサービスや、コンテナ、Kubernetes を利用した開発手法、マイクロサービス アーキテクチャの採用、CI/CD パイプラインの構築、DevOps の実践方法、SRE の考え方、アプリケーション セキュリティ、デザインパターンなどをご紹介いたします。 既に Google Cloud についてご存知のお客様、これから利用を検討しているお客様、ぜひご視聴ください。

この Google Cloud App Modernization OnAir は、一度ご登録いただくと、3 週間分のセッションを追加登録なしでご視聴いただけます。配信当日はライブでの Q&A も行いますので、ぜひご参加ください。

また、今回 App Modernization OnAir 放送開始キャンペーンを実施しております。

参加ご登録者の中から抽選で 10 名様に Kubernetes パーカーをプレゼントいたします。

(全配信終了後に送付いたします)

事前お申込み受付中:http://goo.gle/devrelblog

開催概要

名 称 『App Modernization OnAir』

日 程 毎週 水曜日(3 連続開催) 2021 年 2 月 3 日(水)、2 月 10 日 (水)、2 月 17 日 (水)

対 象 開発エンジニア、インフラエンジニア、運用エンジニア

参加費 無料(事前登録制)

登 録 http://goo.gle/devrelblog

Posted by Takuo Suzuki - Developer Relations Team

この記事は Chet Haase による Android Developers - Medium の記事 "Now in Android #32" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。


Android 開発の最新ニュースやトピックをご紹介する Now in Android。今回はKotlin と Jetpack の API、Navigation についての新コース、最近公開されたブログ記事・動画・関連ドキュメント、ポッドキャスト エピソードなどをご紹介します。


最先端の Android 開発(MAD): Kotlin と Jetpack


最先端の Android 開発に関する技術コンテンツを扱う連載シリーズ MAD Skills の新しいミニシリーズ Kotlin で Jetpack API を使用する が順調に進んでいます。最初のエピソードを紹介した前回以降、3 つのエピソードが追加されました。この 3 つのエピソードでは、大まかに言えば Room ライブラリと WorkManager ライブラリの使い方に関する情報をお届けしていますが、コルーチンなどの Kotlin 機能を使ってコードをシンプルにする具体的な方法にも触れています。

Room Kotlin API の使用

このエピソードでは、Florina Muntenescu が、Room Kotlin API を使ってローカル データベース ストレージ要件を実現し、それをテストする方法について説明します。



ブログ記事(英語)でもご覧いただけます。


WorkManager Kotlin API の使用


このエピソードでは、Florina が WorkManager を使って非同期作業をスケジュールする方法を説明します。これは、すぐに実行することも、遅延実行することもできます。



ブログ記事(英語)でもご覧いただけます。


コミュニティ ヒント: Kotlin で開発のスピードと質を向上


Android の Google Developer Expert の Magda Miu さんとチームメンバーは、Kotlin を使ってわかりやすく、メンテナンスしやすい CameraX のベンダー拡張機能を記述しています。その方法について動画で説明してくれました。



Kotlin と Jetpack シリーズの締めくくりとして、1 月 15 日にからもう一度リアルタイム Q&A を開催しました。



1 月 18 日の週から、新しい MAD Skills シリーズが始まっています。連載中のコンテンツは、YouTube の MAD Skills プレイリストMedium の記事、またはすべてのリンクが掲載されているランディング ページからご覧いただけます。


Android トレーニング

Android Basics in Kotlin コースに新しいユニット「Unit 3: Navigation」が追加されました。

このユニットでは、Navigation コンポーネントAndroid アーキテクチャ コンポーネント ライブラリのその他の API に関するチュートリアルとサンプルを確認できます。


その他の最近公開されたブログ記事と動画


暗号と生体認証

Isai Damier が暗号と認証、セキュリティについての新しい記事(英語)を公開しました。暗号に関するさまざまな興味深い背景を取り上げながら、暗号を利用した安全なソリューションで生体認証が用いられることが多い理由について説明しています。


Kotlin の生産性

Florina Muntenescu が、Kotlin を使えば生産性が上がるという記事を公開しました。既にたくさんの Kotlin コードを書いている方なら、おそらくご存知のことでしょう。しかし、仕事で Kotlin を使うべきか迷っている方や、プロジェクトの他のメンバーを説得する方法を探している方なら、この記事に書かれている具体的な内容が役立つかもしれません。


RecyclerView で onClick() を扱う

Meghan Mehta が RecyclerView に関する連載シリーズの第 3 回目のブログ記事(英語)を公開しました。RecyclerView でよくある要件の 1 つが、ユーザーのクリックへの対応です。リストの項目をクリックすれば、通常は何かが起こります。記事では、この機能を扱うおすすめの方法を紹介します。


ADB (Android Developers Backstage) ポッドキャスト 新エピソード


前回の Now in Android 以降、Android Developers Backstage に新しいエピソードが投稿されています。以下のリンクまたはお気に入りのポッドキャスト クライアントでご確認ください。

ADB 154: It’s a Wrap!

2020 年末、Tor NorbyeRomain Guy、そして私がこのエピソードを収録しました。昨年、それまでとは違う働き方を模索する中で起きたことや、Android のツールやプラットフォームの最新機能について解説しています。

 


またお会いしましょう

今回は以上です。次回も Android デベロッパーの世界の最新アップデートをお届けします。お楽しみに。


Reviewed by Yuichi Araki - Developer Relations Team and Hidenori Fujii - Google Play Developer Marketing APAC

この記事は Florina Muntenescu による Android Developers Blog の記事 "MAD Skills Kotlin and Jetpack: wrap-up" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。


今回は MAD Skills シリーズの 1 つ、Kotlin と Jetpack についての動画と記事をまとめました。Android コードの表現力と簡潔さ、安全性を向上させ、Kotlin で非同期コードを実行しやすくするさまざまな方法を取り上げています。

それぞれのエピソードから、Kotlin と Jetpack についての最新情報をご確認ください。いくつかの具体的な API を取り上げ、API の使い方だけでなく、API が内部的にどのように動作しているか解説しています。また、すべてのエピソードには対応するブログ投稿があり、そのほとんどにサンプルか Codelab へのリンクが含まれているので、実際に試してみたり、コンテンツに関する理解を深めたりできます。また、Jetpack や Kotlin のエンジニアが登場するリアルタイム Q&A も実施しました。

エピソード 1 - KTX ライブラリの使用

このエピソードでは、Jetpack KTX 拡張機能を使って、Android と Jetpack のコーディングを簡単、快適、そして Kotlin らしくする方法を取り上げました。現在のところ、20 以上のライブラリに KTX 版があり、その中から特に重要なものを紹介します。core-ktx は、Android プラットフォームに由来する API を Kotlin らしく書けるようにする機能を提供しています。また、LiveData や ViewModel などの API と組み合わせてユーザー エクスペリエンスの向上を図れるいくつかの Jetpack KTX ライブラリも紹介します。

動画またはブログ記事(英語)をご覧ください。


エピソード 2 - コルーチンと Flow で API をシンプルに

エピソード 2 では、コルーチンと Flow を使って API をシンプルにする方法と、suspendCancellableCoroutine API と callbackFlow API を使って独自のアダプタを作る方法について説明します。このトピックを実際に試してみたい方は、Kotlin 拡張機能ライブラリの作成 Codelab をご覧ください。

動画を視聴するか、ブログ記事(英語)でご確認ください。


エピソード 3 - Room Kotlin API の使用とテスト

このエピソードでは、実際に Room を使ってみます。その上で、Kotlin を使って Room のテーブルやデータベースを作る方法、挿入などの 1 回限りの suspend 操作を実装する方法、Flow を使った監視可能クエリーについて簡単に確認します。コルーチンと Flow を使うと、Room はすべてのデータベース操作をバックグラウンド スレッドに移してくれます。Room のクエリーの実装方法やテスト方法については、動画またはブログ記事(英語)をご覧ください。実際に試してみたい方は、ビューで Room を使う Codelab をご覧ください。



 エピソード 4 - WorkManager Kotlin API の使用

エピソード 4 では、WorkManager を使って作業を簡単にする方法について説明します。この機能を使うと、非同期タスクのスケジュールを設定して、アプリが閉じられた場合や、デバイスが再起動した場合にも実行されることが期待されるタスクを、即時実行または遅延実行できます。このエピソードでは、WorkManager の基本について説明し、CoroutineWorker などの Kotlin API についても解説しています。


こちらの動画またはこちらのブログ記事(英語)をご覧ください。また、ぜひ WorkManager Codelab で実際に体験してみてください。



エピソード 5 - コミュニティ ヒント

エピソード 5 では、Android の Google Developer Expert の Magda Miu さんが Kotlin の基本 API と CameraX を使った経験についてお話ししています。



エピソード 6 - リアルタイム Q&A

最後のエピソードでは、リアルタイム Q&A を実施しました。司会の Chet Haase のほか、ゲストとして Architecture Components テックリードの Yigit Boyar、Kotlin プロダクト マネージャーの David Winer、そしてデベロッパー リレーションズ エンジニアの Manuel Vivoが参加し、YouTube、Twitter などから寄せられた質問に回答しています。



Reviewed by Yuichi Araki - Developer Relations Team and Hidenori Fujii - Google Play Developer Marketing APAC

この記事は Florina Muntenescu による Android Developers - Medium の記事 "More productivity with Kotlin" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。

Kotlin は簡潔なプログラミング言語として知られています。そしてそれは、高い生産性を意味します。そして実際に、Kotlin を使っている Android デベロッパーの 67% が、生産性が向上したと述べています。このブログ投稿では、Kotlin を使ってパートナーのエンジニアたちが生産性を向上させた方法をいくつか共有し、そのために役立つ Kotlin の機能も紹介します。


簡潔さ、シンプルさと生産性

  • Kotlin の簡潔さは、開発のあらゆる段階で効果を発揮します。

  • コードの作成者は、構文ではなく、解決しなければならない問題に集中できます。 テストやデバッグするコードが少なくなれば、バグが生まれる可能性も少なくなります。

レビューやメンテナンスの担当者は、読むコードが少なくなるので、コードが行っていることを理解しやすくなります。そのため、レビューやメンテナンスが楽になります。

その一例として、Flipkart のチームを紹介しましょう。

「弊社の社内調査によると、デベロッパーの 50% が、Kotlin でモジュールを書くと [機能を完成させるまでの] 見積りが小さくなると回答しました」(Flipkart)


Kotlin の機能と生産性

Kotlin の機能のほとんどは、簡潔さと高い可読性を持つため、高い生産性につながります。特によく使われる機能について見てみましょう。


デフォルト引数とビルダー

Java プログラミング言語では、コンストラクタのパラメータが省略可能な場合、一般的に次の 2 つの方法のどちらかを利用します。

Kotlin ではデフォルト引数を利用できるので、どちらも必要ありません。デフォルト引数を使うと、ボイラープレートを追加することなく、関数のオーバーロードを実装できます。

Cash App チームが Kotlin を使い始めたとき、多くのビルダーを削減し、書く必要があるコードの量を減らすことができました。場合によっては、コードのサイズが 25% 少なくなりました。

たとえば、以下の一例は、 Task オブジェクトの実装で、タスクの名前のみが必須パラメータになっています。ビルダーを使った場合と、デフォルト引数を使った場合でそれぞれどうなるかを示しています。

/* Copyright 2020 Google LLC.

   SPDX-License-Identifier: Apache-2.0 */


- public class Task {

-     private final String name;

-     private final Date deadline;

-     private final TaskPriority priority;

-     private final boolean completed;

-

-     private Task(String name, Date deadline, TaskPriority priority, boolean completed) {

-         this.name = name;

-         this.deadline = deadline;

-         this.priority = priority;

-         this.completed = completed;

-     }

-

-     public static class Builder {

-         private final String name;

-         private Date deadline;

-         private TaskPriority priority;

-         private boolean completed;

-

-         public Builder(String name) {

-             this.name = name;

-         }

-

-         public Builder setDeadline(Date deadline) {

-             this.deadline = deadline;

-         return this;

-         }

-

-         public Builder setPriority(TaskPriority priority) {

-             this.priority = priority;

-             return this;

-         }

-

-         public Builder setCompleted(boolean completed) {

-             this.completed = completed;

-             return this;

-         }

-

-         public Task build() {

-             return new Task(name, deadline, priority, completed);

-         }

-     }

-}

+ data class Task(

+     val name: String,

+     val deadline: Date = DEFAULT_DEADLINE,

+     val priority: TaskPriority = TaskPriority.LOW,

+     val completed: Boolean = false

+) 


デフォルト引数の詳細については、連載シリーズ Kotlin Vocablary のブログ記事「Kotlin のデフォルト引数」をご覧ください。


オブジェクトとシングルトン

おそらく、シングルトン パターンはソフトウェア開発で特によく使われるパターンの 1 つでしょう。オブジェクトのインスタンスを 1 つだけ作成し、他のオブジェクトから共有してアクセスできるようにしたい場合に役立ちます。

シングルトンを作るには、インスタンスが 1 つだけ存在するようにオブジェクトの作成方法を制御し、コードがスレッドセーフであることを保証する必要があります。Kotlin では、object キーワードだけでこれを実現できます。

 /* Copyright 2020 Google LLC.

   SPDX-License-Identifier: Apache-2.0 */

   

- public class Singleton{

-    private static volatile Singleton INSTANCE;

-    private Singleton(){}

-    public static Singleton getInstance(){

-        if (INSTANCE == null) {                // Single Checked

-            synchronized (Singleton.class) {

-                if (INSTANCE == null) {        // Double checked

-                    INSTANCE = new Singleton();

-                }

-            }

-        }

-        return INSTANCE;

-    }

-    private int count = 0;

-    public int count(){ return count++; }

- }


+ object Singleton {

+     private var count = 0

+     fun count(): Int {

+         return count++

+     }+ }

演算子、文字列テンプレートなど

Kotlin 言語の簡潔さとシンプルさは、演算子オーバーロード、分割代入、文字列テンプレートなどの機能から明らかです。そのため、コードはとても読みやすくなります。

たとえば、本を集めたライブラリがあるとしましょう。ライブラリから本を取り出し、そのタイトルだけを出力する場合、コードは次のようになります。

/* Copyright 2020 Google LLC.

   SPDX-License-Identifier: Apache-2.0 */


fun borrow(){

    library -= book

    val (title, author) = book

    println("Borrowed $title")

} 


使われている Kotlin の機能は次のとおりです。


 

まとめ

Kotlin を使うと、コードは読みやすく、書きやすくなります。シングルトン委譲などのパターンが言語に組み込まれており、たくさんのコードを書く必要がないため、バグが紛れ込む確率が低くなり、メンテナンスの負荷も軽減されます。また、文字列テンプレートラムダ式エクステンション関数演算子オーバーロードなどの機能で、コードをさらに簡潔かつシンプルにできます。書くコードが少なくなれば、読むコードやメンテナンスするコードも少なくなり、エラーが減って生産性が上がります。


詳しくは、Kotlin と Android Kotlin でより優れたアプリを作成するをお読みください。また、各社のケーススタディをご覧ください。デベロッパーにとっての Kotlin のメリットが確認できます。世界で特に好まれている開発言語の 1 つである Kotlin を使ってみたい方は、入門ページをご覧ください。

Reviewed by Yuichi Araki - Developer Relations Team and Hidenori Fujii - Google Play Developer Marketing APAC