TSMCとUMCの反応
TSMCは1月29日付の日経新聞で、「車産業に与える影響を軽減することが、当社の優先事項だ」として、「通常の工程で40~50日かかる納期を最大20~25日に半減する“スーパーホットライン”という手法の導入を検討する」と表明した。しかし、これは一時的な応急処置であって、根本的な打開策にはならない。
そのため、前掲記事には、「半導体不足を解決するには新たな生産ラインを敷設するしかない。そのため、車載半導体の不足解消には最低半年かかる」と記載されている(なお、最後に述べるが車載半導体のラインを新設したら、半年どころか1~2年は最低かかる)。
また、UMCは1月27日の記者会見で、経営トップが「車向けの供給だけを優先するのは無理だ。我々は注文を受けた順番を崩すわけにはいかない」と回答し、車載半導体の増産には応じられない考えを示した。
このように、2021年は年明け早々、クルマ業界には車載半導体の供給不足という大問題が持ち上がった。そこで、本稿では、なぜ車載半導体が不足するのか、その真相究明を試みたい。
なお、本稿に先立って筆者は1月17日に『なぜ半導体不足で世界中の自動車メーカーが軒並み減産に? 解消に1~2年かかる可能性』(ビジネスジャーナル)という記事を公開したが、この分析では不十分だった。本稿では、前掲拙著記事と重複する部分もあるが、車載半導体が足りない真の原因を明らかにする。
コロナによるクルマ産業へのダメージ
図3に、2016~2020年の日本における新車販売台数の推移を示す。新車販売台数は月ごとに大きく変動するが、特に年度末の3月に毎年大きなピークがあることがわかる。2020年はクルマメーカーがコロナの直撃を受け、多くの工場が減産したり停止したりした。図3を見ても、2020年の新車販売台数が低調であることが見て取れる。
出所:一般社団法人日本自動車販売協会連合会の統計データを基に筆者作成
ここで、2016~2019年の毎月の平均新車販売台数(以下、平均台数)と、2020年の販売台数との比較を行った(図4の上)。そして、この両者の差、つまり2020年は毎月、平均台数に対してどの程度、落ち込んだかをグラフにしてみた(図4の下)。
出所:一般社団法人日本自動車販売協会連合会の統計データを基に筆者作成