なぜ、これほど車載半導体市場が成長すると予測されているのか? それは、クルマ産業界が「CASE」(Connected、Automated、Shared、Electric)の大変革期を迎えていることに原因がある。特に、Connectedには最先端の5G通信半導体が必要であり、また、Automated(自動運転)にはやはり最先端の人工知能(AI)機能付きの半導体が必要不可欠だからである。
例えば、自動運転システムの世界市場は、2019年から2023年にかけて2.2倍に成長すると予測されている(図12)。この自動運転システムの中核を担うのが、瞬時にネットにつなぐ5G通信半導体であり、AI機能をもった最先端半導体である。これら5G通信半導体やAI半導体は、図8に示した各種の車載半導体の中では、ロジックに分類される。
出所:Netscribesのデータを基に筆者作成
アナログ、MCU、ロジックの長期的トレンド
各種アナログ半導体の過去10年間の推移を見ると、自動車用においては2018年以降(2020年第2四半期の落ち込みを除けば)ほぼ横ばいである(図13)。
出所:WSTSのデータを基に筆者作成
MCUの過去10年間の推移は、2010年から2018年にかけて上下動しながら成長してきたが、2018年中旬以降、横ばいになったように見える(図14)。
出所:WSTSのデータを基に筆者作成
一方、各種ロジック半導体の過去10年間の推移を見ると、自動車用は、市場規模こそ小さいものの2016年以降に急成長している(図15)。これは、前述した通り、ネットにConnectedした上で、Automated機能を行う車が増えたことに起因すると考えられる。
出所:WSTSのデータを基に筆者作成
ところが、自動車用ロジック半導体は、2019年第4四半期10.7億個から出荷個数が減少し、2020年第2四半期に9.2億個まで落ち込んだ。同年第3四半期に10.2億個まで回復したが、過去4年間から続く増加のトレンドから言えば、12億個以上(グラフを外挿すると約15億個)必要になっているのではないだろうか。
すなわち、今年2021年になって顕在化した車載半導体の供給不足の正体は、最先端ロジック半導体が全く足りないことによるものと考えられる。
レガシーではなく最先端半導体が不足している
その1つの証拠を図16に示す。図16Aは、2020年におけるTSMCのテクノロジーノードごとの四半期別出荷額である。図16Bは、2020年第1四半期のそれぞれの出荷額を「1」と規格化した時の出荷額の変化を示す(5nmだけは第3四半期の出荷額を「1」とした)。
出所:TSMCのHistorical Operating Dataを基に筆者作成