第6話 獅子王様、自意識が過剰
家より巨大な魔獣が村を練り歩く、阿鼻叫喚の地獄絵図(´・ω・`)
「ゴルル(こんにちは)」
「ひええええええええっ?!」
「ゴルル(ご機嫌はいかがかな?)」
「ぎゃああああああああああああっ!」
「ゴルル(余はベヒモスという)」
「うわああああああああああああああっ!」
「ゴルル(良ければ)」
「いやあああああああああああああああっ!」
「ゴルル(余を)」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」
「ゴルル(飼っては)」
「ブクブクブク……」
「ゴルル(くれぬかな?)」
「がはっ……!」
死屍累々だった。
巨大な魔獣である獅子王が、眼前でゴルルと喉を鳴らすたび、村人たちは失神した。
村中を練り歩き、あっという間に制圧してしまった獅子王は、ひとりごちる。
「ゴルルル(なぜ皆、話をする前に気を失ってしまうのだ……?)」
夜の闇より深い黒銀の毛皮。
額から伸びる巨大な二本の角。
鋼をよじり合わせたような筋骨隆々の四肢。
剣のように鋭い爪牙に、鞭のごとき尻尾。
こんな凶悪な見た目をした魔獣が、目の前で血生臭い息を吐きかけてくれば、どんな者でも失神するというものだ。
しかし、獅子王は人の気持ちがわからない。
しばし考え込み、結論に至る。
「ゴルッ(そうか、あまりに余が可愛すぎるせいだな。余の可愛さここに極まれり。余はなんと罪作りな雌なのか)」
獅子王は照れたように尻尾を揺らし、近くにあった木が風圧で切り倒された。
「ゴルル(ふふふ、おもばゆい。村人の目が覚めたら、もう一度声をかけてまわろうではないか)」
可愛さではなく勘違いが極まっている獅子王は、もう一度あの悲劇を引き起こすつもりらしい。
村人たちが起きるまで自分も一寝入りしようかと、人々が倒れる広場でうずくまる。
「にゃーん(愚かな……)」
そこへ呆れるような一声がかけられた。
おのれ、なにやつ?!(´・ω・`)