第4話 獅子王様、第一村人発見
平和な村発見(´・ω・`)
その日、人々は思い出した。
この海を隔てた先に、暗黒の大陸が存在することを。
そこからやってくる魔獣の恐ろしさを。
その血に、その魂に、刻まれた恐怖を、彼らは思い出した。
「なんだ、あの雲……?」
最初に気づいたのは、外で遊ぼうとしていたニコライだ。
洗濯物を干すのを手伝ってという母の頼みを無視して、家を飛び出したその直後のことだった。
まばゆい閃光が一瞬走ったかと思ったら、巨大な雲が東の空に立ち上っていた。
まるでキノコのような不思議な雲だ。
ちょっと美味しそうな形をしている。
そう思った直後、突風が吹き荒れた。
洗濯物を干す前でよかったね、母ちゃん。
ニコライは風に吹き飛ばされながらそう思った。
干し終わっていれば、今の一瞬で全て飛んでいってしまっていただろう。
小柄なニコライが抵抗もできずに転がるほどの強い風だった。
花壇の花や鉢植えの木なども倒れてしまっている。
「なんだったんだろ……」
体についた砂利を払って、ニコライは立ち上がる。幸いにして、どこも打っていないようだ。
いつも庭先の椅子に座って日向ぼっこをしている祖母が、泡を吹いてひっくり返っていた。
「ばっ、ばあちゃん! 大丈夫!?」
孫のニコライは慌てて助け起こすが、老婆の目はあのキノコ雲に奪われていた。
「く、来る……! 奴らが……! 奴らが来るのじゃぁぁぁぁっ……! 暗黒の大陸より! 魔なるものたちが……! 終わりじゃ、この世の終わりじゃぁぁぁぁぁっ……!」
「婆ちゃんどうしたんだよ?! 落ち着いてよ! 母ちゃん! 婆ちゃんが変だよ!! いつも変だけど、今日はとびきり変だよ! あと外も変だよ!!」
お手伝いをサボったことを怒っているであろう母に呼びかける。
しかし、待っても母は出てこない。
不思議に思ったニコライは、祖母を椅子に座らせて、家の中へ様子を見に行った。
「なあ! 母ちゃんってば! 婆ちゃんが変なんだって! 聞いてよ! 母ちゃ──」
母は窓を見て硬直していた。
「に、に、に」
それはニコライ、だったのか。逃げなさい、だったのか。
窓を見つめ硬直する母の向こう。窓の外にはその窓枠いっぱいの大きな目玉が、こちらを覗き込んでいた。
「ゴフゥ……ゴオルルル……」
地獄の底から響いてくるような、重たい唸り声。
絶対的捕食者の視線に晒され、ニコライと母はその場で卒倒した。
こんにちはー(´・ω・`)(窓)