海外口座情報219万件入手 国税庁、税逃れ防止に活用

国税庁は2日、海外の税務当局と金融口座情報を交換するCRS(共通報告基準)により、2021年1月時点で日本の個人や法人が84カ国・地域に保有する口座情報約219万件(速報値)を入手したと発表した。交換対象国の拡大などを背景に20年6月時点の約205万件から約6%増加した。

CRSによる情報は国際的な税逃れの監視や税務調査で威力を発揮し始めており、同庁は今後も積極的に活用していく方針だ。

CRSは国際的な租税回避を防ぐため、経済協力開発機構(OECD)で策定された制度。各国の税務当局が自国の金融機関に対し、外国に住む顧客(非居住者)の口座情報を報告させ、情報交換する仕組み。交換対象国は21年1月時点で104カ国・地域。20年には台湾が参加するなど徐々に増えている。

国税庁によると、最新の約219万件のうち、アジア・オセアニアからの情報が約180万件で全体の約8割を占めた。次いで欧州などの約31万件、北米・中南米は約6万8千件、中東・アフリカは約2800件だった。日本からは69カ国・地域に約64万件の情報を提供した。

日本は18年から口座情報の交換を開始した。初回は残高が1億円超の口座などが対象で約74万件(18年秋から19年6月末までに入手)だったが、19年交換分(20年6月末時点)は1億円以下も加わり約205万件となった。

国税庁は今回初めて、約205万件(20年6月末時点)の口座残高が約10兆円あると明らかにした。CRSの枠組みには米国が入っておらず、法人口座(上場会社などは除く)も含まれるため一概には言えないが、日本人の富裕層が海外に持つ資産規模の一定の目安となる。

国際的な税逃れの監視や税務調査に、CRSによる情報を活用する案件も増えている。大阪国税局が手掛けたケースでは、相続人3人が父親の死後、海外の父親名義の預金口座に残高があることを認識していたが「海外預金なので把握されることはないだろう」と考え、申告財産から除外していたという。

大阪国税局はCRS情報を活用して海外口座の存在をつかみ、さらに過去の贈与税が無申告だったことも突き止めた。相続人3人は総額約13億6千万円の申告漏れを指摘され、重加算税を含めた追徴税額は約5.3億円に上った。

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