「この人たちは、宇宙人か?」 3年前、東大の上野千鶴子ゼミに参加した最初の頃、私は本気でそう思いました。 資料文献を見ると、「中心概念」「根本的価値」に始まり「共同体主義的発展論」「不等価交換」などなど漢字のオンパレードで、英語の文献も読めて当たり前という雰囲気。「ベトナムに行ってきます」と言う人に、 「バカンス? いいなあーー」 と返せば、 「いえ、第三世界研究のためです」 ときた。化粧っけもなく、一月の生活費四万円で暮らしているケースまである東大大学院の学生たちに驚きました。 そして何より、上野教授のゼミのすさまじさ。遅刻の友人をかばって、「彼女はもうすぐ来ると思います」と言った学生に、 「何を根拠に来ると思うのか」 ゼミ発表者の「フェミニズムって、ヒューマニズムだと思うんです」という発言に、「それはあなたの信念です。ここは信念を議論する場所ではない」 と、ぴしゃり。不用意な言葉を使おうものなら、微動だにしない目線で、 「分からない」 もうこれで、ノックアウト。完全KO負けです。私は、そんな中に入って「こわ~」と思いながらも、 「一字一句を正確にしろ」 「分からないことを、分かったような気になってしまうと恐い」 という上野教授の主張に、はまっていきました。 以来3年間、仕事の合間を縫って週に何回も新幹線で上京し、学部のゼミと講義、大学院ゼミ、コロキアム(プロのゼミ)というスケジュールを消化。スキー場のベッドでも新幹線の中でも文献を読み・・・と必死で勉強し、この3月に終了しました。
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