透明なクリスタルの剣を発見 image credit:Miguel Angel Blanco de la Rubia
スペイン南西部、セビリア近くの古代墓から、儀式的な埋葬をされたと思われる数体の遺骨とともに、驚くべき副葬品が発見された。それはクリスタル(水晶)を削って作られた美しい短剣だ。
精緻に作られたこの短剣は少なくとも紀元前3000年頃のものと思われ、先史時代のイベリア半島でこれまで見つかっている、クリスタル文化の中で、技術的にもっとも洗練され、美的にも見事なもののひとつだという。
古代においてクリスタルは魔法の力を宿すと言われていた。実用性はあまりないものの、先史時代の人々によっては、ある種の聖剣的意味合いを秘めていたのかもしれない。
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希少な天然の水晶を削った短剣
ヨーロッパの先史時代人はたいてい、チャート(無水珪酸からなる硬い堆積岩)やフリント(火打ち石)などから道具を作った。
水晶を削って作られた道具は珍しいが、紀元前3000年のイベリア半島南西部など、ヨーロッパの特定の地域では、製造方法が開発され、先史時代後期にはこうした技術が登場していた。
水晶は形成が難しい上に、この地域では天然の水晶が手に入りにくかったこともあって、先史時代の人たちは、自分たちの社会的価値が出るものとして大切にしたと思われる。
現代の私たちが見ても驚くほどのものなので、数千年前の人たちもさぞ目を見張っただろうことは想像に難くない。
刃渡り21センチのこの水晶の短剣は、スペイン、セビリア近くの町バレンシナ・デ・ラ・コンセプシオンにある遺跡の8つの巨石墓のひとつから見つかった。
image credit:Miguel Angel Blanco de la Rubia
様々な副葬品が発掘された巨石墓
この巨石墓のひとつ「モンテリリオ・トロス」は、2007年から2010の間に発掘作業が行われた。39メートルの回廊が、直径4.75メートルのメイン玄室に続いている巨石構造物で、そこから狭い廊下を通って、第二玄室に行くことができるようになっている。
見つかった遺体は少なくとも25体あり、穴のあいたビーズや琥珀のビーズをふんだんに使って作られた屍衣や衣服、たくさんの火打ち石の矢尻、黄金の刃の破片、象牙製品、まばゆいほどの水晶核など、さまざまな豪華な副葬品も一緒に出てきた。
矢尻や刃、水晶の短剣は、メインの玄室の裏から見つかり、その他のものはここにはなかった。
メインの玄室から延びる回廊のすぐ隣にあった副葬品の数々は、メインの回廊で発見されたものと似たような供物だったが、そこにあった矢尻は低品質の材料で作られていて、祭壇や植物などその他の大きなひとくくりの供物と共に見つかった。
image credit:Miguel Angel Blanco de la Rubia
水晶はエリート階級のために遠くから運ばれてきた可能性
モンテリリオ・トロスの中で遺骨が発見された複数の女性とひとりの男性は、服毒して死んだとされている。
女性たちの骨は、高い地位だったと思われる男性の骨があった部屋の隣で、輪になった状態で見つかっている。水晶の短剣そのものは、ついていたと思われる象牙の柄や鞘と共に別の部屋にあった。
遺跡付近では、短剣に使われている水晶は産出されない。つまり、材料の水晶は遠くから運ばれてきたことになる。
これら、水晶の短剣や矢尻は、金銭的余裕のある少数のエリートのためのものだった可能性があり、そういう意味でも特別に重要性をもつものだった。
image credit:Miguel Angel Blanco de la Rubia
特別な意味を持つクリスタルの短剣
一方で、材料の異国情緒性や、加工するのに特殊スキルやある程度の専門知識が必要だったことから、社会的重要性もあった。
これらは時代のエリートだけが手にすることのできた葬儀の道具だったのかもしれない。
この水晶の刃につける象牙の柄も、地元にはない材料で作られていて、かなりの価値があったに違いなく、ここからも高い地位にあった者がこうした道具を使うことができたと思われる。
水晶は当時魔法の力を宿す特別な石とされていた。この短剣は実用性というよりも、象徴的な意味を持っていたと考えられている。
2015年に発表された論文には、純粋に原材料としての水晶や石英が、活力や魔法の力、そして祖先とのつながりを象徴する社会の例を示していると述べている。
References:zmescience / dailygrail/ written by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ファンタジーの世界じゃなくて、現実に存在するんだね。
2. 匿名処理班
現代人の俺ですらこの水晶の剣に魅了されてしまったし
当時の人だと神人と思われても不思議じゃないな
3. 匿名処理班
15000ギル
4. 匿名処理班
無属性だ
5. 匿名処理班
BGMはファイナルファンタジーのプレリュードでお願いします。
6. 匿名処理班
本物なんだろうか?
7. 匿名処理班
これは明らかに実用品ではなく
何らかの宗教的儀式用か
神霊術や魔術の類に
使われる物だったんでしょうね
古代日本でも青銅鏡なんかがあるけど
昔は物が写る超神秘的なモノとして
重宝されてたでしょうしね
あと現存してた時は黄金色だったろうし
8. 匿名処理班
イカの骨かと思った
9. 匿名処理班
エッジのギザギザに実用性は無いから装飾用とか儀礼用でしょうなあ
10. 匿名処理班
掘り出してしまったのか!? 封印が破られた!(夜勤終わりテンション)
11. 匿名処理班
かなり大きい結晶なんだろう。
産地はわからないもんかな?
12. 匿名処理班
氷の様で綺麗だね、月明かりの下で見てみたいなぁ
13. 匿名処理班
あ~~ あ~~~ 果てしない~~~~♪
14. 匿名処理班
厨二病加速
15. 匿名処理班
この短剣の柄頭、人のアゴの骨だよね。
16. 匿名処理班
ゾディアックウェポンっぽい
17. 匿名処理班
黒曜石の刃物の要領で作った、透明バージョンか。
他の実用品との対比もあって、美しさが際立つな。
19. 匿名処理班
※17
黒曜石のナイフ
すっごい切れ味良くて
切開手術に使うと普通のメスより
傷が早く治るってホントかなぁ❓
20. 匿名処理班
日本でも縄文時代に水晶製の鏃は出てるけど流石にここまででかくはなかったな
21. 匿名処理班
※8
確かに、コウイカね
22. 匿名処理班
※9
これが儀式用と言うのは間違いないだろう、普段使いのナイフは黒曜石などで、水晶のこれは特別製、黒曜石の加工技術で作ったのだろう。
ギザギザはこういう風にしか加工できないからだけど、水晶じゃなくてより粘りがある黒曜石だと効果的、今風にいえばセレーション(波刃)。
他の人も書いてるけど肉を切るには鋼より優れてる(大きくは切れないけど)。
23. 匿名処理班
※1
ここまで透明度の高い物は無いけれど、日本でも水晶の石器は出土されているよ。
祭具として使ったかは分からないけど、加工が難しい物をわざわざ仕上げた訳だしそれなりの価値は持たされたと思う。
硬度も高いから一定の実用性はあったかも。
24. 匿名処理班
※19
黒曜石がメスより切れるのは本当です。
大きな奴に鹿の角などを当てて打ち欠いていくのですが、蛤型に取れた欠片はめちゃくちゃ切れます、これで最初の切開を行えば傷痕は綺麗に治ると思います。
ただギザギザのほうは逆に傷を汚くします、何枚ものかみそりを重ねて引くような感じになるので。
波刃の利点は一回でジグザグに傷が付くので獲物の出血を多くし倒しやすいこと、この傷は治りが悪いこと(昔のバリソンナイフなど綺麗に縫えない)。
もう一つは滑らないこと、濡れたロープなど切りやすいです、アウトドアナイフには根元や峰に波刃をつけたものがあります。
あとノコギリみたいに使う、パン用の包丁がそれです。
まとめると画像のこれだと傷は綺麗にならないでしょう、でも水晶や黒曜石あるいはガラスは刃物より硬度が高いため工夫すれば皮膚を綺麗に切ることが可能です。
25. 匿名処理班
※19
セラミック包丁と金属の包丁みたいなもんなのかな…?
金属だと、しょっちゅう研いで手入れしてないと
すぐ刃先が丸まってきて切れ味が悪くなるけど、
陶磁器質のほうが形が変わりにくいし、
脂っこい肉を切るのにも金属ほど鈍りにくいようだし。
ただ、硬度が高くて弾性に欠ける素材は、
骨など硬い物に当たるとパキンと割れたりしやすいけど。