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(鶴蔵)君には これから 道頓堀へ行ってもらう。
(千代)えっ…。道頓堀で新しい喜劇の一座 作ることになった。
君には 舞台女優としてその劇団に入ってもらう。
大山鶴蔵社長の鶴の一声で千代ちゃんは 鶴亀撮影所から道頓堀へ戻ることになったのです。
東西東西!
千代ちゃん… 千代ちゃんやがな!ご無沙汰しております。
千代ちゃん! 映画見たで!おっちゃん おおきに。
4年ぶりの道頓堀です。
(小次郎)これはこれは 大女優のお帰りや。
千代ちゃんや~!千代ちゃ~ん!
(拍手と笑い声)ただいま。
♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪「まだ何か足りない気がした」
♪「涙色したブルー こぼれて ひろがって」
♪「ほら いつも通りの空」
♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪「転んでも ただでは起きない」
♪「そう 強くなれる」
♪「かさぶたが消えたなら」
♪「聞いてくれるといいな」
♪「泣き笑いのエピソードを」
♪~
(福助)あっ お前…。福富のボン!
久しぶりやなあ。 岡安の…。
名前 何やったかな?千代や 千代!
千代や 千代!
(みつえ)千代!
みつえちゃんや~!
ちゃう! 「みつえちゃん」ちゃう!
みつえや。
福助! ここが福富やの?
そや。 楽器は舶来の一級品。楽譜もレコードも扱うて大阪中の音楽好きが集まってくんねんで。
一念発起。 お父ちゃんと2人でお母ちゃん説き伏せたんや。
このまま芝居茶屋続けてても時代に取り残されるだけや言うてな。
(菊)よろしおますか あんさん。
これからはジャズ…ジャズだっせ。
レコード聴いていきなはれ。うちんとこなコーヒーも飲めるさかい。椿 ご案内して。へえ!
(菊)あんさん コーヒー 一丁。はいな。
(椿)どうぞ こちら お座りやす。
おいでやす。おいでやす。
(福助)僕らに商売任しとかれへん言うて今では すっかり あの調子や。
相変わらず ご寮人さん同士は犬猿の仲だすか。
千代ちゃんは また この岡安に身を寄せることになりました。
(節子)ほんまに千代が帰ってきた。
(富士子)久しぶりやなあ 千代。(玉)千代ちゃん 元気やった?
(かめ)相変わらず ちっちゃいなあ。ちゃんと ごはん食べてたんかいな?
おかげさんでどないかこないか やってました。
(宗助)千代!
旦さん お家さんすっかりご無沙汰してしもてすんまへんだした。
千代! わての言うことを聞いてよう役者になりなはった。
見上げた心意気や!
(笑い声)
(みつえ)どないしたん?
いや けったいやなあ 何でやろ…。
何や いっこも懐かしいことあらへん。
お父ちゃん 千代の出てる映画見まくってたやないの。
しかも おんなじの2回も3回も。そら 懐かしいことあれへんわ。
損した気分やなあ。
おおきに 旦さん。
(笑い声)
ご寮人さんは?あ~… 清水屋の旦那さんに呼ばれてな。
(せきばらい)
(清水)毎年 世話になってた組見やけど今年から なしになったんや。
すまんな 女将。
(シズ)いいや…。今まで 岡安をごひいきにしてもろてほんま おおきに。
感謝申し上げます。
このレコードがジャズのレコードや。
(福助)ほんで これが トランペットや。音 吹いたる。
(トランペットの音)
(福助)どや ええ音やろ。(椿)ええ音やわ。
・(福助)ほんま楽しいで。・(菊)これからは ジャズやしな。
・(福助)かっこええやろ。
高瀬百々之助と 話 したことある?
そら まあ 共演してましたさかい。
ええなあ。
どこが? 今は断然 市川妻五郎や。
それこそ あれへんわ。誰が何と言おうと百様や。妻様や。
目玉の百様や。ひょろりの妻様や。
うちはな 音様 音様。音様!?
(かめ)妻様に決まってるやろ!音様は?
音様も会うたことあります。ほんまに?
あんたら 店の中で 何騒いでますのや。
千代 また後でな。
♪~
お帰り。
ただいま帰りました。
前 使うてた部屋 好きに使いなはれ。
今は お玉も通いやさかい。
ほんまに よろしいんだすか?うちは もう お茶子やあれへんのに。
ここは あんたの家だす。
ご寮人さん… あの時は 父が ほんまにえらいご迷惑をおかけしてしまいました。
用立てていただいた分 すぐにでもお返しせなあかんのだすけど…。
勘違いしたらあきまへん。
あれは わてだけやのうて道頓堀のみんなが出し合うてくれはったもんだす。
あんたは この街のみんなに借りを返さなあかん。
ええ役者になってな。
ええ芝居しなはれ!
ここは 芝居の街だす。
それ以上の恩返しはあれしまへん。
はい。
おおきに ありがとうございます。
せやけど…。
ええ芝居するだけやったら あかんのだす。
主役張るくらいの女優になってようけ稼いで必ずお金お返しさしてもらいます。
新しい一座は どないだす?
まだ うちも よう分かれへんのだす。
鶴亀の社長さんからなんしか行け言われて。
けど そのおかげでここに戻ってこられました。
道頓堀はいろいろ様変わりしたようだすけど岡安は何も変わってまへん。
岡安は ずっとこのままや。 安心し。
はい。 ほな。
♪~
お母ちゃん…うち もっともっと有名になって必ず ヨシヲ捜し出したるさかいな。
そして その日の夕方…。
♪~
(香里)ま~ ま~ ま~。
鶴亀の大山社長に集められた役者たちが初めて顔を合わせました。
(香里)ま~ ま~。まっまっまっ まっまっまっ。
(徳利)うわっ! おちょやんやないか!徳利さん!
(天晴)千代ちゃん!あ~! 天晴さん 漆原さん。
役者なったいうのはほんまやったんやなあ。はい。
覚えてはりますか? この人たちは元天海一座の役者さんたち。
雨男やのに天晴さんとビール好きのくせに徳利さん男やけど女形の漆原さん。
それから… 誰やったかな?
有名な女優さん。そんなん ちゃいますて。
(ルリ子)映画 映画 映画…。
あっ… あんなものはお芝居とは違いますわね。
役者の ほんまの力が試されるのは舞台の上で どんだけ歌って踊れるかよ。
(漆原)醜いわねえ 女のひがみって。
どういう意味かしら?
あんたねちょっと こっち見たらどない。
(熊田)え~ この度 大山社長よりこの新しい劇団を任された鶴亀の熊田です。
まずは この劇団の座長を紹介します。
まあ 君らには紹介するまでもあれへんけどな初めてのもんもおるやろ。挨拶し。
天海一平です。 よろしゅう。(百久利)ちょっと待ってください。千之助さんはどないしはったんですか?俺は てっきり 千之助さんが座長になるもんやとばっかり。
(千之助)お前は何者じゃ。 ああ?
一平を座長にするのは大山社長のご意向や。もちろん 千之助さんにも声はかけた。
せやけど来えへんかったっちゅうことはそういうことやろ。
俺は 千之助さんがおるいうから来たんや。辞めさしてもらいます。
おい そんな勝手…。辞めたいやつは 辞めたらええ。
無理強いしても ええもんは作れません。
すまんけど 俺も抜けさしてもらうわ。
徳利さん!?
無理や。千さんいてへんかったら客は呼べん。そのことを誰よりも思い知ったんは俺らやないかい。
(徳利)行くで 百久利。
わても行くわ。えっ 天晴さんまで…。
ちょっこと落ち着きましょ。天海一座が のうなってからあちこちで頭下げてどないかして芝居続けてきたけど…今 やっと 役者辞める決心ついたわ。すまんな。
ちょっ 天晴さん…。
天晴さん!堪忍。
何 涼しい顔してんの! はよ引き止め!
波乱の幕開けやなあ…。
いや 幕も開けへんな これは。