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はじめに
二重根号は、多くの高校では一年生の最初の方に習う知識です。そして他の分野との関連もそれほどなく、出題頻度もそれほど高くないため、高校2年や3年になるとすっかり忘れてしまっているかと思います。
しかし、もし複雑で配点の高い問題の一部としてこの二重根号が組み込まれていたとしたら、やり方を知っていれば簡単なこの知識を知らないというだけで、大きな失点につながってしまいます。
そんな後悔をなくすためのあなたへの手助けとして、この記事では二重根号の外し方、問題の解き方について丁寧に解説しています!
単なる外し方の公式の説明だけにとどまらず、応用的な問題の解説も詳しくしているので、是非参考にしてください!
- 1 はじめに
- 2 二重根号とは
- 3 二重根号の外し方
- 3.1 プラスパターン
- 3.2 マイナスパターン
- 3.3 なぜ二重根号が外せるのか(証明)
- 4 計算問題と解き方
- 4.1 問題1
- 4.2 問題2
- 4.3 問題3
- 4.4 問題4
- 5 最後に
二重根号とは
二重根号とは、√の中にさらに√が入っている式のことです。
例えば、
のようなものをいいます。
このままの形だと計算を進めにくいので、基本的には二重根号を外して単なる√だけを使った形に変形することになります。
二重根号の外し方
二重根号の外し方には公式があります。公式は符号によって2パターンに分けられます。
プラスパターン
a>0,b>0の時二重根号は次のように外せます。
マイナスパターン
a>b>0の時、二重根号は次のように外せます。
実際に公式を使って計算問題を解いてみましょう。
手順としては、まず√の中にある√の中身の約数を考えることから始まります。
何と何をかければ、√の中にある√の中身の数がつくれるのかを考えてみます。素因数分解をしてみると、候補が見つけやすいです。
この問題の場合は1×10、2×5の2パターンが考えられますね。
次に、そうやって出てきた2つの数の組み合わせを足して、√の中にある√がかかっていない数字である、7をつくれるか試してみます。
まずは
1+10=11
どうやらこの組み合わせではダメなようです。
2+5=7
この組み合わせだと7がつくれますね!
よって、「2」と「5」の組み合わせが、二重根号式を2つの根号に「分解」するカギだということがわかります。
後は公式に当てはめて、
√2+√5
のように二重根号を外せます。
二重根号を外すときには、「たす」と「かける」を同時に意識すればいいわけです。√の中にある√がかかっていない数字はたす、√の中にある√の中身の数字はかける、という感覚ですね。
覚え方としては、「外は足す、中はかける」というイメージでやってみましょう。
なぜ二重根号が外せるのか(証明)
二重根号が何故上の公式のようにキレイに外せるのか、疑問に思った人は多いかもしれません。しかし、この公式は意外と簡単に証明できちゃいます。
基本的に、√を外したい!となったら√の中身を平方の形(2乗の形)にするというのが定石です。そこで、二重根号をはずず前の式の、√の中身をよく観察してみましょう。
何処かで見覚えはありませんか?そう、これは
という因数分解公式の、次数を一つ下げたバージョンですね。(またはaを√a,bを√bに置き換えた形、とも表現できます)
よって、公式を使えば√の中身を2乗の形に変形することが可能です。
中身を2乗にしたことで√が外れ、上の公式が導かれるというわけです。
マイナスパターンの時も同様に、因数分解公式の
を当てはめて√の中身を2乗にすればOKです。
しかしここで1つ注意点があります。√を外す際には、( )^2の中身が正でないといけません。( )^2の中身が負だと、√をそのまま外すと負の数が出てきてしまいます。√xというのは、2乗するとxになる「正」の数を表す(2乗するとxになる「負」の数は-√xと書きます)ので、これはおかしなことになってしまいます。
だから、マイナスパターンの時は、プラスパターンの時と若干違う前提条件「a>b>0」が必要なのです。こうすることによって、( )^2の中身である√a-√bが負になるのを防いでいるわけですね。
計算問題と解き方
ここからは、ちょっと工夫が必要になる二重根号の計算問題を解いてみましょう。
問題1
まず二重根号を外す公式を使う際には、√の中にある√の前に「2」がついていなければなりません。この問題ではその「2」がないので、なんとかして作り出さなければいけません。
そこで、√の中にある√の中身に着目してみましょう。「12」という2の倍数になっています。もう勘の良い人は気づいたかもしれませんね。
「12」を素因数分解すると
12=2^2×3
つまり2乗の部分が√の外に出て、√12は2√3とも表すことができます。
次に、√の前にある邪魔な5を√の中にしまってしまいます。
そうすることで、
5√12=2√75
と変形できるのです。
こうしてしまえば例の公式が使えるようになります。
足して20、かけて75になる数の組は(5,15)ですから、
√5+√15
という答えが出せます。
問題2
この問題も、公式が使えるようにするために√の中の√の前に2をなんとかつけるところからスタートします。
しかしここでは、√の中にある√の中身の数は15、2の倍数ではないのでどう頑張っても外に2を出すことはできません。
そういう時は、無理矢理にでも2を作る方法をつかいます。分数を使った「帳尻合わせ」法です。
√15の前に2をつけたいのだから、つまり√の中身である4+√15を2倍すればよいのです。
そうすると、8+2√15になって公式が使える形になります。
しかしこんな風に自分勝手に式の中身を2倍しても、ちゃんと正しい答えは出るのでしょうか?いや、流石にこのままではいけません。勝手に2倍にした「責任」を取らなければいけません。
式を2倍したのだから、それを更に2で割れば、元の式とは同じものになります。勝手に×2したものを、÷2することで「帳尻を合わせる」のです。
そのように分数を使って変形すると、式は以下のようになります。
あとはいつものように
足して8、かけて15になる組を考えると、(3,5)ですので公式を使って二重根号を外しましょう。
ここでよく間違えるのが、分母の2まで根号を外してしまうことです。
分子は公式を使って根号が外れますが、分母はただの「2」ですので根号は外れず√2になります。
あとは分母を有理化して、
が答えです。
問題3
これは最初から公式が使える形にはなっていますが、とにかく数字がめちゃくちゃ大きいです。
足して46、かけて465になる数の組なんか、すぐには思いつきません。
そこで使えるのが、解と係数の関係です。解と係数の関係を使うと、足して46、かけて465になる数字の組というのは、
の2つの実数解と同じです。
ですからこの2次方程式を解けばよいのですが、これもこれで暗算で解くのはなかなか大変です。
よってここで次なるテクニック、解の公式を使います。
解の公式により、
x=15、31という答えが出ます。
よって足して46、かけて465になる数字の組は(15,31)ということが分かるわけです。
こんな数字、思いつきで出るわけありませんよね(笑)
最後に、いつものように公式に当てはめて、
√15+√31
という答えが出ます。
このように解の公式を使えば、基本的にはほとんどの二重根号を力ずくで外すことができます。試しに問題1、2も解の公式を使ったやり方で解いてみましょう。
問題4
これは一見簡単な問題のように思えます。
足して2a+5、かけて10aになる数の組は、(2a, 5)とすぐに思いつくでしょう。
しかしここで、すぐに
√2a-√5
と答えを出してはいけません。
なぜなら、他のものと違ってこの式には「文字」が含まれているからです。
公式の証明をする時、「( )^2の中身は正でないといけない」と説明しましたよね?この問題の場合文字「a」が含まれているため、
(√2a-√5)^2の中身が果たして正であるのかどうかは、はっきりとわからないわけです。
そこで、文字が含まれる式を解くときには定番の「場合分け」をします。今回の「場合分け」の基準は、√2a-√5が正であるかどうか、つまり√2aと√5の大小関係です。ちなみに√2aと√5の大小関係は、明らかに分かるように2aと5の大小関係と同じなので、ここからは2aと5の大小関係として話を進めていきます。
まず2a≧5、つまりa≧5/2のとき、
( )^2の中身は無事正になります。
したがってそのまま√を外して、
√2a-√5
が答えになります。
次に2a<5、つまり0<a<5/2のとき、
残念ながら( )^2の中身は負になってしまいます。
したがって引く順序を変えて、中身を正にしてあげる必要があります。
つまり
√5-√2a
がこの時の答えです。
このように場合分けをするので、解答としては以下のようになります。