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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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7:罠にかかるでしょうか?

こんばんは!

本当に投稿遅くてすみません:( ;´꒳`;):


楽しんでくれると嬉しいです!

よろしくお願いします( *´꒳`* )


「お願い?」

私の髪を梳いていたカーナさんが、両手で私の顔を包み目を合わせてくる。


「えぇ、お願いです。聞いてもらえますか?」

カーナさんとの視線を逸らさないようにして微笑むと、カーナさんが顔を引き攣らせた。


あれ?なぜ引き攣らせるの?完璧に微笑みを顔に刻んだはずなんだけど·····


「キリア!!私じゃ止められない!」


「はぁー。カーナは、荷物整理しといて。カモフラージュ忘れないでね」


「はーい」と元気よく返答しながら、キリアさんが持っていた荷物を受け取り、カーナさん達の荷物置き場に向かっていった。

2人も魔法鞄を1つ持っており、重い荷物はそちらに入れて、その他の軽い荷物をもう1つの普通の鞄に入れているそうだ。また、鞄の外側にも寝袋などを括りつけたりすることで普通の鞄にカモフラージュすることを忘れない。なんでも、魔法鞄は数があまりないようで高価な品なんだとか。魔法鞄を持っているとスリや盗賊などの犯罪者に狙われやすくなるため、魔法鞄と分からなくして持ち歩くのが常識だと、以前キリアさんに教えてもらった。


あぁ、カーナさんに逃げられてしまったわ。カーナさんの方が簡単に聞き入れてくれると思ったのに·····残念だわ。


「で?お願いって何かな?」


「聞いてくれるのですね。ありがとうございます」


「内容によるよ。分かっているでしょう?シエル?」


微かに口角を上げ微笑むキリアさんと視線が合う。


微笑んでいるはずなのに、うっすら冷気が漏れ出ている気がするわ。私のお願い内容に検討がついているってことですね。


「·····はぁ。そうですわね。護衛として優秀なのは、嬉しいことですが、こちらの考えも見抜かれてしまうと、やりにくいものですわね」


「ありがとう」


「褒めていませんわ。·····キリアさんたちは、私が何から逃げているのか、見当がついているのでしょう?」


「まぁ、大体はね」

キリアさんは、いつもと変わらない表情で頷く。


キリアさん達に本当に鑑定眼があると仮定した場合、私の称号にあったという《偽聖者の生贄》は、私の前世のことだと検討がつく。偽聖者を指し示す意味は、まだ分からないけど·····

たぶん、キリアさん達は偽聖者を王族の誰か、または王族に与している何かと考えているのでしょう。キリアさん達が私でも考え至ることを分からないはずがないもの。

でも、その考えを確定してしまった原因は、私の弱さだわ。あの時、気絶するほど恐怖に苛まれなければ、前世のように誰にも真意を探らせないような振る舞いができていたら、彼らの推察の確定を延ばせたかもしれないのに·····


だから、私は精神的に強くならなければならない。魔力量や魔法操作などを強化するのは時間がかかる。なら、恐怖の中でも動けるよう慣れることの方が時間はかからないはずだもの。それに、冷静にならなければ魔法を効率的に使えなくなるわ。


その為にも·····

「そうですか。·····私の願いは、昨日のお会いした若い兵士の方の策にわざと嵌りたいので、護衛のキリアさん達にお許しが欲しいのです」


いつもの様に綺麗に微笑みを称えながら言うと、キリアさんが少し驚いた顔をした後、訝しげに私を見つめる。


「それがお願い?」


「ええ。あの方々がどのような事を企み、どのような策をお持ちかは分かりませんが、キリアさんが帰ってきてからずっと、この部屋を監視しているようですから、愚かなことを考えているのでしょうね」


「気づいてたのか」


「嫌な感じがしたので、昨日のうちにマークをつけさせて頂いておりました」

標的のマーク付けの魔法は察知魔法の応用魔法で、察知魔法に引っかかったものにマークを付け条件も付与できる魔法である。とても有効的な魔法であるが、行使するのに魔法構築がとても複雑で昔は使われていたが今は廃れてしまった魔法の1つだ。

あの2年で、バレない程度に入手出来る魔法書は片っ端から収集した。その中にあった魔法だ。

取得しておいて良かったわ。


「そうか。それで、あの兵士のお仲間は何人だ?」


「あの兵士の方を入れて3人だと思います。先程一緒にいたようですので·····今は食堂のテーブルに1人、宿の向かいの路地に1人、宿の裏通りに1人いますわね」


「·····はぁ。それで、奴らの企みに乗って何がしたい?」


「人に対する恐怖に慣れたいと思いますの。一緒にいると気分が悪くなる相手と同じ環境下に身を置いて、その環境に慣れておきたいのです」


「止めても·····無駄か」

溜息をつきながら、目を細めて見つめてくるので、微笑みを称えながら頷くとより深い溜息をつかれた。


先程から綺麗に微笑みを顔に刻むと、逃げられたり、溜息をつかれたりと、あの頃通用した技術が意味をなさなくて自信をなくすわ。それとも、変な顔してたのかしら?


右手で顔をさり気なく触ったが分からなかった。


「シエル」と名前を突然呼ばれて、顔を上げると目の前にキリアさんの顔があり固まってしまう。

そんな私を気にせずに、キリアさんは両手で私の頬を包み込み顔を固定させると強制的に視線を合わせる。


「で?」


いきなり「で?」と聞かれても意味がわからず首を傾げそうになるが、固定されている顔は動けない。


「シエル。僕達を信じられなくてもいい。信じろ!なんて愚かなことは言わない。でもね、僕らはシエルの護衛なんだよ。それを僕らは降りるつもりはないよ。僕らを少しでも嫌いじゃないなら一緒にいたい」


「どうしたんですか?まるで私がキリアさん達と離れようとしているみたいな言い方ですね」


「気づかないと思ったのかい?カーナも気づいているよ。シエルは、奴らの策に乗るとともに僕達から離れようとしているだろ。それも、自惚れじゃなければ僕らの為に」


「何を言っているんですか?言っている意味がわから·····」


「シエル」

キリアさんの眼があまりに真剣で、キリアさん達に私の策略も、嘘も、全て見抜かれているのが分かってしまった。


たぶん、これ以上しらばっくれても無駄なんでしょうね。

なんでバレてしまったのかしら?


冒険者ギルドは、全国各地に点在しているが何処かの国に属しているわけではなく、独立している。そのために、国同士や国と事を構えるような依頼は受けない。


私の依頼は護衛と今後の生活のための指導である。生活への指導は問題ないが、私の追っ手がこの国の王族である可能性があるため護衛依頼は違法依頼になる。つまり、キリアさん達への依頼は無効となる。


このまま依頼を継続したら、キリアさん達に迷惑がかかる。私は彼らが嫌いじゃない。まだ、信じることは出来ないけど·····嫌いじゃないのだもの。

できれば、彼らが不利益を被らないよう対処しようと思ったのに。別れてから冒険者ギルドに依頼主の違法による依頼取り消し申請を行い、その時に彼らにこれまでの依頼に対する報酬を設定より多く渡せるよう手続きをするつもりだったのだけど·····まさかバレてしまうなんて。


「キリアさん。確かにあの兵士達の策に便乗して、あなた達と別れようとしました。でも、貴方達のためではありませんわ。追っ手がかかっているなら目立つ方々と一緒にいると見つかる可能性が高くなるんですもの。だから、私の為に貴方達を捨てるんです」

馬鹿にするように口を歪めて笑う。


この5日間で、キリアさん達の性格も大体分かってきた。彼らは優しすぎる。自身の懐に入れた人に対して優しすぎるのだ。国が関わる依頼は無効となるのに、先程の言動からも分かるように、まだ私の依頼を継続しようといる。このままじゃ、キリアさん達に迷惑がかかる。それに、捕まった時に一緒にいたら、この国のクソ貴族共の餌食になるかもしれないのだ。

それは嫌だわ。

なら、彼らに嫌われるような振る舞いをすればいい。護衛を続けたくなくなるような振る舞いを·····


「シエル。君のような小さい子に守ってもらわなくても僕らは強いよ。君が思うより·····ずっとね」

キリアさんは、優しい色を載せた眼で見つめてくる。


「守ろうなんて思ってないわ。私は私自身のことしか守らない!他人なんてどうでもいいのよ!放して!!」

キリアさんの手を振り払おうとすると、後ろから伸びてきた腕に掴まれ、フワッと浮遊感を感じた。ビックリして顔を上げると、いつの間にかカーナさんの膝の上に抱き抱えられていた。


「シエル。私はシエルが大好きだ。本当に娘のように思ってる。シエルは私が嫌いか?」

慈愛に充ちた瞳でジッと私を見下ろし、私が何も言わないで見つめていると途端に泣きそうな顔に変わる。涙を堪えているのかクシャッと顔が歪むカーナさんを見て、慌てて体を起こしカーナさんの頭を抱きしめる。


「嫌いじゃないわ!だから、泣かないで!」


「本当に?」


「ええ、だからいつもの様に笑ってくれると嬉しいわ」


恐る恐るカーナさんの頭を放して、頬に手を当てて覗き込む。

カーナさんは、涙目の顔で必死に笑おうとして失敗していた。クシャクシャになっている綺麗な顔を撫でながら、苦笑してしまう。私より大人で、子供もいるのに、カーナさんが可愛いと思ってしまった。


後ろから穏やかな笑い声が聞こえ振り向くと、キリアさんが口に手を当てて笑い声を抑えようとしていた。


「あはは。シエル、僕らは依頼がなくてもシエルと一緒に行くよ。カーナは離れることを許さないみたいだしね」


「はぁ。あんな言い方·····ずるいわ。1つだけ守ってくれるなら考えるわ。もし、追っ手に私が捕まったら私を忘れて他国に逃げ切りなさい。それが約束出来ないなら一緒にはいられない」


「分かった。でも、追っ手に捕まる気はないよ」

キリアさんは不敵に口角を僅かに上げて笑う。


「それと、そろそろシエルの話し方をどうにかしないとね」


「え?」


「気づいてなかったの?会った時から時々上品な話し方になってたよ。気絶した後からより顕著になったな。もう少し砕けた話し方をした方がいい。聞く人によっては気づかれる可能性があるからね。まぁ、シエルは私達としかあまり話さないから今のところは大丈夫だと思うけど、ゆっくりでいいから周りの話し方に寄せて行った方がいいな。あと、あの顔もあまりしない方がいい。馬鹿な奴らが群がるからね」

先程の不敵な笑みは消え、いつもの無表情で言われた。


「·····気をつける」

気づかなかったわ。あの夢のせいかしら、前世の私に引っ張られている気がするわ。キリアさんが言うように周りの話し方をよく観察して直していくことを今後の目標に加えましょう。

それにしても、あの顔って何かしら?とにかく、あまり顔を出さないようにすればいいかしら。早く姿変えの魔法を習得すれば問題ないわね。頑張らないと。


キリアさんが、今日は話しすぎて疲れたと言いながらカーナさんが整理した荷物の確認に向かっていった。


やっと復活したカーナさんが、いつもの笑顔で私の頭に頬を擦り寄せている。

·····本当に犬のようだわ。






カーナさん達の許可を得て、1人で宿を出て商店街の方向へ歩き出す。

いつものワンピースにエプロンバック、カーナさんがくれたキャスケットを目深に被り、カーナさんがどうしてもと譲らかなかった黒革のブレスレットを付けている。

まだ、お昼すぎの明るい時間のため子供達が遊び、走り回る姿も見かける。


シエルは、隠蔽した察知魔法を行使し、あの兵士の仲間だと思われる2人が自分に着いてくるのがわかった。

2人にもマークと条件を付け場所の把握を行う。


商店街は、人に溢れておりとても賑やかだった。

さすが歌の都と言われるだけあり、所々で歌手の方々が歌を歌っている。

商店街の通りを抜けると大きな公園があり、その中央に街を縦断している水路の起点である泉があり、女神の像が持つ瓶から水が溢れ出て、日の光を浴びて色々な色が反射してキラキラ光り美しかった。


日の光を上手く屈折する魔法が組み込まれているのね。この女神像のあの瞳は魔法石ね。

綺麗だわ。


泉の周りを囲っている石の上に腰掛け、人混みに酔った不快な気分を落ち着かせる。

すると、泉の中から出てきたパライバトルマリン色の髪と目をした可愛らしい女の子が私の横に肘をついて手で頭を支えながら覗き込んできた。


「気分悪いの?」


いきなり声をかけられて、驚いたが心配そうな顔がカーナさんと被り思わず微笑んでしまう。歳はキリアさんと同じくらいかしら?

「大丈夫。心配してくれてありがとう」


「良かった。そうだ!気分が良くなる歌歌ってあげる」

そう言うと泉の中に戻り、泉の中央にある女神像の方へ泳ぎ足元の台座に腰をかける。

両手を胸元に乗せるとすぅっと息を吸い歌い始めた。

穏やかな歌声は美しく、歌う女の子の可愛らしさと相俟って神秘的な情景だった。


周りから人も集まってきていたが気持ち悪くなることはなく、気分は浮上し落ち着いていった。


歌い終わった女の子は集まってくれた人々に手を振りながら、私の元まで泳いできた。


「とても素敵だった。気分も落ち着いたわ。ありがとう」

素直に思ったことを伝えると、ハニカミながら笑う女の子が年相応に見えた。先程、歌っていた時は人が触れられない神秘的な姿だったのに、今はそれを感じさせない。不思議な女の子だわ。


「えへへ。ありがとう!私はミーニャ。人魚族だよ。君は?」


「私はシエル。人族だよ。この街には冒険者の母達と一緒に来たんだ」


「えっ!人族なの?エルフとか妖精族の子かと思ったよ!仲良くしてくれると嬉しいな!不思議と君の傍はとても安らぐんだよね」


なんて答えたらいいのかしら?たぶん、褒められているのよね?ならお礼を言っておけばいいか。


「·····ありがとう」


「いつまでこの街にいられるの?」


「うーん。明日かな?」


えぇーと言いながら不貞腐れるミーニャは、髪や目と同色の尾ひれを泉の湖面にぶつけて腕をばたつかせる。


なんか懐かれたわ。結構グイグイ来るところもカーナさんを彷彿させる。

気分は落ち着いたし、あんな素敵な歌を歌ってくれたんだもの。何かお礼しなきゃいけないわね。


ちょっと待っててと不貞腐れるミーニャを待たせ、近くの路上販売をしている店を物色する。


目を引いた品を購入するとミーニャのところへ戻った。ミーニャはまだ不貞腐れており、もう少しこの街にいようよぉと腕を掴んでくる。


人魚はお気に入りのものを手元に置きたがる習性があると、前世で読んだ本に書いてあったなと思いながら、なんで初対面なのにこんなに気に入られているのか分からず対応に困ってしまう。


「ミーニャ。素敵な歌をありがとう。これあげる。ミーニャに似合うと思うの」

先程購入した白から濃い青へのグラデーションが可愛いお花が2つ付いた髪飾りを渡す。


「くれるの?」

大切そうに両手で優しく持ち、自身の顔の高さまで持ち上げながら髪飾りを見つめ、私に視線を向けて聞いてくる。


「貸して。付けてあげる」

頷きながら、髪飾りを借りて濡れているミーニャの肩まである髪をハーフアップでまとめて着けてあげる。


この間、カーナさんに髪の結い方を軽く習ったので、簡単な髪の結い方なら出来るようになったのだ。


ミーニャ達人魚族は、水中にいることが多いので髪飾りが錆びないよう魔法加工も忘れずに施した。


ミーニャは嬉しそうに泉の中を泳ぎ踊りながら、似合う?と聞いてくる。


「似合うわ。気に入ってくれた?」


「もちろん!素敵なプレゼントありがとう!大切にする!!」

嬉しそうに私の手を両手で掴みながら、私の頬に祝福のキスをする。


「シエルの旅が安全で素敵なものでありますように!」

ニッコリ笑いながら、嬉しそうにするミーニャにつられて笑ってしまう。


ミーニャにこの街のことを教えて貰っていると、西区に繋がる水路の方からミーニャを呼ぶ声が聞こえ、ミーニャはしぶしぶといった様子で帰って行った。


少し話しすぎたわ。

もう少しで陽が暮れようとしているし、そろそろ帰らないと。


·····彼らもずっと位置を変えずに私を付けているようだし、帰宅途中の何処で出てくるかしら?

さぁ、全てのお膳立ては済んだわ。

私の練習相手になってくださいな。


さぁさぁ!罠にかかりたまえ!

君たちはシエルちゃんの糧となるのだ٩(ˊᗜˋ*)و



皆さん!コメントありがとうございます!

返信できずにゴメンなさい!

でも、全てしっかり読んでいます!

これからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡

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