5:気づかれているのでしょうか?
遅くなりました!
すみません:( ;´꒳`;):
コメントいつもありがとうございます!
めっちゃ嬉しいですヾ(*´∀`*)ノ
今回は、最後の方に胸くそ話が入っているので注意してください!
では、よろしくお願いします!
温かい…もう起きなくちゃいけないのに、もう少しだけここにいたい。
温かくて柔らかくて、優しい匂いに包まれて、目覚めるのが億劫になる。
……ん?柔らかい?
夢現に疑問を感じていると頭上から何か聞こえてきた。
「可愛いなぁ。キリア、見てみて!シエルが私にくっついてくるんだ!子猫みたいだろ!あぁ、本当に可愛いよなぁ」
ハッ!!っとして起き上がると、カーナさんが隣で横になっていた。
おかしい……部屋にはベッドが3つあるのに、何でカーナさんが私と一緒のベッドにいるの?
寝起きで、目覚めきっていないせいで混乱し固まってしまった。
サッと立ち上がったカーナさんが、とてもいい笑顔で私を素早く抱き上げると、頬擦りしながら抱きしめてくる。
クッ!反応が遅れたせいで逃げられない!
「放して!もう、なんでカーナさんが私と一緒に寝てるの!?うぅ···カーナさん!ハウス!!」
混乱して、まるで犬を相手にしているような口調で命令してしまう。
いきなりでビックリしたのか、ビクッとなったカーナさんは素直に放し、自身のベッドに座り悲しそうに私をチラチラ見てくる。
さながら、大好きなご主人様に叱られた犬のようだわ。
そんなカーナさんを見て冷静になり、周りを見回し状況を把握する。
既に陽は昇っており、街の人達の明るい声や物音が聞こえてくる。
屋敷にいた時から人の声や微かな物音で容易に目覚めてしまい、魔法で結界を展開しなければ眠ることもできなかった。
それは屋敷から逃げ出しても治らなかった。
なのに今、熟睡できたことが不思議でならない。
カーナさんが、隣に入ってきたことにも気づかないくらい熟睡していた。
私は、思っているよりカーナさん達といることに慣れてきているのね。それと·····安心もしているのかも。
「シエル、朝食を食べに行こう。先に行ってるから着替えておいでね」
キリアさんの少し低めの耳に心地良い声に、顔を上げて頷いて着替えの準備をする。
カーナさんは、未だにベッドに座りチラチラこちらを見ているが、ここで反応するとまた捕まるので見なかったことにした。
キリアさんが部屋を出ていってから、すぐに普段着に着替えていく。
平民の女の子がよく来ているワンピースに皮でできたエプロンバッグをつける。
フード付きの外套を着ようとすると、カーナさんに止められた。
「朝食を食べに食堂に行くのに、外套は目立つからやめような。代わりにこれを被ろう!」
そう言って、とてもいい笑顔で差し出してきたのは、猫系獣人御用達のキャスケットだった。
猫系獣人の耳が苦しくなく収納できるよう猫耳型に空間が造られている。
断ろうとすると途端にカーナさんが悲しそうに眼に涙をうかべるため、断りきれず外套の代わりにそれを被ることになった。
カーナさんが用意してくれたキャスケットは、大人用で大きかったが、その分顔が隠れて安心できた。
カーナさんは余程嬉しかったのか、着替え終わった私を素早く抱き上げると満足気に食堂へと連れ出した。
食堂に着くころには、虚しい抵抗のせいで疲れぐったりしてしまった。
それを見たキリアさんが苦笑しながら、カーナさんから助け出してくれた。
最近、キリアさんの表情が読み取りやすくなった。
それに、言葉数も多くなってきた気がする。
それが、少し嬉しかった。
用意された朝食は、焼きたてのライ麦パンにトロトロのチーズをのせたものに、人参ドレッシングのかかったフレッシュサラダ、卵とベーコンの入ったアツアツのスープだった。
なぜか私のトレーだけにオレンジが2切れあり、首を傾げる。
「お嬢ちゃん、おはよう。昨日の夜、美味しそうにご飯食べてくれたからね。そのお礼だよ。朝からしっかり食べなね。パンとスープはおかわり自由だよ!」
調理場から出てきた女将さんが、首を傾げる私を見てニコニコ笑いながら声をかけてくれた。
「·····ありがとうございます」
昨日の夜は外套を着たままで、顔を見られているなんて思わなかったわ。
私、どんな顔してたのかしら?
食べ方とか大丈夫だったかしら?
周りの視線を気にしながら、祈りを捧げて朝食を食べ始めた。
トロトロのチーズが濃厚で、焼きたての外はパリパリ、中はほわほわのパン。ふわふわの溶き卵にベーコンの塩味と鶏ガラからとったスープがよくあう。人参のドレッシングも甘くて、フレッシュサラダに絡めると野菜の優しい甘みが引き立って美味しい。
美味しくて、視線を気にせずに黙々と食べてしまった。
デザートのオレンジも甘くて後味爽やかで、朝からお腹いっぱいになるまで食べてしまった。
私はおかわり出来なかったが、カーナさん達はパンもスープもおかわりを4回していた。
本当にあの細い体の何処に入っているのかしら?
女将さんも同じことを思ったのだろう。おかわりを頼まれるたびに驚いた顔をしていた。
「細っこいのに、よく食べるねぇ。いやぁー、いい食いっぷりだ!美味しかったかい?」
食べ終わった頃に女将さんが声をかけてきた。
「とっても美味かったよ!随分腕のいいシェフがいるな」
「あはは。嬉しい事言ってくれるね!私の旦那が作っているんだよ。伝えておくよ!それより、お客さん達見ない顔だけど、旅人かい?」
「私と息子が冒険者で、今は依頼中だ。娘は1人にしておけないからな。将来のためにも連れてきたんだ」
「そうなのかい。昨日入国したんだろ?審査大変だったでしょう。でも、黒髪でよかったねぇ」
「ん?どういうことだ?」
「おや、知らないのかい?なんでも、髪と瞳の色が茶色の子供は、領主邸に連れていかれて審査を受けるそうだよ。珍しい色の子供を攫う犯罪が横行してて、カモフラージュに色を変えて連れているんだってさ!あんたらの色も珍しいから気をつけるんだよ」
「そうか。ありがとう!気を付けるよ」
女将さんとカーナさんの会話を聞きながら、震えそうになるのを必死に堪えた。
色変えが出来ることを知られていた?
いや、そんなはずない。だって、魔法の練習は結界を展開した部屋で行っていた。外からは見えないし聞こえないはず·····なら何故?
もしかして、誰かがつけている?
それとも·····カーナさん達が·····
いや!そんなはずない!
でも·····人は裏切る。
それを私はよく知っている。
なんでカーナさん達は違うと言いきれるの?
家族にさえ、裏切られたというのに·····
自問自答していると、不意に浮遊感が生じた。
ハッ!!と顔を上げると、キリアさんの顔が近くにあってビックリして固まる。
キリアさんは、優しく笑うと私達の部屋に向けて歩き出した。
「シエル。大丈夫だから落ち着こうね」
優しい声に気持ちが落ち着く。
「シエル、大丈夫か?」
カーナさんが膝をついて、ベッドに座る私の顔を下から覗き込む。
この人達を信じてもいいのだろうか?
私は、この人達を·····信じられるのだろうか?
怖い
人を信じるのが怖い。今までは、裏切った人達との関わりばかりで信じられるわけないだろ!って思えた。
でも、この人達は違う。まだ私を裏切ってない。
私の中にいる前世の私が滑稽だと笑う。
『人は裏切る。分かっているでしょう?なのに、また信じて、裏切られて、殺されたいの?』
分かっている。人は信じられない。
でも·····この人達は·····
『違うって言うのかしら?あの時、父や母に思ったことと一緒だわ。この人達は、私を愛している。私を信じてくれる。私を助けてくれる。·····で?結果はどうだったかしら?私を愛してくれた?信じてくれた?助けてくれた?·····残念ね。全部裏切られたわ』
目の前が真っ暗になっていく。
誰かの声が遠くから聞こえるけど、何を言っているか分からない。
そうして、私は意識を手放した。
前世の私がいる。
地下の牢屋に繋がれて、転がっている。
ざんばらに切られた銀髪、宝石の様だと言われた碧と緋色の瞳はまだ光が灯っている。
まだ、信じられる人がいた時の私だ。
2人分の足音が階段を降りてくる。
ほら来た。
私が顔を持ち上げる。鉄格子に手をかけて膝立ちをする。
牢屋の前には、男女がいる。
青銀髪に碧の瞳、40代に差し掛かり渋みがでて更にカッコよくなったと噂だった男。
金髪が先に向かうほど赤みが増す髪に薄桃色の瞳、3児の子持ちには見えない若々しい女。
私の父と母だ。
私は泣きながら、声が出ないのに無実だと訴える。分かっていると私の無実を証明するよと言ってくれると信じて。
鉄格子越しに手を伸ばす。父と母が掴んでくれると信じて。
今は見ると滑稽だな。
あの男と女の瞳に私は写ってない。まるで、汚物を見る目だ。
父に手を踏まれ、母は扇で口を隠しながら汚いと罵倒される。
父に縁を切られ、父の持っているステッキで腹を殴られ、倒れた私の背中にステッキで体重をかけてくる。
息が上手くできず、カエルが潰されたような音が喉から漏れる。それを聞いて嘲笑う母。忌々しげに呪詛を吐く父。
そして、心を捨てる私。
その瞳に、もはや光などない。
あぁ、そうだった!!
2年もの月日のせいで記憶が薄れていたのか、あの人達との関わりがあまりにも温かくて、見ないふりをしてしまったのか、どちらかは分からないが·····人など信じられるわけないな。
あぁ、気持ち悪い。
関わりたくない。逃げて逃げて、逃げ切らなくては。
カーナさんの勘が大当たり(*´˘`*)♡
oh(´・ω・`)...
めっちゃ病みますね。
私もシエルさんの気持ちに引き摺られそうです。
助けて!カーナパンマン!!
次回もよろしくお願いしますヾ(*´∀`*)ノ