4:逃亡後の彼ら (別視点
こんにちは!
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これからも頑張りますね!
今回は、短めです。
別の方々視点になります( *´꒳`* )
よろしくお願いします!
エリスタ王国――冒険者ギルド――
受付嬢のエルサは、ギルド受付嬢を10年勤めているベテランだ。艶やかな金色の髪を緩く三つ編みにしてまとめ、アクアマリンの瞳に少し下がった目尻、ギルドの癒し系受付嬢として冒険者からも人気が高い。癖の強い冒険者からの誘いをサラリとかわし、違法な行為をすれば、適正の高い氷の魔法を駆使し制裁する。エリスタ王国王都冒険者ギルドで有名な受付嬢である。
ギルドは、早朝と夕方に混雑する。
ちょうど昼をすぎたあたりのこの時間は、依頼遂行中で冒険者はほとんど居らず、ギルド内は閑散としている。ギルドに併設されている食事処で、数人の冒険者が飲み食いしながら情報交換をしているぐらいだ。
エルサも昼食後で、ゆっくり書類整理をしながらこの時間を有意義に過ごしていた。
夕方になれば、依頼を終えた冒険者でギルド内は混雑する。
血の気の多い冒険者が集まれば、何かしら騒ぎが起こる。それを止めるのもエルサの役割なのだから、この時間くらいゆっくりしても誰も咎める者はいない。
ギルドのドアには鈴が付いており、ドアを開閉する度にシャランと綺麗な音色を奏でる。
今も誰かが入ってきたのか鈴の音が聞こえ、食事処で情報交換していた冒険者達が視線を送る。
入って来たのがフードを被った子供1人で、何時もなら直ぐに情報交換に戻る冒険者達も、迷いなく進む子供に目を向け続ける。
子供は、視線に戸惑うことなくギルドの受付まで進むが、大人向けに作られた受付の台は高く、一瞬戸惑う様子を見せる。
踏み台や椅子を探し周りを見回すが無かったため、台に皮手袋をはめた両手を乗せ、つま先立ちをして、ひょこんっと顔を出し、書類整理をしているエルサに声をかけた。
「こんにちは。あの、依頼を出したいんです。隣国のリンザール国まで一緒に行ってくれる人いませんか?」
一般的な茶色の髪と瞳だが、クリクリの大きな目に小さな口、スっと通った鼻……フードで顔が見えないようにされており、所々汚れているので、よく見なければ気づかないが、妖精のような女の子だった。
同じ人なのだろうか?と、思うほどに女の子の容姿は整っていた。
見とれてしまって、反応が遅れてしまった。
「あの?」
女の子が首を傾げる。
「あっ!ごめんなさいね。えっと、依頼だったわね。お嬢ちゃんは1人?親御さんは?」
声をかけられたことで我に返り、すぐさま状況の確認をする。辺りを見回すが、女の子の親らしき人は見当たらない。
「1人です。リンザール国に、おばあちゃんがいるの。お母さんは……」
そう言って俯いてしまった。
「あっ……ごめんなさい。辛いこと思い出させちゃったわね。……リンザール国までの護衛依頼でいいのかしら?依頼受付はできるけど、報酬の支払いは大丈夫?」
女の子の様子から、この子の親御さんに不幸があったことを察して謝ると、女の子は俯いたまま首を振る。
「大丈夫です。おばあちゃんが待ってるから。あの……報酬はこれで足りますか?」
女の子は、背負っていた鞄から水系統の青い魔法石と火系統の赤い魔法石、銀貨10枚を受付台の上へ置いた。
それを見たエルサは、慌てて魔法石を他の人に見えないよう、さり気なく隠す。
そして、何事も無かったように微笑みながら「大変だったね。疲れたでしょう?飲み物飲みながら話そうか」とギルド内の部屋へと女の子を連れていく。
女の子も、抵抗せずに促されるまま部屋へと進んでくれた。
部屋の真ん中に、向かい合うように置かれたソファーの1つへ座るように促す。
女の子を安心させるため、少し甘めの温かい紅茶を入れて渡す。
フーフー冷ましながら紅茶を飲む女の子が可愛くて、自然と頬が緩む。
「あの、私……何か間違えましたか?」
不安そうな声で訪ねてくる女の子に、エルサは優しく説明する。
魔法石を報酬として出すことは、よくある事だが……
女の子が出した魔法石は小ぶりだが純度が高い。魔力凝縮技術がAランクで魔力量も多くなければ作り出せないため、高額であること。そんな物を子供が持っていることを知られたらどんなに危険かを説明し、今後はむやみに出さないようにと諭した。
「そんなに高価なんですか……気をつけます。教えてくれて、ありがとうございます」
「気をつけてね。じゃあ、このまま依頼の受付をしちゃいましょうか。リンザール国までの護衛依頼ね?出発の希望日は?あと、冒険者ランクや人数とか希望はあるかしら?」
考え込む女の子にエルサは、一つ一つ丁寧に説明しながら一緒に依頼内容を決めていった。本来ならここまで親切にはしないが、この子はそうしなくてはいけない気がしたのだ。
「あとは、依頼者の名前が必要なの。お名前かけるかしら?」
頷く女の子にペンを渡すと、綺麗にペンを持ち、書き出そうとして少し止まると、ぎこちなく名前を書き出した。
「シェル?シエル……ちゃんでいいのかしら?よろしくね。私の名前はエルサよ。シエルちゃんの依頼を受ける冒険者は、私が厳選するから安心してね。じゃあ、今日の夕方にもう一度ギルドに来てもらってもいいかしら?そこで顔合わせをしましょう。で、明日の朝に出発ね。泊まるとこはあるのかしら?」
「大丈夫です。親切にしてくれて、ありがとうございます。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げ、ギルドを後にするシエルちゃんの背中が見えなくなるまで見続けた。
あの子、ずっと表情に変化がなかった。
きっとお母様に降りかかった御不幸が、辛かったのね。
あんなに小さいのに……
よし!私は、私のできることであの子をサポートしてあげましょう!
そうと決まれば、リンザール国までの護衛をあのパーティに頼まなきゃね!
エルサが意気込んでいると、後ろから女性の冒険者が声をかけてきた。
「エルサ、どうした?なんか意気込んでるようだが」
「あっ!カーナ!ナイスタイミングよ!あなた達、今抱えているクエストないわよね?」
「無いぞ。受けるか?依頼あるんだろ?」
「流石ね!お願いできるかしら?リンザール国までの護衛依頼なの。護衛対象は、未成年の少女よ。詳しくは、奥で話すわ」
「分かった。キリアを連れてくる。細かいことは、あいつの方が向いてるからな」
そう言うと、今年14歳になり冒険者登録をしたばかりの自身の息子を連れてきた。
カーナの息子は、無口で無愛想に見えるが、気を許した相手には優しく気配りができる青年だ。
エルサは、何故か、あの女の子とこの2人は、一緒にいることが良いと思った。
だから、依頼内容を決めている段階から、2人を想定した内容に誘導したのだ。
あの後、顔合わせと依頼内容の擦り合わせの状況を見て、私の勘が間違っていないと確信した。
カーナの直感は当たる。そのカーナが、シエルを放そうとしない。また、慎重なキリアもシエルを気にしているみたいだしね。
シエルちゃんも2人に会って、やっと少しだけ表情が動いたもの。
顔合わせも終わり、宿に帰っていくシエルちゃんを見送った。
シエルちゃんが見えなくなって振り返ると、キリアと目が合った。
「エルサさん。シエルが気になる?」
「そうね。どうしてかしら?とっても気になるのよ。だから……キリア、シエルちゃんを守ってあげてね」
何故だか、胸がざわついてしまうのを隠しながらキリア達にシエルを託す。
すると、仲の良い者でも見逃してしまうほど微かに口角が上がり、深淵のような真っ黒な瞳が、温かみを持って僅かに細められた。
「了解」
そう言ってキリア達も宿に帰っていった。
少しだけ胸のざわつきが治まり、余裕が生まれる。
「うーん。キリアの今後も不安だわ。……女を泣かしそう」
そう言いながら、気持ちを切り替えギルドの仕事へ戻ったのだった。
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エリスタ王国王城のある一室
「まだ見つからないのか?」
疲労と憔悴で顔色が芳しくない国王が、自身お抱えの隠密に声をかける。
「はい。魔力探知を行いましたが、王都内には既にいないようです。中核都市などには、姿変えや色変えを悪用した子供の人攫いや違法の人身売買が横行しているとして、出入国時に同行している大人と1度離し、魔法を使われていないか確認するよう指令を出してあります。また、子供1人での出入国を禁止しておりますが、報告に上がってきた者の中に、あの方はいらっしゃいませんでした」
「そうか。ご苦労、引き続き調べてくれ」
「御意」
隠密がいなくなり、部屋に1人っきりになると、深くため息をつく。
あの子は、社交界デビュー前だ。それに、体が弱いことは周知の事実。あと数年は、誤魔化せるが……見つけられたとしても、無事であるかは別だ。
今まで、貴族として過ごしてきた子供が、平民として暮らすことなど無理だ、生活が違いすぎる。
協力者がいる可能性が高い。しかし、ルーシャル公爵家を調べたが、関係者やそれに通ずる者達のなかに消息不明の者はいなかった。
リーカスも娘がいなくなってから、憔悴している。
他に気取られないよう水面下で探しているようだが、あちらも結果が芳しくないようだ。
もし、攫われたのなら、早急に見つけださねばならん。
しかし、あの置き手紙は、脅されて書かれたものでは無い。なら、自ら出て行ったというのか?
いや……1つだけあるな。
相手を意のままに操る魔法……だが、あれはかの国の禁忌の魔法であり、今では使用できる者はいなかったはずだ。
かの国でも、一部の者にしか知られていない。
私が知ったのも偶然だった。
「ふむ。……可能性は低いが、調べてみるか」
あの子を失うわけにはいかない。
ましてや、その重要性を他国に知られるのは避けなければ。
国王は、先ほどとは別の隠密を呼び出し、新たな指令を下すのだった。
エルサさんは、14歳の成人後から働いているので、現在24歳です!
彼氏おりません!
今は仕事が彼氏だそうですヾ(*´∀`*)ノ
タイプの男性は、カーナさんのような快活な男らしい(?)男性だそうです!
読んで下さり、ありがとうございます(*´˘`*)♡
次回もよろしくお願いします!