今回は特別調査として、PCR検査を増やすような発言がどれくらいあったのかを検証しました。
検証対象番組と検証期間は
「羽鳥慎一モーニングショー(3月16日~3月20日放送分)」
「グッとラック!(3月16日~3月20日放送分)」
「サンデーモーニング(3月22日放送分)」
です。
検証対象はPCR検査がテーマの報道部分です。
検証方法としてPCR検査に関する発言部分の時間計測、および発言の書き起こしを行い、「全員検査への煽り」「全員検査への反対意見」「その他」の3つに分類しました。
3番組の検証結果をまとめたものをレポートとして、配信していきます。
グッとラック!(3月16日~3月20日放送分)
今回は「グッとラック!」のまとめレポートです。
検証結果は添付のグラフの通りです。
「グッとラック!」ではPCR検査の話題はほとんど取り上げられず、16日に少し放送があった程度でした。
他国の感染状況、経済対策、オリンピック対応やマスクの使い方などが主なトピックでした。
PCR検査の話題に関しても検査を増やせという発言は皆無でした。
主な発言を見ていきます。
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舛添氏:厚労省だけが悪いんじゃなくて。大したアレ(症状)でもないのに(病院に)行き過ぎですよ。暇なじいちゃん、ばあちゃんがいっぱい行ってる。だからあんまり乱心乱用はやめましょうってことも言わないと、ああ(医療崩壊)なっちゃう。
森井氏:軽症の方もいらっしゃるし、色んな症状の方がいらっしゃると思うんですけど、軽症の方は自宅で、とか、そういう方向でちょっと変えていかないといけないんじゃないかな って気がするんですけど、いかがですか
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このように、あまり病院に行ってはならないといった発言が見られました。
「羽鳥慎一モーニングショー」とは異なり、医療崩壊に陥った他国の様子を踏まえた上での放送であったといえます。
サンデーモーニング(3月22日放送分)
続きまして「サンデーモーニング」です。
検証結果は添付のグラフの通りです。
主な発言部分を見ていきます。
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松原耕二氏(以下松原氏):それともう一つ、つけ加えたいのはですね医療現場の、もちろん医療崩壊を防ごうというのはとっても大事で、今一番大事なテーマですけれども、同時に、いろいろ聞いてみると、防護服も足りなければもうマスクもなくなっているんですね、医療現場で。例えば感染症の指定病院のお医者さんもですね取材に対してフェイスガードがなくて水中マスクをかけてるっていうんです。ここまで追い込まれているのかとものすごくびっくりしましたね。と同時に、街のお医者さんにも感染を恐れてみんな行かなくなっているわけですね。だからこの夏ぐらいにかけて経営がかなり苦しくなるところが出てくるんじゃないか。だから患者さんが増えて医療崩壊が起こるというのももちろん心配も大事だと同時に、今あるその普通のお医者さんたちをどう守るか看護師さんたち。これもとっても大事なテーマだと思いましたね。
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これは、ニュースキャスターの松原氏発言です。松原氏は、医療崩壊の危険性について警鐘を鳴らしています。この発言は、逼迫する医療現場の実情に沿った発言といえるでしょう。その後番組は、イタリアの医療崩壊から日本の医療体制に関する話題に話を展開させて行きます。
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水野アナ:医療崩壊が起きているといわれるイタリア。日本の医療体制は大丈夫なのでしょうか。
(中略)
そして医療崩壊を防ぐために重要なのが爆発的感染を防ぐことですがそのためには検査体制の充実が欠かせません。しかし、海外メディアから日本の検査体制に対し、批判の声が出ているのです。
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このように、医療崩壊の可能性について指摘した上で、日本の検査体制の不備について指摘をしています。しかし、日本政府は検査数を抑えることで、医療崩壊を抑えるという手法を取ってきました。上記のような発信の仕方は、情報の一面的な見方に過ぎず、必要以上に視聴者を煽ることに繋がりかねません。また、韓国やイタリアなどの国では検査数を増やしたために、軽症者に多くの医療リソースが注がれ、重症者を十分に治療することのできない、医療崩壊に陥ってしまいました。
検査数を抑えているという背景を十分に紹介しきれていなかったという点で、以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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サンデーモーニングでは、続けて日本の検査体制の不備を、海外メディアを引用し追求します。
羽鳥慎一モーニングショー(3月16日~3月20日放送分)
最後は「羽鳥慎一モーニングショー」です。
検証結果は以下のグラフの通りです。
検査数を増やすべきだ、という趣旨の発言が3番組で最も多かったのが「羽鳥慎一モーニングショー」です。
主な発言部分を見ていきます。
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岡田晴恵氏(以後岡田氏):安倍総理がですね、根拠として出しているデータっていうのが、人口1万人あたりの感染率が0.06人なんですね。韓国とか中国とかイタリア、これよりも低いというデータなんですね。韓国は積極的に、検査してますから、1.57人と。一方で、今問題になってるイタリアは35人なんですね。ですから、それからすると低いと。ただ一概にちょっと検査の母数が違いますので、一喜一憂はできないかなっていう気はします。
岡田氏:実際にやられてる件数っていうのが大事だと思うんですね。
総理(検査数を)増やしてくださってるんですけども実際にやられてる件数っていうのがちょっと手詰まり感があって。保険対象になったんだけれどもなかなかってところがあるわけですね。ですから まあの肺炎をしていて、ドクターが必要と思われる方はまあそれだけでも速やかに検査できるようにはしていただきたい。
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これは白鴎大学の岡田氏の発言で、検査数の母数が少ないため日本の感染率が低いとは言えない、といった趣旨の発言です。
日本政府は検査数を抑えることで、医療崩壊を抑えてきたものの、このような発言をすることで必要以上に恐怖を煽ってしまう可能性があります。
韓国やイタリアなどの国では検査数を増やしたために、医療崩壊の事態となりました。その結果、重症患者の治療ができず、感染状況がさらに悪化してしまったのです。
検査数を抑えているという背景を十分に紹介しきれていなかったという点で、以下の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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次に、以前取り上げた玉川氏の発言も見てみます。
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玉川氏:陽性者の入院判別って書いてありますね。前提が陽性者なんですよ。ということは、検査をした確定診断をしたっていうことが前提になっているわけですね。先ほど岡田先生がおっしゃったようにこれから患者が増えていくという局面の中では陽性者を確定するための検査というのは当たり前だけれどもどんどん増やさないといけないんです。私、きのうもう終わった話だというふうに話をしたのはつまり、検査をこれから増やさなければいけないのは当たり前のことであってもうそんな議論は…。検査を増やしたほうがいいとか増やさなくていいなんて議論はっくの昔に決着している話だと。もう政治の世界もそれで動いています。安倍総理も土曜日の会見で9000までしか行かないけど検査は増やすと言っていますし先週、自民党の田村本部長来ていただいてお話を伺いましたが必要な人には全員、検査を受けられるような体制をこれから取っていくとそういう形で政府にも働きかけると田村本部長もおっしゃっていました。政治の世界でも検査数を増やさなくてはいけないとこれは決着した話なんです。きのうWHOのテドロス事務局長がおっしゃいましたけど検査に次ぐ検査が必要だと言っているんです。そういう意味で言うと検査はしなくていいという話はすでに終わった話だと。いかにして検査を増やすかいかにして、検査を増やすスピードを上げるかということが 重要だということです。
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検査数を増やすべきだ、という趣旨の発言です。
これは17日の発言なのですが、前日16日の発言では「医療崩壊をさせないことが大事」といった発言をしています。
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玉川徹氏:もうちょっと具体的な話があるのかなという印象ですがやらなければいけないことというのは決まっていて、まず1つは、医療崩壊を起こさないことという。これが一番大事なことですね。PCR検査をしたほうがいいとかしないほうがいいとかそんな話はもう終わった話だと僕は思っています。だから、医療崩壊を起こさないということだけで1つの独立した問題ですので。それを徹底してやると。大阪府の施策というのは非常に有効だと思っていてだから、そういうこと。それから、経済でいえば実体経済が冷え込んでいくというのはこれはもう避けられない部分でしょうね。これ、世界中、そういう部分で。そこに対する手当が必要だという一方で金融システムを守らなければいけないという問題も同時にあって金融システムがただでさえ債権の世界においてバブルだったと今、みなされていますからこれをきっかけにして債権のバブルが崩壊するということになれば金融危機になっちゃうんですね。そこをどうやって国際協調の中で守っていかないといけないというその3点かなと僕は思っていますね。
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「PCR検査をしたほうがいいとかしないほうがいいとかそんな話はもう終わった話」として、医療崩壊を起こさないことが「一番大事なこと」と発言しています。
以前配信したレポートでも取り上げましたが、これよりも前の2月26日の発言では以下のように発言しています。
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玉川氏は政府が発表した「患者数が断続的に増え続けている状況では入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査医に移行」の基本方針について「簡単に言いますと、軽症の人は診ませんって言ってるんです。軽症の人には検査も治療も含めて医療提供しませんってことです。これはもう、医療崩壊でしょ」と疑問を呈した。続けて「日本の医療は軽症のうちに治して重症化させないというのが、あらゆる病気に関して鉄則ですよね。だから、なるべく早く見つけて命に関わらないようにする。軽症を診ませんってことになって、重症化するまで診ないというのは『みなさん重症化するまで待ってください』ってことです。そんな話ないでしょ? ありません」と語気を強めた。
番組では他国の対応も紹介。韓国は文在寅大統領が「総力戦」と表明し、PCR検査を民間に解放し、国一丸で対策に当たっていることを紹介。日本は厚労省中心の対策で、安倍首相はコメントを出しただけだが、韓国は大統領が先頭に立った。玉川氏は「これですよ。こういうことを言うと韓国びいきと言われるかもしれないけど、ネトウヨの方々、ここ出番ですからね。自分たちの生活に関わっている部分だから、見習うところは見習わないと」と力を込めた。
≪引用 東スポWeb テレ朝・玉川徹氏 政府の新型コロナ対策バッサリ「医療崩壊です」「ネトウヨの方々、出番です」https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/1756524/≫
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韓国を見習って検査数を増やすべきだ、という趣旨の発言です。
このように玉川氏の発言を追っていくと一転二転しており、視聴者への正しい情報発信ができているとは言えないのではないでしょうか。
さらに羽鳥アナも検査数は増やすべきだという趣旨の発言をしています。
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石原良純氏(以後石原氏):これは最初はよく出てきた話じゃないですか。PCR検査の問題点。重篤になる以前に検査してくべきだっていう話があって。それで保険適用になって。
現場は変わってないんですか?
羽鳥アナ:検査件数は、そんなに増えてないです。途中で絞ってるみたいです。帰国者・接触者外来っていうところでやっぱり検査できませんよ、っていう現状はあんまり変わってない。
羽鳥アナ:厚労省の事務連絡で3月1日に出ているんですが軽症、無症状は自宅待機というのもできるとなっているんですよ。3月1日に厚労省から事務連絡が出てもうそれは有効なんです。陽性でも絶対入院ではないんです。検査するなという人は検査をして陽性だったら絶対に病院に入れないといけないから爆発しちゃうでしょと。今、厚労省が事務連絡としてそういうことじゃなくなっているんです。だから(検査を)やればいいと思うんですが。
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検査の現状について聞かれた羽鳥アナは
「検査件数は、そんなに増えてないです。途中で絞ってるみたい」
「(入院は必ずしも必要ではないから、検査を)やればいいと思うんですが。」
などと羽鳥アナも基本的に検査数を増やすべきだ、というスタンスで議論を回していたといえるでしょう。
このように番組を通してPCR検査は増やすべきだという論調での放送であったといえます。