モモンガ冒険譚!!   作:ブンブーン

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第23話 モモンガと『蒼の薔薇』

ーーーーー

暗闇に染まる深夜の空を1人の少女が月を背景に浮かんでいた。

彼女…王国のアダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』のメンバーの1人であるイビルアイは眼下の広大な農地を見下ろす。

 

 

(ここも燃やしたところで、結局は『焼け石に水』なのだが……まぁ、見過ごすと言うのも気が引けるしな)

 

 

それにこれは普通の冒険者が受ける依頼とは違う個人的な依頼だ。金ではなくこの国を救いたいという想いで受けた以上投げ出すわけにはいかない。

 

イビルアイの役割は周囲の監視と警戒、そして仲間の援護だ。彼女の種族的な特質(・・・・・・)と魔法を展開し、周囲に仲間の障害となるモノがいれば《伝言(メッセージ)》で知らせるもしくは排除する。

 

 

(さて、アイツらは上手くやってるかな)

 

 

もっとも彼女自身それが必要となる事態はあり得ないだろう。

 

下を見ればイビルアイの仲間の内の2人が動いていた。よく似た外見をしている双子の『忍者』で元暗殺集団の頭目のティアとティナだ。慣れない者が双子を見分けするのは難しいが、赤いバンダナを巻いてるのがティナ、青がティアである。

 

見回りの男2人を死角から気配を感じさせない見事な動きで忍び寄り喉元を短剣で一突き。瞬く間に男2人を仕留めると、すぐに近くの叢へ隠す。その無駄のない動きは流石元暗殺集団の頭目なだけはあると毎度の事ながら感心させられる。

 

死んだ男達からは血が一滴も漏れ出ていないのは双子が持つ暗殺用のマジックアイテム「吸血の刃(ヴァンパイア・ブレイド)」の効果だ。斬りつけた箇所から対象の血を全て吸い尽くす効果を持つ為、厄介な血の跡を残さない。

 

 

(問題は無さそうだな)

 

 

双子は問題ないと踏んだイビルアイは、農地から少し離れた木陰に身を潜めている2人へ視線を向ける。

がっしりした巨軀に筋肉質な女戦士ガガーラン、もう1人は『蒼の薔薇』のリーダー、ラキュース。2人はもしもの事態が起きた時の為に何時でも動けるよう待機していた。

 

視線を双子の方へ戻すと早速農地に火を放つ準備をしていた。これでここ栽培している『黒粉』は全て灰と化すだろう。

 

 

(だが例えここを焼き払ったとしても、連中はまだ我々では知り得ない土地で栽培を続けている。麻薬の流通が滞るのはほんの一時だけだ。それも襲撃をすればするほど、連中は巧妙な手口で目立たない場所での麻薬取引きや交渉、手練の警備を雇って活動を続ける)

 

 

まさに〝イタチごっこ〟だ。

連中…『八本指』の影響は深刻なまでにこの王国全土に広がっていると改めて認識させられる。

 

その中でも『麻薬部門』は最悪だ。 

 

奴らが栽培している『黒粉』…正式な名前は『ライラの粉末』と言い、摂取すれば強い幸福感と陶酔感を齎す。だが中毒作用が非常に強く、酷いものでは神官の魔法が必要になるほどに依存性が高くなる。一昔前はごく一部の富豪にしか行き届かない品物だったと聞くが、金になると踏んだ『八本指』が独自の技術で量産化に成功。今では貴族や王族にまで『黒粉』を使いその影響力を広げている。

 

王国はもうダメかも知れないが、『黄金』と呼ばれるこの国の第3王女はそれを打破し何とか国を救おうと必死に足掻いていた。リーダーのラキュースは彼女とは友人である為、国の為に尽力を尽くす彼女の力になりたい、と今日まで協力し続けている。

 

 

(今はあらゆる可能性に頼ってシラミ潰しにやっていくしかないか)

 

 

ティア達が農地に火を放つ準備を待っていると、彼女の感知に反応があった。最初は警備の連中かと思っていたが何か違う…ティア達と少し距離が近いが、あの2人は何事もなく作業を続けている。

 

 

(気付いていない?……アイツらほどの実力者がか?)

 

 

ティアとティナの隠密と索敵能力は群を抜いている。生半可な実力では彼女達の索敵能力を欺く事など出来るはずがない。その反応が現れている謎の人物は間違いなく双子の感知範囲に入っている。

 

何よりも気になったのはその反応である。それは生き物を感知したのではなく、全く真逆の存在を感知していたからだ。

 

 

「アンデッド…?」

 

 

イビルアイは《飛行》で直ぐに反応のあった場所まで移動した。

 

そこにいたのは200年以上生きた彼女でさえ見た事も聞いた事も無いアンデッドがまるで身を潜めるように隠れていたのだ。

 

 

(何だアレは…?アンデッドに間違いはないが何故こんな所に?そもそも何をしている?)

 

 

まるで探っている様なその動きは明らかに野生のアンデッドとは違っている事を表している。外観は黒衣を纏い、頭部には漆黒の頭巾を巻き目元以外を隠している点からティア達の様な索敵や隠密に長けた種類のアンデッドであると事が窺える。

 

 

(強いな。私より弱いが、ラキュースやガガーランでは少し厳しいくらいか)

 

 

『蒼の薔薇』総掛かりで対処すれば何とかなるかも知れない。色々と聞きたい気持ちはあるが、アンデッドと上手くコミュニケーションが取れた試しは殆ど無い。

 

 

(そもそも隠密系のアンデッドがいる事自体が不自然だ。仮に現れるなら精々戦士骸骨(スケルトン・ウォリアー)戦士動死体(ゾンビ・ウォリアー)がいいところ…にも関わらずアレは隠密系に特化したアンデッドだ)

 

 

アンデッドは発生する場所の環境によって種類は大きく変わる。例えば何の変哲もない街や村の墓地からは何の特殊性を持たない一般的な骸骨(スケルトン)動死体(ゾンビ)が現れる事が殆どだ。戦場なら戦士タイプのアンデッドや死者の大魔法使い(エルダーリッチ)骨の竜(スケリトル・ドラゴン)骨の巨人(スケリトル・ジャイアント)などが現れる。他にも場所に応じて多種多様なアンデッドが発生するし、例外も少なからず存在する。

 

だが、今視界に映っているアレは異質なタイプのアンデッドだ。さっき言った通りの例外タイプならそれまでなのだが、あの身を潜めながら何かを窺う動作は明らかに自然じゃない。

 

 

(誰かの意思が繋がってる?…つまり命令を受けている?)

 

 

そうなるとアレは召喚で生み出され使役されているアンデッドという事になる。だが、アレほどのアンデッドを召喚するのはとても容易な事では無い。そんな人物がいるとなれば魔法詠唱者の中でも死霊系に特化した存在だ。

 

 

(だが死霊使い(ネクロマンサー)の魔法詠唱者は数が少ない。候補は搾られるか…)

 

 

イビルアイの脳裏に複数の候補が過った。

 

まず1人が秘密結社『ズーラーノーン』の高弟達。高位のアンデッドを召喚出来る魔法詠唱者と言われれば先ずこの組織が上がる。恐らく連中ほど死霊系魔法を研究している組織は無いだろうが、『ズーラーノーン』は秘密結社だ。バハルス帝国も彼らの枝組織ですら明確な証拠も足取りも掴めていない。『八本指』と繋がりが全く無いとは言い切れないが、そんな注意深い連中が自らの尻尾を掴ませる様なマネはしないだろう。特に帝国にも流れつつある『黒粉』…これを帝国の優秀な皇帝はその対応をしていると聞く。つまり仮に『八本指』と繋がっていれば探られる可能性も大きい。奴らがそんなリスクを取るとは思えない。故にエ・ランテルの共同墓地で起きた出来事は非常に稀なケースだ。あんな大掛かりな計画を実行する事などあり得ない。

 

 

(ズーラーノーンの可能性は低い。なら……フッ、まさかリグリットの奴か?)

 

 

イビルアイは首を横に振りながら自笑する。

 

リグリットとは古くから(・・・・)の付き合いだ。『蒼の薔薇』にイビルアイが入る前は彼女がメンバーだったのだが、色々あって今はイビルアイが彼女の後を継いでいる。いや、継がされたと言うべきだろうか。

 

 

(アイツも死霊使いだから、多分アイツなら召喚出来なくはないかも知れない……まぁ出来たとしてもアイツの訳がないがな)

 

 

もしリグリットなら予期せぬ衝突を回避する為、イビルアイに《伝言》で連絡を入れてくる筈だ。それをアイツがしない筈がないとイビルアイは踏んでいた。連絡して確認出来なくは無いが、「おや、どうした?寂しくなったか?」とどうせ小馬鹿にされるだけだから必要時以外の連絡は絶対にしないと決めている。

 

…ともあれ二つの線は消えた。

 

 

(そうくると…やはり『六腕』のアイツか)

 

 

消去法で考えて行き着いた結果が『八本指』の警備部門『六腕』の1人、〝不死王〟デイバーノックだ。『八本指』の“力の象徴〟とも呼べる警備部門、その中でも最強の6人。全員がアダマンタイト級の強さを有していると言われており、その中の1人がデイバーノックだ。彼は凄腕の魔法詠唱者で、その正体は人間ではなくエルダーリッチらしい。

 

そう考えれば筋は通る。

 

麻薬部門から警備の依頼を受けた『六腕』がデイバーノックを送り込んだのだ。『黒粉』は王政や貴族社会にその影響力を広げるのに必要不可欠な物。それをまた焼き払われては堪らないと判断し、より確実に依頼をこなせるであろう『六腕』に頼った。デイバーノックの詳しい実力は不明だが『六腕』の一角を任せられる程だ。弱いなんてことはあり得ないだろう。

 

 

(アレはデイバーノックが召喚したアンデッド。あのアンデッドは襲撃者が来ないか見張っている……。ハッ!?そうか、分かったぞ!これからこの場所で何か大きな取引が行われるんだ!アレはデイバーノックが召喚した護衛用のアンデッドで間違いない!)

 

 

そうと決まれば行動は早い。

イビルアイは一撃で確実に仕留められる様、自身が持つ最高威力の魔法を展開する。

 

 

「《魔法最強化(マキシマイズ・マジック)水晶騎士槍(クリスタルランス)》」

 

 

手を翳し魔法陣を展開させると水晶で出来た騎士槍がアンデッド目掛けて飛翔。アンデッドは攻撃に気づく間も無く後頭部から貫かれ消滅した。

 

当然の結果ではあるが一撃で屠る事が出来た事に内心ホッとする。隠密系に特化したモンスターは一度逃すと厄介だ。それに召喚モンスターを倒したのなら召喚者は自身との『繋がり』が絶たれた事に今頃気付いた事だろう。

 

そうなるとデイバーノックとの一戦も覚悟する必要があるかもしれない。もっとも本人だと言う確信はまだないのだが…。

 

 

「やれやれ。先ずはラキュース達と合流だな」

 

 

とりあえず《飛行》のまま合流予定地である小丘へ向かったイビルアイだが、目的地が近づくにつれて妙な違和感を感じた。

 

 

(皆いるようだな……ん?1人多い?)

 

 

瞬時に警戒態勢に入ったイビルアイは彼女が唯一扱える感知魔法《生体感知(バイタル・センス)》を発動させる。しかし、感知できたのは4人分の生体反応のみで、微かに視界に入っている5人目の反応は無かった。

 

この事実を知った瞬間、彼女の中である予感が過った。そして、それは彼女が持つアンデッドの気配を強く感知する(・・・・・・・・・・・・・・・)種族スキルのが反応した事で確信へと変わる。

 

 

(マズイ…!!!)

 

 

イビルアイは《飛行》を出せるだけの速度で飛ばしつつ《水晶騎士槍(クリスタル・ランス)》を発動。丁度機動線上に立っているラキュースを大声で呼び掛ける事で退いて貰い、すかさず《水晶戦士槍》を投擲させる。

 

 

「ラキュゥゥゥゥス!!!!」

 

 

水晶の槍はラキュースが呼びかけに反応し咄嗟に避けた事で真っ直ぐ目標である男に飛翔するが、男は地面に突き刺していた大剣を引き抜き、その剣腹部分で受け止めた。

 

その僅かな動きから見て分かる。

 

この男、ただ者でない。

 

そしてその正体も分かっていた。

漆黒の全身鎧を纏う事であたかも戦士風に擬態しているが自分には全てお見通しだ。

 

 

「お前が〝不死王〟デイバーノックだな!!」

 

 

戦士として中々に上手く出来た擬態は見事と言う他ない。だが、目の前の男から感じられる〝死の気配〟を誤魔化す事は不可能だ。

 

漆黒の鎧を纏った男はただ首を傾げるだけだった。

 

 

 

 

ーーーーー

モモンガはただただ困惑していた。

 

突然現れた小柄な少年とも少女とも取れるマントを纏った人物にいきなりデイバーノックとか言う野球用語とかに出てきそうな名前で呼ばれたのだ。しかもいきなり攻撃を仕掛けてくる辺り中々過激派なようで話し合いでの解決はちょっと難しいのかも知れない。

 

 

(…それよりもアイツが言った言葉が気になるな)

 

ーーアンデッドの気配ーー

 

 

そう言えば…とモモンガは共同墓地での出来事を思い出した。

 

 

(あの知性あるアイテム(インテリジェンス・アイテム)…死の宝珠だったか?アイツは〝人化の状態では死の気配は感じられない〟と言っていた。〝消えたと言うより隠蔽に近い〟との事らしいが、あの子供の魔法詠唱者は〝アンデッドの気配〟と言っていた。何故、あの玉っころには感じられなくてあの子供には感じ事が出来るんだ?)

 

 

考えられる理由が幾つか浮かんでくる。 

 

1つがあの子が高位のマジックアイテムを装備している可能性。もしそうならあの子は相手が指輪をつける前の状態…つまり死の支配者(オーバーロード)のモモンガを看破している事になる。

だが『人化の指輪』は伝説級アイテムだ。これを看破するマジックアイテムとなると同級のマジックアイテム、もしくは…あり得ないだろうが世界級(ワールド)アイテムを使う必要がある。この世界の平均的なマジックアイテムの価値は下位以下〜中位レベルの物が殆どである為『ユグドラシル』では大金さえ支払えば買える伝説級とは違う

 

 

(まぁユグドラシル基準で考えたら、レベル55で伝説級の1つは持っててもおかしくないかなぁ〜とは思うけど、この世界は中級…いや、下級アイテムすらまともに入手出来ないし。それに、この世界独自のマジックアイテムという可能性もある……うーん、分からん)

 

 

もう一つがこの世界独特の能力である生まれながらの異能(タレント)である。文字通りその人の持つ〝才能〟で種類は様々だ。その中に『相手がアンデッドかどうかを見分ける』タレントがあっても決しておかしくはない。

 

 

(やっぱり卑怯だよタレント…)

 

 

もう一つがタレントとは違う、持ち前の種族スキルで見破ったと言う事も考えられる。だがこれはソイツが異形種であった場合にのみ考えられる事なのだが、あの子はどうみても人間種だろう。

 

 

(よってタレント能力の可能性が大きいかな。おっと、先ずは弁明だ)

 

 

モモンガは再び剣を地面に突き刺し、両手をゆっくりと挙げて無害であることをアピールする。

 

 

「待ってくれ。さっきは咄嗟に防いだが、自己防衛は当然の事だと認識して欲しい。それと、私は君たちの敵ではないし、私が冒険者でアダマンタイト級と言うのも本当の話だ。もう一度言うが、私の名前は〝モモンガ〟。エ・ランテルで冒険者をしている」

 

 

イビルアイは落ち着いた素振りで応える。

 

 

「聞いたことが無いな。フン、貴様らの欺瞞工作か?」

 

 

彼女達はどうやらエ・ランテルから新しいアダマンタイト級が生まれたと言う情報はまだ届いていないらしい。確立した無線システムが無いこの時代では情報伝達の遅れやタイムラグが起きる事は仕方のない事ではある。

 

モモンガは若干諦め気味に話を続ける。

 

 

「はぁ…ならどうしたら信用してくれるんだ?」

 

「貴様を拘束した後に身包みを剥がさせて貰う。悪く思うなよ?お前から僅かでもアンデッドの気配が感じられなければこんな手段は取らなかったんだかな」

 

 

ここでモモンガはピクリと肩が動く。

 

それはつまり装備品を外される…『人化の指輪』と『淫夢魔の呪印』も外されると言うことに繋がる。

 

 

(マズイ…それだけはマズイ)

 

 

つい数日前に『淫夢魔の呪印』を一時期失くしてしまったが為に街で大変な事をしでかしたばかりだ。あの日以降受付嬢達から繰り返しお誘いのアピールを受けるし、娼館通りの近くを通った時なんか、娼婦達が言い寄って来る始末。更に行き交う女性達の大半が赤らめな顔で視線を追うって来る事も多い。

 

 

(見たところ全員が女性…あの子供は不明だが、とにかく2度も性欲のケダモノに変貌する事だけは避けねばな……って何を言ってるんだ俺は!?一番警戒しなければならない事は『人化の指輪』を外される事じゃないか!!)

 

 

衝撃的過ぎる出来事だった故に本来警戒しなければならない事が抜けてしまっていた。

 

『人化の指輪』を外されてしまったら本来の自分の姿がバレてしまう。そうなると人間としての自分は社会的に死んでしまうだろう。少なくともこの国で人間として生きていく事は出来なくなる。

 

自分1人が損をするだけならまだ構わない。ただエンリやクレマンティーヌを食わせていく為にもここで正体が明るみになるわけにはいかない。

 

 

(バレた時は最悪彼女達を…と言うことになりかねないが、それは出来る限り避けたい)

 

 

モモンガは燃え盛る農地を背景にして答えた。

 

 

「すまないが断らせて頂きたい」

 

「…それは何故ですか?」

 

 

ラキュースが怪訝そうに尋ねる。当然の反応だ。ここでパッと理由を出せれば良いのだが生憎今のモモンガにそれは出来なかつた。考えるだけの余裕がないのだ。

 

 

「えっとー…それは…」

 

「もういいラキュース。聞いても無駄だ。コイツは『六腕』のデイバーノック……姿をバラされたく無いのだろうが、先も言った通り私には全てお見通しだ!!ここで『六腕』の一角を崩させて貰うぞ!!」

 

 

いやだから誰それ?と聞こうとする前に5人は一斉に動き始めた。あのイビルアイの言う言葉を素直に信じ行動を移せる所を見るとかなり信頼関係が構築されたパーティーのようだ。

 

 

「悪りぃな。恨むな、よッ!!!」

 

 

巨軀の女戦士(男女)ガガーランが巨大な刺突戦鎚(ウォーピック)を振り上げながら突っ込んで来るや叩き下ろして来た。見た目通りの前衛職らしい勢いのある動きだがモモンガにとっては何て事はないゆったりとした動きだ。

 

 

(クレマンティーヌの動きに慣れ過ぎたか)

 

 

もっと速く、もっと鋭い攻撃を仕掛けて来る、色々と重い女戦士を知っている。彼は地面に突き刺したままのグレートソードを引き抜かず、振り下ろされる刺突戦鎚に対し横へ移動して躱した。しかし、ガガーランは途中で振り下ろす角度を急激に変えて来た。追尾するような動きでモモンガに向けた刺突戦鎚がそのままの勢いで迫って来る。

 

 

(おぉ?急な方向転換だな。……何か技術的と言うよりも、強引な力技にも感じるがそれでも十分凄いな)

 

 

地味に感心するモモンガは余裕でその一撃も回避する。尚もガガーランは刺突戦鎚を容赦無く振り回し続けた。

 

 

「オラオラオラぁ!!」

 

 

モモンガは反撃に出る事はせずひたすら避け続ける。正直言ってどうしようかと迷っていたのだ。反撃に出るべきか否か…下手に反撃すれば間違いなく完全な敵対行為として認識される。だが現に襲われている最中である為、反撃してもしなくても変わりないのかも分からない。

 

 

(んーーどうするべきか…)

 

「避けるだけかァァ!?」

 

 

ガガーランの刺突戦鎚がモモンガの頭上から振り下ろされるがそれも容易く躱した。刺突戦鎚はそのまま大地に打ち付けられると、大きな地揺れと共に土煙が舞い上がる。

 

 

「おお?」

 

 

僅かだがモモンガが地揺れに驚く様子が土煙に呑まれる寸前に見られた。その瞬間を見逃さなかったガガーランはニヤリと笑う。

 

これこそガガーランが狙っていた状況だ。

 

最初の数撃で相手(モモンガ)に攻撃を当てるのは至難である事を戦士としての経験と勘で理解したガガーランは、少々姑息な手段を選んだ。

 

彼女の主武器である刺突戦鎚…『鉄砕き(フェルアイアン)』は純粋な高い攻撃力に加え、攻撃した箇所に局所的な地震を発生させる様な効果を持つ。

 

相手の動きと視界を僅かでも阻害させたガガーランの行動は背後に待機していたイビルアイへの合図でもあった。

 

 

「《魔法最強化(マキシマイズマジック)酸の飛沫(アシッド・スプラッシュ)》!!」

 

 

魔法陣を展開したイビルアイの手から強力な酸の飛沫が土煙の中へと向かっていく。効果は定かでは無いが避けようも無く、少なくとも彼が纏う漆黒の全身鎧に損傷は与えただろうという自信はあった。その時、土煙の中から何かが勢い良く空に向かって飛んで出てくるのが見えた。

 

言わずもがなモモンガである。

イビルアイはすかさず魔法を叩き込んだ。

 

 

「やはり出て来たな!!《魔法最強化(マキシマイズマジック)結晶散弾(シャード・バックショット)》!!」

 

 

今度は拳よりも若干小さめな結晶の散弾をモモンガが滞空している上方へ向けて撒き散らす。相手は空にいる、避けようがない。今度は確実に命中すると確信するイビルアイだが、彼は真紅のマントの端を掴み盾のようにして靡かせると、結晶の散弾を見事に弾き防いだ。

 

 

「何だと!?」

 

 

驚愕するイビルアイはあの真紅のマントに傷一つないのを見てアレがマジックアイテムだと瞬時に理解した。だとしても、イビルアイにとっては自身の魔法を防がれた事は納得し難い事実だった。

 

 

(威力を最大にまで上げた《結晶散弾》を弾いた!?…やはり、かなり高位のマジックアイテムを所持しているようだな)

 

 

その事実があの男が『六腕』の1人デイバーノックであるという確信に変わっていく。『六腕』に限らず、『八本指』の各部門の長達やその幹部たちには裏ルートで入手した高位の様々なマジックアイテムも取り扱っていると聞く。あの真紅のマントもその類で、最初の《酸の飛沫》もアレで防がれたのだと思った。

 

 

「ほぅ…大地系のエレメンタリストか?中々に面白い系統を使う魔法詠唱者の様だな」

 

 

モモンガは《飛行》を発動した状態で、同じく宙に浮いていたイビルアイに向けて語り掛けた。しかし、その口調には一切の敵意が感じられない所が僅かにイビルアイを混乱させる。が、彼女は僅かでも悟られない様に余裕を持った態度で答えた。

 

 

「流石に博識だな。平然と第3位階魔法の《飛行》を使う様子から改めて確信した。その騎士然とした姿はカモフラージュと言った所か?姑息な真似をするじゃあないかデイバーノック!」

 

 

モモンガは溜息を吐き肩を竦める。

 

 

「だから何度も言っているが…私はその〝デイバーノック〟なんて名前じゃなくて〝モモンガ〟だ。いい加減に分かってくれないか?」

 

「ハッ、お前こそ往生際が悪いぞ?微かだがお前からはアンデッド特有の気配を今も感じている。僅かしか感じ取れないのは、その纏っている鎧の効果かはたまた別の効果なのかまでは解らないが……『六腕』が出張るほど『八本指』の麻薬部門は緊迫しているという事か?」

 

「さっきから言ってる『六腕』も知らないな。『八本指』…は、名前くらいなら聞いた事はあるがー」

 

「《魔法抵抗突破最強化(ペネトレートマキシマイズマジック)水晶の短剣(クリスタル・ダガー)》!!!!」

 

 

不意打ちの一撃をイビルアイは放って来た。通常よりも巨大な水晶の短剣を作り出し、射出する。物理的ダメージの向上化は勿論、相手の魔法抵抗すら貫通するスキルも含まれている。

 

 

(そのマントが魔法抵抗を有したマジックアイテムでも、この一撃には耐えられまい!!)

 

 

しかし、モモンガはその一撃を体で受け止めた。魔法で作り出された水晶の短剣はモモンガに命中する直前で砕け散る。

 

 

「なっ!…防御突破を込めた魔法でも無傷だと…?まさか魔法無効化の効果を持つ鎧なのか!?…おのれぇ!」

 

 

兜越しに頬のあたりをカリカリと掻いた。無論、この全身鎧にそんな効果は無い。単純に彼が持つ常時発動型特殊技術(パッシブスキル)の1つ『上位魔法無効化Ⅲ』の第6位階以下の魔法を完全無効化するという効果である。

 

 

(言った方がいいかなぁ?これはパッシブスキルの効果でしかないって…いや、言わない方がいいか。それにしても懐かしい魔法使うな〜、エレメント系魔法は俺も初心者時代はそれなりに憧れてた記憶があったな……でも、あの子供…イビルアイだったか…第4位階を扱える現地の人間は彼女が初めてじゃないか?)

 

 

確かこの世界の一般常識では、天才の中の天才でも扱えるのは第3位階までだ。それを考えれば彼女はまだ子供でありながら超天才魔法詠唱者という事になる。だがそれよりも、やはり気になるのは彼女が自分のアンデッドの気配を僅かでも察知できた事だ。

 

 

(死の宝珠でも違和感は察知できても人化状態の俺からアンデッドの気配まで感じ取る事は出来なかった。なのに、あの子はそれを僅かだが感じる事ができた……やっぱりこれはさっき考えた通りこの世界特有のスキル…『タレント』に関係してるのか?)

 

 

改めて考えるとやはりかなり不思議な事象だ。少なくとも『ユグドラシル』の常識に当てはまらない。一体どういう事なんだと考えていると何かが上空に居る事に気付いた。顔を上げてみるとそこには双子が跳んだいた。

 

 

「油断大敵」

 

 

赤いバンダナを着けた方(ティナ)がそう呟くと双子はモモンガの上へ金属製の大きな網を放る。網は見事モモンガに覆い被さると急に触発されたかの如き勢いで自動でモモンガを網の中へ閉じ込めるよう締まり始めた。

 

 

「コレは…マジックアイテムか?」

 

捕縛鉄線網(キャプティング・アイアン・ワイヤーネット)…飛行系の相手を捕まえるのに便利」

 

「そのまま黙って捕まって」

 

 

聞いたことの無いマジックアイテムだ。モモンガは自分の今の状況よりもそっちの方に興味があった。コレクター魂がくすぐられるがやはり今はそれどころでは無い。直ぐに気持ちを切り替えた。捕縛鉄線網はモモンガを包み切る前に弾かれてしまった。

 

その現象にティアとティナは目を見開いて驚く。

 

 

「嘘…!」

 

「どういう事?」

 

 

これはモモンガが装備しているアイテムの内の1つ、行動阻害効果の無効化という効果によるモノだ。双子はすぐに切り替えて懐から無数の手裏剣やクナイをモモンガに向けて投げ放った。

 

 

「なに…?」

 

 

驚くモモンガはそれら全てをパッシブスキルで弾き返すと地面へ降り立った。双子も少し遅れて地面へ音もなく着地する。

 

彼が驚いた理由は双子の武器だ。

 

 

(クナイと手裏剣は…特殊職業『ニンジャ』を会得しなければ装備出来ない。あの2人が放ったのは間違い無くそれだ。だが…どういう事だ?上位職である『ニンジャ』は最低でもレベル60は無いと得られない職業のはずで、あの2人はどう見てもレベル22……『ニンジャ』を会得するにはあまりにもレベルが低過ぎる)

 

 

『ニンジャ』職で覚える特殊技術(スキル)の中にはモモンガでさえも無視出来ない強力なものから厄介でいやらしいモノなど多くて存在する。それは弍式炎雷と何度か行ったPvPで嫌というほど体験している。

 

モモンガが警戒しているのは本来必要な過程を踏まず高位の職業を会得出来るという事象であった。レベル条件などを満たさずともそういった事が可能と言うのなら、『神聖騎士(ディバインナイト)』や『祓魔師(エクソシスト)』と言ったアンデッド系にとっては天敵とも言える職を低レベルながら会得している者がいる可能性も十分にあり得る。

 

 

(益々ワケが分からん…どうなってるんだこの世界は?)

 

 

モモンガが悩んでいると前方からガガーランと金髪美女の女神官戦士のラキュースが迫って来た。2人は各々が持つ武器を構えモモンガに向けて振り下ろす。ラキュースの武器は漆黒の刀身に夜空の星を思わせる輝きがある両手剣で、モモンガは瞬時にアレが並大抵の武器では無い事に気付いた。

 

 

「オラァ!!」

 

「ぜぇや!!」

 

 

互いの息を揃えた見事な連携攻撃だった。互いが互いの繰り出した攻撃の前後の僅かな隙を埋めるように攻撃を繰り出している。それも邪魔にならない程度の絶妙な距離感を保ったままでだ。

 

 

(信頼と経験あってこその芸当……っていうか本当にコイツら何者だ?)

 

向こうはこっちが何者なのか知ってる…とは言っても勘違いなのだが、そもそもの話モモンガは彼女らが何者なのかしらない。圧倒的レベル差と膂力にモノを言わせた反射神経で全てを躱し続けながらモモンガはふとそう思った。自己紹介の最中イビルアイに邪魔された為、よく分からないまま戦っている。

 

やはりここは無理矢理でも戦いを止めさせる必要があるらしい。

 

 

「あの!どうか話を聞いー」

 

「射出!!」

 

 

モモンガの言葉を遮り、ラキュースが肩の周囲に滞空していた無数の浮遊する剣群(フローティング・ソーズ)を撃ち出してきた。その隙にガガーランが刺突戦鎚を振り上げて飛びかかって来る。

 

 

「あーもう!いい加減にしてくれ!!!」

 

 

モモンガは話を聞いて欲しいのに聞いてもらえない事に段々と苛立ちが募る中、半ば強引に撃ち出してきた浮遊する剣群全てをキャッチした。

 

 

「嘘ッ!?全部受け止め…え?掴んだ?」

 

 

目の前で起きた信じられない出来事に驚愕するラキュース。そこへモモンガの頭上に容赦なく振り下さられるガガーランの刺突戦鎚。しかし、モモンガはキャッチした浮遊する剣群を放り捨てると、ガガーランの刺突戦鎚を片手で受け止めた。

 

 

「なにィ!?」

 

 

驚愕するガガーラン。

自身の一撃を軽々と片手で受け止める人間は初めての体験だった。

 

 

「ガガーランの攻撃を片手で?」

 

「ガガーランに青の血が流れてるなら、あの男は緑色?…いや、黒色?」

 

 

振り下ろされた時の衝撃はモモンガが立つ地面の周囲を凹ませて砕く様に広がる事からその渾身の一撃がどれ程のものか分かるだろう。ガガーランは掴まれた刺突戦鎚を直ぐに引き抜こうと引っ張るが、武器は微動だにしない。限界レベルに鍛え抜かれたガガーランの力を以てしても動かす事も敵わないモモンガの膂力に周りは唖然と眺めるしかなかった。

 

 

「だから話を聞いー」

 

「クソ!!」

 

 

ガガーランは刺突戦鎚を諦め、手を離すと鍛え抜かれた身体を武器に握り固めた拳をモモンガの頭部目掛け殴り付けた。直撃を受けたモモンガだが特にダメージを受けたわけでも無く、殴り付けてきたガガーランの拳も掴むとそのまま持ち上げ、勢い良く地面へと叩き付けた。

 

 

「は・な・し・を……聞けェェいい!!!」

 

 

地面が大きく凹むほどの衝撃。

幾らガガーランほどの肉体を持つ戦士でも到底無事で済む筈がない強烈な一本背負いである。

 

 

「がっ!?」

 

 

伊達に鍛えていない為、気絶こそしなかったがとてもマトモに戦えるほどの無視して良いダメージではなかった。ただ叩きつけられただけのたった一撃で再起不能となってしまった。

 

 

「ガガーラン!!」

 

「ヤバイ」

 

「うん、ヤバイ」

 

 

直ぐに反応した双子ニンジャはモモンガを警戒しながらガガーランに何か回復薬のようなものを与えていた。モモンガとしては別に彼女をこれ以上痛め付けるつもりは毛頭無い。ただ向かってくるなら話は別になる。

 

 

「《砂の領域(サンドフィールド)(ワン)》!!」

 

 

イビルアイはモモンガの周囲に砂嵐を形成させた。行動阻害効果を持つこの魔法は彼女が使える魔法の中で最も高位である第5位階魔法の1つだ。

 

 

「今だ!ラキュース!!」

 

「えぇ、分かっー」

 

「チカラの暴走に気を付けろよ!!」

 

「ッ!?え、えぇ!も、勿論よ!」

 

 

一緒動揺するラキュースは直ぐに気持ちを切り替え、持っていた両手剣を構え始めた。

 

 

「はあああああ!!!!!」

 

 

両手剣に魔力を注ぎ込む。刀身に浮かぶ夜空の星の如き輝きが徐々に増し、刀身が暗黒の光の塊となって膨れ上がる。エネルギーを貯め切ったラキュースは両手剣を横薙ぎに振った。  

 

瞬間、イビルアイは《砂の領域・個》を解除する。砂嵐が消えた場所にはモモンガがさっきの何ら変わらない様子で佇んでいた。効果が無いことに軽くショックを受けながらも、かなりの距離まで接近したラキュースの一撃を避ける事は出来ないと言う確信もあった。

 

 

「超技!!暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレードメガインパクト)ォォォ!!!!!」

 

 

次の瞬間、刀身から無属性エネルギーの大爆発が発生した。ユグドラシルでも見たことの無い武器とその効果に驚きながらもモモンガはその一撃と爆発範囲を跳び超え避けてしまう。

 

 

(避けられた!!)

 

 

ラキュースは瞬時に体の向きを変え、モモンガへ対峙。2人の立ち位置がさっきと逆になる。

 

 

(なんだ今の?技名は痛いけど凄い攻撃モーションだな技名は痛いけど)

 

 

ユグドラシルですら見たことの無い攻撃モーションを持つ魔法の大剣に興味津々のモモンガ。そんな疑問に思わぬ形で答えたのはラキュース本人からだった。

 

 

「よく我が魔剣キリネイラムの必殺技を躱したわね!」

 

「魔剣キリネイラム?…」

 

 

どこかで聞いた事がある。

確か誰かが探していたような。

 

 

(『漆黒の剣』のメンバーが探している4本ある伝説の魔剣…その内の1つが確かそんな名前だった!…あれ?でも1本は既に誰かが見つけてそれで…その誰かは……)

 

 

モモンガはその考え付く答えを口にした。

 

 

「もしかして……『蒼の薔薇』?…アダマンタイト級冒険者チームの『蒼の薔薇』ですか?」

 

「え、えぇそうよ。え?なに?知らなかったの?」

 

 

困惑気味にラキュースが是正した。

まさかの同業者に衝撃を受ける。あの農地の火事を起こした犯人が彼女たち『蒼の薔薇』ならばなぜこのような事を?

 

 

(何度も『八本指』だの『六腕』だのと…国内に蔓延る巨大な裏犯罪組織の名前を口にしていた事から察するに、それを撲滅しようとしていたのか?それともそれを狙う何者かからの依頼を受けているのか?)

 

 

相手が同業者であるならば尚の事この争いは不毛だ。どうやら向こうはこっちを犯罪者扱いしているようだから何とかして鎮めなければならない。

 

 

(さっきのガガーランとか言う男女みたいに地面に優しく叩き付けるか?)

 

 

色々と考えている内にラキュースが動き出した。

 

 

「何を言うかと思えば油断を誘うつもり?そうはいかないわ!」

 

 

ラキュースが地面を踏み込んで跳び掛かろうと身構えた。

 

次の瞬間、彼女の足元の地面がビキビキと嫌な音を立てながら崩れ始めてしまう。

 

 

「しまっー」

 

 

彼女が立っていた場所はさっきまでモモンガが立っていた場所。そこはガガーランの渾身の一撃や自身の魔剣キリネイラムの必殺技(笑)によって抉られるなどを受け、崩落してしまったのだ。しかも彼女の背後は崖となっている。打ちどころによっては命に関わりかねない程度の高さだ。

 

 

「ラキュース!!?」

 

 

崩落の揺れによりバランスを崩したラキュースは崩落から逃れる間もなく崖へ落ちて行く。仲間が直ぐ救出に動くが僅かに間に合わない。

 

ラキュースは身を縮み込ませ目を瞑り、いずれ来る衝撃と痛みに備える。

 

 

「くっ!…………え?」

 

 

しかし、それはいつまで経っても訪れない。それどころか気が付けば抱きかかえられている抱擁感と僅かな浮遊感を感じていた。ゆっくりと目を開けた先にいたのは……此処では珍しい黒髪に整った顔立ちをした何処か幼さを感じさせる青年の顔があった。

 

 

「まさか崩れるとは…お怪我はありませんか?」

 

「は、はひ…」

 

 

ラキュースは自らの心の臓が激しく締め付けられる感覚を覚えた。こんな感情…今まで感じた事がなかった。

 

モモンガとしては見た目が危ない雰囲気を醸し出しているからと閃いて咄嗟に兜を取っただけなのだが、経緯はともかく本来の目的は何とか達成出来そうだった。

 

 

「鬼リーダーを助けた」

 

「鬼リーダー助けられた」

 

「なぁ…イビルアイ。今更言うのもなんだがよぉ、アイツ敵じゃ無えんじゃねぇか?」

 

 

仲間から貰ったポーションで何とか傷を治癒したガガーランが訝しげに仲間の1人であるイビルアイへ尋ねる。

 

 

「だ、だが!アイツからは確かにアンデッドの気配がしてる……そ、そうだ!し、してるん…だ」

 

 

段々と声に自信が無くなるのがわかる。イビルアイからしたら兜の下は戦士のカモフラージュをした『六腕』の1人にしてエルダーリッチである〝不死王〟の悍ましい素顔が現れるとばかり思っていた。

 

だが実際はどうだ。

兜の下は黒髪の好青年ではないか。

 

普通の人間だ。とても『八本指』と繋がりのある人物とは思えない。

ならば何故彼からアンデッドの気配がしたのだろうか。

 

 

(おかしい…絶対におかしい!!そうだ!きっと幻術の類だ!!)

 

 

イビルアイは直ぐに幻術を看破するマジックアイテムを懐から取り出しそれを発動させる。

 

だが彼の容姿が変わることは無かった。

 

本物の人間なのだ。

つまり少なくとも『六腕』の一角、エルダーリッチのデイバーノックではない。

 

モモンガは《飛行》を発動させたままゆっくり地上へ着地する。勿論、彼の両手にはラキュースが抱えられていた。

 

 

「落ち着いてくれましたか?……先ずは私の話を聞いて下さい。」

 

 

モモンガは自分がもう一度何者なのかを『蒼の薔薇』全員に伝えた。




アンケートを取らせ頂きます
何卒ご協力の程をよろしくお願い申し上げます。

ラナーとモモンガの絡み(意味深)は…

  • 必要(ただしNTR路線)
  • 不必要(大した絡みも無し)

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