最近の流行りはニルギリです。
インドの紅茶でスリランカ系に近い味わいです。
同じインドのダージリンやアッサムに比べマイルドな仕上がりになってるので悩んだ際には参考にして頂くのもアリかと思います
「お邪魔する。……なかなかお洒落な喫茶店じゃないか」
「2階はな、1階は冒険者が結構来るから少し荒っぽい」
喫茶店「朱の大輪」は2階建て。1階はよくある酒場の雰囲気だ、しかし2階はゆっくりとした時間を楽しめるように趣を変えている。これは効率的かどうかと言われれば決して効率的とは言えない。どちらも冒険者向きにした方が間違いなく集客は上がる。だがそれを許してしまうと彼らの
「かけてくれ、今トーマスが茶をきっと淹れてくれている」
「準備がいいな、阿吽の呼吸のようだ」
「阿吽?まぁそうだな、頼んでないけどきっとやってくれてるさ」
おいっとアインズは思ったが、オーナーのトムズは見た目通り少々粗暴で雑なところがあるが気持ちのよい男ではある。対照的にトーマスは細やかな気配りが目立つ男だきっと期待通りにやってくれているのだろう。
「しかし冒険者が茶を嗜むってのは珍しいねぇ、いや馬鹿にしているつもりはないが専らお供はエールだろ?」
「夜は飲む事もあるがな、私は元々そこまで飲まん」
口唇蟲の力で飲食可能になってからもサラリーマン時代の名残かどうしても昼間っから酒を飲む事は躊躇われた。それにそんな金があるならユグドラシルに……というのは今更な話だ。
「そうなのか?まぁそういう冒険者がいてもおかしくはないか。むしろアダマンタイトまで成り上がったというのなら納得できるしな!」
ガハハハと豪快に笑うおっさんこそエールこそが至高の友という顔だが……存外に酒はあまり飲まないのかもしれない。
「ただ茶に興味を持ってるのは本当だぞ?産地によって変わる味わいは素晴らしい。最近興味を持ち始めたのが遅すぎたと悔いるばかりだ」
「お、なかなかわかってるじゃねぇか!だがまぁそこは今からでも知れたと思っとこうや!俺だって最近飲んだ茶をもっと早く知ってたら良かったと思う事はあるが明日からでも楽しめるって思えりゃ万々歳よ」
あまりの前向きさに思わず苦笑してしまう……が不快ではない、今のご時世酒場を運営する事は珍しい事では無い、しかしわざわざ喫茶店をメインにしたいと考えるのは珍しい。何と言っても儲からないからだ。
紅茶の歴史は深いが、大きく躍進したと言える時はやはりイギリスで飲まれるようになってからだろう。世界中に植民地を持っていたイギリスで上流階級、そして平民、果ては貧民階級までも茶を飲む事が当たり前になっていた。
当時はイギリスを中心に回っていたと言っても差し支えない時代、植民地――言ってしまえば田舎――の民からすればそれは憧れの象徴だった――はるか東方から伝わった神秘溢れる品、まさにエキゾチックな東洋の神秘――と。
その幻想はまだこの世界では起きてはいないようだ。大国は植民地を所有している国は無く、自国内であからさますぎる格差を行うところもないだろう。
格差があり、憧れの品をという経緯があったからこそ紅茶はイギリス内で広まったのだ。当時の家計簿に当然のように茶葉代が記載されており貧しい家庭までに浸透していた事がわかる。喫茶店などで馴染み深い紅茶に金を出す事もごく一般的だったのかもしれない。
「お待たせ致しました。こちらが巷で噂になっているというチャイになります」
「ありがとう。……茶まで淹れてもらった後で改めて自己紹介をするのもなんだが、モモンだ。突然伺ってすまない」
「いえ、そのような。冒険者モモン様のご高名はかねがね。エ・ランテルで知らぬ者などおりません」
顔はほとんど見たことが無かったためすぐに気が付けませんでしたがとは言えない。トーマスは気づかれぬよう祈りつつカップにチャイを注ぐ。
「あんた有名な冒険者なんだなぁ、強いのか?」
「まぁ……それなりですよ、多少は荒事を経験していますので」
アインズは薄っすらと感じていた事に驚く、エ・ランテルでは最も有名と言っても過言では無い存在になったモモンをまだ知らない者がいたのだ。考えてみればアインズも隠遁した魔術師という設定で当初は動いていた。そういった狭い生活圏内で行動をしている者はいるのだと。
「それよりも突然すいませんね、そのチャイという紅茶にどうしても興味がありまして」
「いやいや、気にすんな。俺らも試飲するところだったんだ。あんたも紅茶に目が無いんだろう?それならかたい事は言いっこなし。おすそわけだおすそわけ」
笑いながらトムズがカップを持ち上げ、ぐっと飲む。
あっとアインズが声を上げる前にトムズが一息に飲み込んでしまう。
「ぐぉおおおおおおおおおお!!!!!なんだこれいてぇ!辛いぞ!!?」
「……何をやっているんだか、あぁモモンさん飲む前に言うのも野暮ですがこちらのチャイという紅茶、スパイスが少なくない量はいっております。勢いよく飲むとこうなりますので気を付けてください」
「ア、ハイ」
そんなような記憶があったので飲む前に少し香りを嗅いで確かめていたのだが……。悲しい犠牲だ。なかなかいい香りである。
「……そうえいばモモンさん、飲まれる時もヘルムを外さないので?」
「あぁ、失礼しました。最近どうにもつけっぱなしでね」
アインズはヘルムを取り、幻術をかけた顔を見せる。
「おや、東方の方だったのですか。そういえば少し前にこの町に来られたのだったのですね」
「ええ、まぁ依頼などでね。ただちょっと顔は隠しているわけではないのですがあまり広めたいわけでもないので……」
何となく、トーマスは納得をして頷く。……漆黒の剣の時もそうだったが幻術の顔はリアルでの鈴木悟だ。平凡な顔立ちで英雄然とした顔とはとても言えない。
「ふぅ~酷い目にあったぜ。おお、モモンさんどうだ?チャイの味は」
いつの間にか復活していたトムズが席に着きなおす。
「いえ、これからのところですね。ただ香りは……やはりスパイスが強く出ていますね。シナモンやクローブなどでしょうか」
「いい鼻してるぜ、あとはカルダモンだろうな」
すぐに判別するトムズも只者ではない。1種類の香りならばすぐに分かるがブレンドされている香りをすぐに当てるのは普通の嗅覚では不可能に近い。
「なるほど、そこまでは分かりませんでした流石ですね」
褒められる事に慣れていないのかトムズはそっぽを向いて照れを隠す。
「香りは独特だが良い。だが……これは」
「ええ、かなりストレートでは持て余しますね。ミルクティにしてもまだ……」
トーマスが頷きながら言葉を続け、ミルクを加える。
「……多少はマイルドになりましたがこれは人を選びますね。抽出の具合にもよりますが、かなり強い」
「不味い訳じゃないんだがなぁ、癖が強すぎる」
「確かに、これ単体で飲んでいる時はともかく他の物と組み合わせる時にはかなり神経を使いそうです」
このアインズの指摘は正しい、チャイは紅茶にスパイスを加えたものだ。すなわち味の主張としては非常に重い。現在楽しまれている紅茶はお茶のように飲むか、何か軽食等と組み合わせて飲むという事がほとんど。
「ん~新商品としてはちっと悩むな。紅茶の良さを消してると言われたら反論できん」
「そうですねぇ……まぁ保留ですかね」
「ふむ……ちょっとアイディアがあるんだが……試してもらってもいいか?」
そう申し出るモモン(アインズ)に二人は顔を合わせた。
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トムズside
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冒険者組合で突然話しかけられた時には驚いたが、話してみるとなかなかこだわりのある男のようでおもしろい。それがアダマンダイト級冒険者モモンの印象だ。
紅茶好きな冒険者がいる と噂になっていた人物も恐らくこのモモンじゃないか?と感じる。何より紅茶好きな奴に悪い奴は
まぁモモン殿が詳しいと言っても本職は冒険者だろう。まさか喫茶店で勉強をしたはずもないし何だったら少し紅茶について教えてやろうと思ったが……今回淹れた紅茶は自分達の試飲でもある『チャイ』だった。初めてという事もあるが非常に癖がある紅茶だ。
信頼できる右腕、店長のトーマスがせっかく持ってきてくれた紅茶だがなかなか使い道が難しいというのが正直なところ。しかし何かしらに突出しているものとは突然使い道が出来るものだ。
しばらく保留をしておいて、また使い道を閃いた時にでも……と仕舞い込もうとしたところで茶々が入る。いやいや全く素人の思い付きだろう、全くもって安直なアイディアすぎる。だがまぁ興味が無いわけでもない……ここでプロとしてのプライドを取るか、素人の意見に踊らされる道化になるか……全くもって簡単すぎる選択肢だ。そりゃあ面白い方を取るに決まっているだろう。
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トーマスside
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オーナーのトムズが気分屋でころころと思いつきで行う事は慣れたものと思っていた。だがどうだろう、まさか素人の意見をすぐに採用するとは。確かにかの冒険者は様々な実績を積んでいる事は想像に難くない。しかし、あくまで冒険者としての実績だ。我々もそれなりにプロとしてやってきた自負がある。ここでころりと唆されていいのだろうか……いいんだろうな、オーナーはそういう人だ。
私も店を運営するためにがむしゃらにやってきた時期はあるが、まだまだ体裁というものを気にして動いてしまっている。もはやそれは性分だから直らない、つまらない見栄だ。だがオーナーは違う、そんなつまらない見栄は無視して突き進む。そんなところに私はひっそり憧れてついてきたのだ。
さて気を取り直し、再度チャイを淹れる準備をしている。冒険者モモン殿よりもらったアイディアは何のことはない非常にシンプルなものだ。
癖があるのならば湯の量を減らし、
いや、果たしてこれは変わるのだろうか。結局ミルクで抽出されるか湯で抽出されるかの違いにしかならないのではないだろうか。まぁまだ茶葉は余っている。新鮮なうちに試みる事は悪い事ではない。やってみた失敗というのも必要だろう。
……ふむ、そろそろミルクを淹れてみるか、このミルクはモモン殿から頂いた少し良いものだという。確かに舌ざわりもよく紅茶との相性も良さそうだ。だが残念だ、モモン殿は知らない様子と見える。ミルクは温めると臭みが出てしまい紅茶の風味に著しい影響を与えると……それがこの方法の一番の問題なのだから。
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「お待たせいたしました、先ほどと方法を変え途中でミルクを加えて抽出したものになります」
「ふむ……、いえまずはありがとうございます。ただの素人に過ぎない私の意見を汲んでいただいて」
「何言ってんだ、正直上手くいく……とは思ってはいねぇ。だけど試した事はない。ならばやるべきだろ?汲んだからには淹れるべきだ」
自分も上手くいくか……は分からないが、この前ナザリックの喫茶店でちょうど質問をした内容だ。仮に失敗してもまぁ問題ないだろう。彼らはプロで自分は素人。逆に言えば成功するほうがおかしいのだ。……あぁ気軽に失敗出来るなんて素晴らしい!
注がれたカップからは臭みは出ていない、なるほど やはり
「……なんだこりゃ!?温めた時、特有の臭みがねぇ……!しかもスパイスを打ち消してねぇ、包み込むような味に仕上がってる……!」
「これは、いえ、モモンさんご存知だったのですか……?」
二人が驚愕した表情をこちらに見せる、いやいや全くそんな事はないんですよ。ただふと思いまして、この世界で低温殺菌のミルクなんて上等なものが果たしてあるのかなぁって。ロイヤルミルクティーといったらミルクを加えて作るのが普通ですしと。
余談だがミルクでは紅茶は抽出はほぼされない。カゼインという成分が邪魔をして紅茶の成分がうまく抽出が出来ないのだ。だが逆に言えば途中でミルクを加える事で強すぎる味わいを弱める事も出来る。低温殺菌のミルクを使えばより口当たりもまろやかになり調和された味わいになる。
いわばこの世界で現地人が初めてロイヤルミルクティを飲んだ瞬間とも言える、大きな転換点でもあった。
「驚かれるのも無理はありません、これは私が偶然、たまたま、極まれに出現するという商人から買えた特別なミルクです。まだ限られた数量しか入ってきていませんが遠からず安定供給されるでしょう」
魔導国のアンデッドによる大量生産でねとは言わない。
「そうか……まだ手に入らないか……いや、でもその間に少しでもアイディアを沸かせねぇとな……。なあ、モモンさん無理を承知で頼みたいんだがそのミルクを売ってはくれねぇか?今すぐ店に出す事はしねぇが少しでも研究してぇんだ」
トムズが諦めきれない様子で呟く。安易にこちらに特徴を聞くのではなく自分で追及していくという姿勢は中々好感が持てる。
「ふむ……、手持ちはこれだけですが預けているものはそれなりの量があります。研究するには十分な量でしょう。しかしそれほどともなればさすがに安価にとは言えません」
「頼む、金ならいくらでも出す……とまで景気の良い事はいえねぇが。出来る限りは工面してみせる」
質が良いといっても所詮はミルクだ、これだけで金貨が積まれるようなものでもない。しかし紅茶への相性は素晴らしいものと体感したせいだろう。オーナーのトムズはもちろん、あれほど冷静だった店長のトーマスも興奮を隠しきれていない。些か軽率な行動とも思えるが自身がアダマンタイト級冒険者――今となってはそれだけの立場ではないが――の信頼性を実感する。一言一言が実に重い。
アインズは口に手を当て少し考える。実際のところこの低温殺菌ミルクを大量生産することはさして難しくない。労働力はアンデッドを使えばいいし何よりネックな鮮度は『保存―プリザベイション―』の魔法を使う事で保管も容易だ。
ではどうぞという訳にもいかない。少なからずナザリックの財を動かす行為のため、何かメリットがないと
ぼんやり考えているとアイディアが浮かぶ。ちょうど相談を受けていた事があった。
「価格は相場で構わない、だが一つお願いがあってね。そちらにも悪い話ではないと思うんだが……」
「なんだ、オーナー権はさすがにちょっと売れねぇぞ?特別会員なら構わねぇけど」
(特別会員……?)
また気になるワードが出てきたが今は別問題、さぁまた電撃訪問でのプレゼンだ。今回はどう転がるだろうか?
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「モモン君、この度はまことにありがとう」
「アインザックさん。始まって数日です。まだまだ分かりませんよ」
アインザックが苦笑をしながら相変わらず慎み深いと呟く。数日後、アインズは冒険者組合のアインザックに呼ばれていた。アインザックは気にしていた問題が一つ片付いたようで非常に機嫌がいい様子だ。
「しかし……君に相談をして正解だった。まさかこれほど早く解決してくれるとは。君の武力については最早疑う者はいないが人間関係についてもこれほど上手く立ち回りを見せてくれるとは。驚かせられるばかりだ」
「大した事をした訳ではありません、私がやった事はいわば緩衝役。冒険者は荒くれ者が多いですからね、実績あるアインザックさんが言って聞かない者も多いでしょう。ですが私も現在の冒険者組合で燻っているように見える者たちが多く感じました、それは少々もったいないともね」
アインザックがカップに口をつけ、ほぅと一息つく。
「正直この問題は時間が解決するとも思っていた。その過程で幾人かの冒険者が生活に困窮することもやむなしとも」
「君がやってくれた事はただ芽が出ていない冒険者を救っただけではない、次なるモモンを育てた事に等しい」
「……虹のモックナックと魔道王陛下の会話でしたか?」
アインザックが鷹揚に頷く。
「やつめ、感慨深そうに話していたわ」
長年の友人を笑うような仕草は素顔だろう、モックナックもそれなりの年齢だったはずだ。アインザックとは友人としての繋がりもあるのかもしれない。普段の敬意に満ちた態度からも一定の信用はしているが、こういった気さくな面も見せてくれるとは信頼してくれるようになったものだと感じる。
すっと表情を切り替えたアインザックが少し沈鬱そうに口を開く。
「……魔道王陛下のお考えは私などでは到底及ばない、冒険者組合を切り取り国営にされてからそれなりの時間も経った。モモン君を筆頭に、虹のモックナックもハーブの有効利用に尽力するなど着実に結果は出てきている……しかし」
「例えが悪い事は承知で言わせて頂くがやはり若い冒険者を中心に目標を失っているようには感じられた」
アインザックの指摘は概ね間違っていない。今まで冒険者の形は言ってみればRPGゲームに近い。安全に倒せるモンスターを倒しながら金を集めさらなる強敵へと挑む。すなわち目標とは凄腕の冒険者でなければ倒せないようなモンスターを倒すような事だ。
非常にわかりやすい目標であり、多くの者たちが強敵と戦いさらなる強敵と名声を求め金策に勤しむ。だがそんな状況は魔導国が出現し一変、新たな冒険者のスタイルを確立させた。
アインザックが立ち上がり、用意されていたポットからおかわりを注ぐ。
モモン君はという顔を見せたので頷いてもらっておく。どうだ美味いだろうこの紅茶は。ダージリンといってな……いや違う。違わないが違う。
「勿論、君たちが発見してくれたものは素晴らしいものばかりだ。強大なモンスターを倒す事に比べれば地味に思う者も多いが……まだまだ未熟な冒険者達には大きな力になることは間違いない」
「しかし、やはり分かりにくいのだ。
アインザックから持ち掛けられた相談とは冒険者のモチベーション向上、別の言い方に変えるときっかけ作りでもある。特にアインザックが憂慮していたのは中位の冒険者―銀~白金に差し掛かるくらい―いわば次世代を担う脂の乗った世代だ。
そんな新進気鋭の世代を放置しては、いずれ滅ぶ国と変わらない。では出世のチャンスが無くなったと思い込んでいる者たちにはどういった事を行えばよいか、簡単だ、
例えば同じレンジャーでもアイテムを有効利用し、ヒーラーの負担を減らす――まさに最近見つかったハーブでの手法だ――そうして以前は数日か限度だった探索を1週間行えるようになったというケースもある。これは裏話があり、レンジャーが新たに森司祭―ドルイド―のクラスを得たのではないかという可能性だ。これは副産物に近いが、新たなクラスを習得できる道が開けたとも言える。不人気職とマイナー職はレア職の鉄板だが、一見相対するクラスを組み合わせると魔法剣士のような新たなクラスが生まれる可能性もある。
ナザリックの戦力のせいでインフレしてしまっているが、銀級とは一般的な兵士以上と言われている。それ以上の等級ともなれば一芸に秀でていることが多い。 一芸は必ず持っている者がいる。全員でなくてもいい、少しでも
「目に見えての結果というよりも現在では目標に過ぎませんがね。ではこの後『朱の大輪』に行く予定なのですがせっかくなので一緒に様子を見に行かれますか?」
「そうだな、初日に視察は行ったが経過は気になる。ぜひ同行させてもらおう」
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アインザックside
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「いらっしゃいませ、……おやモモンさんに、組合長ではないですか」
私たちを出迎えてくれたのは『朱の大輪』店長であるトーマスだった。オーナーのトムズに比べてなかなか冷静沈着に事を進め堅実で抜け目ないタイプといえる。
「トーマスさん。先日ぶりですね。いかがですか?景気は」
「そりゃもう、すごいもんですよ。これは新たな喫茶店の形だとトムズが息巻いていました」
そう話すトーマスも負けないくらい興奮している。
「ご無沙汰しています、トーマスさん。それほどまでですか?モモン殿から聞いてはいましたが……確か『ティーハウス』というスタイルでしたか」
「ええ、まさにこれは人種の
そう、今回私がモモン殿に依頼した事とは中位冒険者の実績作りだ。
今まではモンスターに対しどの程度戦えるかといった評価だけで問題が無かった。スケリトルドラゴンを討伐するのにはミスリル級冒険者チームの強さは必要等だ。しかし戦力ならば魔道王陛下の戦力で事足りる。我々こそが出来る事は何か?
それこそが今回のヒントだった。モモン殿はまず知識の共有化を行うべきだと言った。切り札を晒すような真似は愚か者以外何でもない。だがしかし相手は英雄級の冒険者だ。まずは話を聞いた。結果的にはあまりに我々が浅瀬で泳いでいるかを実感する結果となった。
「アインザックさん、現状についてあなたは身近な事しかわかっていない」
「かの聖王国では大変な災禍があり少なくない人数が魔導国にも流れています。かの魔皇ヤルダバオトによる謀りゃ……いえ、暴虐は許されません。であれば我々は魔皇ヤルダバオトの再来に備えなければならない」
「あれほどの悪魔はそう現れないと?ありえないなんてことはありえない」
「知っていますか?聖王国では聖騎士達がかなりの戦力となったそうです。その知識もゆくゆくは広がるでしょう」
「その受け皿は人種の枠組みのみならず種族にも囚われない魔導国の冒険者組合だけしか耐えきれません」
何も言えなかった、特に王国は周辺国家に恵まれ帝国との小競り合いがある程度だった。もはや安穏とした時代の終わりかもしれない。噂に聞くビーストマンの国家が竜王国を滅ぼし、隣接する王国に攻め入る可能性も否定できない。
魔導国の強大な武力があれば問題ない……と正直は思う。だが魔道王陛下だけでなく英雄モモン殿も憂慮している。賢王と英雄。彼らがそれほどまで考えているとならばここは踏み込んでみるしかあるまい……と思えた。
こちらが冒険者への説明をどうしたものかと悩んでいるとモモン殿が助け舟を出してくれる。『冒険者組合は国営事業となりました。何も全てを共有しろとは言わないでしょう、第1位階、第2位階の一部あたりかと』と、ありがたい事だ。アダマンタイト級が主になり進めたとなれば少しは話を聞こうとするだろう。
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アインズside
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「何とか……なったな」
今回アインズが(思い付きで)進めたプロジェクトは場の提供だ。以前はユグドラシルで新たなアップデートがあれば情報サイトだけでなくプレイヤー同士で最新の情報をやり取りしたものだ。特にPVPともなれば情報サイトは罠にもなりうる。
といってもそう難しい事では無い。一から何かを作り上げるから難しくなってしまうのだ。まずは今あるものを有効活用するところから始めればいい。近隣で発見された希少な薬草、聖王国や帝国から流れてきた冒険者、ワーカーの技術、知識。これらは新たな可能性を生みうる。もちろん中位冒険者のステップアップは建前だ。
本当の目的はナザリックの強化にこそある。まだレベルアップ以外での強さの模索は続けている。噂ではそういったステータスや設定関係のワールドアイテムも――永劫の蛇の指輪(ウロボロス)の対極のように極々狭い範囲に特化したものが――あるという。
今回のケースで少しでもレアなクラスが生まれてくれれば自分たちが新たなクラスを取得することができるようになった時大いに参考になる。アンデッドの聖人。森司祭のネクロマンサー。大天使の
「まぁ……少しだけ趣味が入っちゃったけどな」
店から出ようとしたところに看板がある。
『必ず紅茶かを注文するように!店主おすすめ 冒険にも役立つチャイ!』
「まずは飲んでみないと分からないからな」
ありがとうございました
あんまり紅茶とかと関係ない事を書くのは好きではないのですが。最近作業用BGMに色々聞いています。
Library Of Ruina
ENDER LILIES
Miliさんが凄い好き。
そういえば10種の紅茶飲み比べってのがあってやってみました。
全部スリランカのみなんですが全く違う味わいがありスリランカの豊富なバリエーションに驚かされます。