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くまクマ熊ベアー 作者:くまなの

二部開始(仮)

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626 クマさん、タイガーウルフと戦う

本編です。

よろしくお願いします。

 王都を出るときに門番に怪訝そうに見られたけど、わたしは気にせずに王都を出ると、少し離れた場所でくまゆるを召喚する。


「それじゃ、くまゆる、お願いね」

「くぅ〜ん」


 わたしがくまゆるに跨ると、くまゆるは走り出す。

 遅くなるとフィナとティルミナさんが心配するかもしれないから、さっさとタイガーウルフを討伐して、帰ることにする。


「くまゆる。急ぐよ」

「くぅ~ん」


 わたしの言葉でくまゆるは加速する。

 途中でくまきゅうと交代して走り続けたおかげもあって、あっという間に男性から聞いた村に到着する。


「ここだよね」


 わたしはくまきゅうから降りる。

 村の人にくまきゅうとタイガーウルフを勘違いされて、驚かせても困るので、送還する。

 わたしは周囲を見ながら村の中に入る。

 柵などの一部が壊れ、村は静まり返っている。

 嫌な予感がする。

 探知スキルを使って確認する。

 ちゃんと人の反応はある。


「よかった」


 ホッと胸を撫で下ろす。

 どうやら家の中で身を潜めているみたいだ。

 あと探知スキル内には、今のところタイガーウルフや魔物の反応はない。


「さて、どうしたものか」


 このままタイガーウルフを討伐しに行ってもいいけど、村の人に話を聞いたほうがいいかな?

 タイガーウルフの居場所ぐらい知っているかもしれない。

 いくら探知スキルがあっても、探知外では見つけることはできないし、間違った方角へ行けば、タイガーウルフを見つけることはできなくなる。

 どうしようかと思っていると「ギィ~」と音が聞こえてくる。

 音がしたほうを見ると、窓が少しだけ開き、人がこっちを見ている。


「おまえさん、人か?」


 初めて人かどうか尋ねられたよ。

 凶暴なクマに見えたのかな?

 うん、違うって分かっているよ。


「こんな格好をしているけど、人だよ」


 わたしはフードを取る。


「なんだ。女の子か」


 離れた位置で、フードを被っていれば、分からないか。


「なにしに村に来たかわからないが、早々に立ち去ったほうがいい。この村の周辺にタイガーウルフがいる。今朝も現れた」


 だから、家の中に閉じこもっていたのか。

 立ち去ったと言っても、わたしと違って探知スキルを持っているわけじゃないから、近くにまだタイガーウルフがいるかもしれないから、隠れていたのだろう。


「そのタイガーウルフを討伐しに来たので、詳しく教えてくれませんか?」


 わたしは怯えている男性に丁寧に尋ねる。


「お嬢ちゃんみたいな女の子が、タイガーウルフを?」


 えっと冒険者ギルドに来ていた男性の名前ってなんだっけ?


「王都の冒険者ギルドにやってきた男性?」

「スラッド?」

「そう、スラッドさん」


 そんな名前だったような気がする。

 男性は少し考え、家の中に入るように言う。

 家の中には奥さんらしき女性と男の子が1人いた。


「本当にスラッドに頼まれたのか?」

「正確には、王都の冒険者ギルドに来たスラッドさんの依頼をわたしが受けたんだけど」

「それじゃ、嬢ちゃんは冒険者なのか?」

「一応ね」


 男性はわたしのことを上から下へ見ると、頭を抱える。


「まさか、こんな変な格好した女の子が来るなんて」

「あなた」


 女性は頭を抱える男性の肩に手を置く。

 気持ちは分かるけど、そこまで落胆されると、失礼だよ。


「他に冒険者が来てくれたりは」

「しないよ。わたしだけだよ」


 面倒臭いので、口調を崩す。

 わたしの言葉に夫婦そろって、信じられなそうな表情をする。しかも、この世の終わりのような。

 わかっていたけど、酷い。


「別にわたしのことは信じなくてもいいけど、タイガーウルフの情報をちょうだい。どっちから現れたとか、あっちに住み着いているとか、そんな情報でいいから」


 居場所が分かれば、あとは探知スキルで探すことができる。


「タイガーウルフはこの家を出て、まっすぐに行った森にいる」

「ありがとう。それじゃ、行ってくるよ」

「待て」

「何?」


 早く討伐して、王都に帰らないと、フィナが心配するから早く終わらせて、帰りたいんだけど。


「タイガーウルフだけじゃないんだ。一緒にウルフの群れもいる」


 タイガーウルフが引き連れているのかな?


「うん、わかったよ。ウルフも一緒に討伐して欲しいってことだね」


 真剣な表情で言うからなにかと思ったらウルフの群れだった。

 追加料金出るのかな?

 まあ、素材がもらえればいらないけど。


「群れだぞ。嬢ちゃん1人でどうにかなる数じゃないんだぞ」

「追加の依頼料の心配ならいらないよ。その代わりに素材はわたしがもらうから」


 男性はなにを言っているんだ的な表情でわたしを見る。


「ああ、タイガーウルフも倒したら持って帰るから」


 冒険者ギルドに依頼にやってきた男性と、どんな契約になっているか聞いていなかったけど、サーニャさんにタイガーウルフをイベント用に頼まれているから大丈夫なはずだ。


「嬢ちゃん。ふざけているのか」


 男性の体がプルプルと震えている。


「別にふざけてはいないけど」

「お嬢ちゃん。夫はあなたの心配をしているのよ」


 男性の妻が通訳してくれる。

 タイガーウルフだけでなく、ウルフもたくさんいるから危険だと心配してくれたみたいだ。


「大丈夫だよ。タイガーウルフもウルフの群れもサクッと倒してくるから」


 時間がもったいないので、家の外に出ようとしたとき、外が騒がしくなる。


「来るな! 誰か、助けてくれ!」

「あの声は、ダンテ」


 男性が立ち上がり、壁に立てかけてあった槍を手にする。


「あなた!」


 奥さんが男性の腕を掴み、首を横に振る。


「すまない。行ってくる」


 男性は奥さんの手を振り切って、わたしの横を通り、家から飛び出していく。

 その後を、わたしも男性を追うように家を出る。

 探知スキルを使う。

 村の中にウルフ、さらにはタイガーウルフの反応もある。

 くまゆるとくまきゅうを召喚しておけば早く気づくことができたけど、後悔しても仕方ない。


 男性の後を追いかけると、槍を持った男性がウルフに囲まれていた。男性は壊れたドアの前に立ち、家の中にいる家族を守るために槍を振っていた。


「ダンテ!」


 男性が槍を振りながら、ウルフへ向かって走る。

 ウルフは槍を躱し、男性に襲いかかる。わたしは横から氷の矢で、ウルフの体を貫く。体を貫かれたウルフは倒れる。


「じょ、嬢ちゃん?」


 驚く男性の横を駆け抜け、ドアの前で槍を振ってウルフから家族を守ろうとしてしている男性を襲っているウルフも同様に、サクッと氷の矢で倒す。


「ダンテ! 大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。助けに来てくれてありがとう」

「なにを言っている。幼なじみだろう」

「それで、この嬢ちゃんは?」


 家を守っていた男性が、わたしを見ながら尋ねてくる。


「王都から来てくれた冒険者らしい」

「冒険者らしい?」


 男性がマジマジとわたしを見る。

 タイガーウルフの討伐を頼んだら、わたしみたいなクマの格好した女の子が来たら、そういう反応するのも仕方ない。


「2人とも、安全な場所に移動して、ウルフの相手はわたしがするから」

「だが」

「討伐は、わたしの仕事だよ。それにウルフを倒したところを見たでしょう?」

「……」


 男たちは倒れているウルフを見る。


「分かった。頼む」


 男性は頭を下げる。

 ウルフに襲われていた男性は家族を外に呼ぶ。そして、初めに会った男性の家に行くと言う。


「クマを召喚するけど、驚いて武器を向けないでね」


 わたしはそう言ってくまゆるとくまきゅうを召喚する。


「クマ!?」


 男性たちは、現れたくまゆるとくまきゅうに驚く。


「わたしの召喚獣だから、危険じゃないよ。くまゆる、くまきゅう、村の中にいるウルフをお願い」

「「くぅ〜ん」」


 わたしが頼むと、くまゆるとくまきゅうは走りだす。

 わたしは、男性たちが途中でウルフに襲われても困るので、先ほどの男性の家まで護衛をする。


「それじゃ、しっかり戸締まりして、絶対に家の外にでないでね」


 わたしは男性が頷き、ドアを閉めるのを確認すると一番近いタイガーウルフのところに向かう。


 屋根の上を走り、タイガーウルフがいる場所まで、一直線に進む。

 屋根の上から飛び降りたわたしはタイガーウルフの目の前に綺麗に着地すると、タイガーウルフはわたしに向かって吠える。


「悪いけど、倒させてもらうよ」


 タイガーウルフが襲ってくる。

 わたしは闘牛士のように紙一重で躱す。タイガーウルフはすぐに体を反転させると、再度、襲いかかってくる。

 遅い。

 タイガーウルフはジャンプして、大きな口を広げ、わたしを噛みつこうとする。

 サーニャさんに綺麗に討伐してほしいと、頼まれている。

 都合よく、タイガーウルフは口を大きく開けて、体内に攻撃してくださいと言ってくる。

 わたしは氷の矢をタイガーウルフの口の中に向かって放つ。

 まずは一体目と思った瞬間、タイガーウルフは氷の矢を噛み砕く。

 おお、予想外だ。

 氷の矢を噛み砕いたタイガーウルフは、そのまま襲いかかってくる。わたしは躱す。

 村の人には悪いけど、スライムとの戦いではストレスが溜まっていたので、久しぶりの戦いに楽しくなる。

 そんなわたしが楽しんでいるのと反対に、タイガーウルフは吠え、激怒しているらしい。

 タイガーウルフは吠えると、口を開けて再度、襲いかかってくる。

 わたしは後ろにステップしながら躱していく。


「ウォーターボール」


 水の玉を作り出し、タイガーウルフの頭を狙って窒息死を狙うが、タイガーウルフは左右に水の玉を躱していく。

 このタイガーウルフ、強い?

 そのまま襲い掛かってくるので、わたしはタイガーウルフのあご下に、クマさんアッパーをする。

 タイガーウルフの体は宙に上がる。

 そのまま空中で身動きが取れないタイガーウルフに蹴りを入れる。タイガーウルフは地面を転がる。倒れているタイガーウルフの脳天に氷の矢を刺して、止めを刺す。


「ふぅ」


 少し手こずったけど、無事に一体目のタイガーウルフを討伐することができた。



アニメが終わりました。

最後まで見てくださった方は、ありがとうございました。

すでに、知っている方もいるかと思いますが、アニメ二期が決定しました。

たぶん、作者の自分が一番驚いているかと思います。

現状では、なにも決まっていないので、分かりしだい、報告させていただきます。

引き続き、アニメのクマもよろしくお願いします。

アニメ関係のコメントは活動報告のほうに残していただければと思います。


【お知らせ】

申し訳ありませんが、年明けまでに、やらないといけないことがたくさんあり、来週の投稿はお休みにさせていただきます。

楽しみにしている読者様にはご迷惑をおかけします。

また、来年もクマをよろしくお願いします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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