では、正義ヅラして悪のマスコミを叩くネットメディアは、本当に正しい側にいるのだろうか? マスゴミは事件を飯の種にしていると言うが、このような正義を煽り立て、ブログのアクセスを稼いでいるまとめサイトもまた、アクセス数によってお金を稼いでいるではないか。
「マスコミ」とは「マスコミュニケーション」の略語であり、「大衆に向けた情報発信を行うメディア」がマスメディアである。
ネットはマスメディア=マスコミを盛んに非難するが、その一方でネットもすでに誰もが使うメディアとなって久しい。ネットを用いて大衆に情報発信を行う「まとめサイト」や「動画共有サイト」なども、もはや「マスコミ」である。
そのことに自覚はあるのだろうか? まとめサイトなどが事件現場の近隣住民に取材をすることは少ないのかもしれないが、では一方で「犯人は在日」「NHKディレクターと容疑者に接点が」などと、憶測で虚偽情報を垂れ流し続けたことは、迷惑行為では無いのだろうか?
ネットメディア自ら、そうした疑念を提示できていないことに不安を覚える。僕は、京都アニメーションに火をつけた容疑者を生み出したのは、ネットメディアがアクセスアップのために生み出した、「正義」と「悪」という二元論を良しとする考え方ではないかと疑っている。
ネットで生み出された悪を叩く。そのことに疑問を覚えない人たちが、実社会で害を為す。そのことの責任をネットメディアは負うことができるのだろうか? 僕には、未だネットメディアは、その段階にすら達していないように見える。自らもマスメディアであることを理解できず、自分たちが報じることの責任を自覚できていない。
今そこにある「正義」を疑う。こうした凄惨な事件が発生した時期にこそ、それがネットメディアやネットメディアを利用する人たちに求められているのではないだろうか。