有村悠さんをウォッチしているというかネガキャンしているブログとして有名な『ブログ運営のためのブログ運営』に、2013年6月から小説が投稿されている。いつ中断するかと思っていたら、今月から話が急展開し、筆が走り始めた。
ストーリーはあまり伏線がないので、書きためている感じではない。もう4か月以上も続いているけれど、なんの前触れもなく唐突にはじまり、まだ小説のことは一度も説明されていないと思う。
以下はおそらく第1話。
主人公は死を目の前にするとようやく気づくということがある。
「私はワイアードが何でも与えてくれると思って、漠然と画面に向かっていた。これじゃあ何も得られないのは当然だった。現実で行動するために屈強な肉体が必要であるのと同じで、ワイアードでも自ら探索する屈強な頭脳が必要なんだ」
カチェリーナは自らの知性に惑わされていたのである。自分から好奇心を発揮しなければひとつも答えてくれないのがワイアードなのだ。
特徴としては、ツイッターやFacebook、iPhone、Nexus7など、現実のサービスやガジェットが登場する。それらサービスの感想やガジェットの使い心地が語られるなど、ブログとフィクションが混じったメタフィクションでもある。
「電子書籍リーダーとしてもNexus 7は最高峰なのです」
グルーシェンカにうながされ、カチェリーナは震える手で電子書籍を起動してみた。そこに表示される画像には呻るしかなかった。iPhoneと違って文字が潰れていない。1920×1200(WUXGA)の液晶が、書体の輪郭を損ねることなく、そのまま鮮明に映し出すのだ。
「漫画を表示させるとさらに最高ですよ。紙を越えていると思います」
コミックをクリックして見てみると、カチェリーナは雷に撃たれたような衝撃を受けた。スクリーントーンの匂いや、描線の質感がそのまま再現され、その凛とした美には法悦するしかなかった。
「たいしたことはないな。iPhone以外を使うのはあり得ない」
カチェリーナは自分の声が震えているのに気づいたが、抑えが効かなかった。
たぶん電子書籍になったとしても売れるレベルの内容ではないけれど、ブログとしては十分楽しめる。最初のうちは主人公の独白が続いていて読みづらかったが、今月から登場人物が増えてストーリーが動きはじめた。「当然LINEくらいやってますよね」
そう言われるとカチェリーナは硬直した。LINEなどやっているわけがない。だが、やってないとわかると、またグルーシェンカから馬鹿にされるだろう。
「やはり気が変わった。上流の人とだけコミュニケーションしたいので、おまえみたいな下層と関わりたくない」
「まさかLINEすらやってないとか」
正直なところ、ストーリーが動き出してからは読みやすくなったので、すごく楽しんでいる。
ブログにおけるフィクション
ブログのエントリーと並行して小説が投稿されているのは珍しいと思う。kawango氏の『飛翔体とピアピア超会議 - 続・はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記』のようにパロディや二次創作は多いけれど、せいぜい続編がある程度だったりすることが多い。
ネット小説や創作系のサイトではなく、ふつうのブログに何か月も小説が掲載されているのは記憶にない。もちろん私が知らないだけで、小説が投稿されているブログというのは無数にあるとは思うけれど。
今年は、コンビニ店長のプロフィールに書かれたラノベ調のショートストーリーもあった。最近でも、ときどき更新されている。
小説の書き方に関するエントリーがバズっていたように、潜在的にフィクションを書きたい欲求はかなり存在する。ここのところしばらく、なんかわるい霊にとりつかれていたかのごとく、毎日のようにプロフィール欄を更新していたのですが、飽きてきたらしいので、このへんでまとめておきます。
そういえばやまもといちろう氏もCakesで小説を執筆していた。
ブログにフィクションを書いたりするのは、意外とこれから増えるのではないかと思う。