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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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9:奴らは同じような言動をするのでしょうか?

皆さん更新遅くなってごめんなさい:( ;´꒳`;):


いつもありがとうございます!

皆さんのコメントやブックマークを見て元気を貰ってます!


どうぞこれからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡


「はぁ、一応ベッドの上に戻りましょうか····」

体を預けていた椅子から立ち上がると真ん中の牢屋へ移動し内側から少し細工をして鍵を掛けておく。

シーツは綺麗なので、新しく変えられたばかりなんだろう。

このベッドで今まで何が行われてきたのか考えると、眉間と鼻にシワが寄りそうになるのを堪えベッドに横になった。


隠蔽した察知魔法でアイツらの動向を把握しながら、マークのなかった15人にもマークと条件を付与した。

屋敷に入ると、護衛らしき14人のうち12人が屋敷の内外を警護するためバラけていく。

残りの4人が地下へと続く隠し扉へと向かってきていた。


やはりコイツらは護衛か·····面倒なことになったわね。統率が取れた動きからして貴族の私兵かしら。

まさか、貴族がお出ましとは·····本当に腐ってるわね。

·····あぁ、気持ち悪い。ミーニャからの祝福が切れたのか。はぁ、気持ちを落ち着けなきゃ。

大丈夫。大丈夫よ。落ち着きなさいシェリー、私ならできるわ。




隠し扉の前に1人残し、3人が下へ降りてきた。

「で、首尾はどうなっている?上手くいっているのか?」


「えぇ。今頃、娘が拉致されたことを知り、慌ててこちらに向かっているところでしょうね」


「誰かに助けを求められても困るぞ。最近、あの憎らしい兵士長達が嗅ぎ回っているようだからな。お前も目をつけられているのだろう?ここらで手を引いて、違う都市に拠点を移す必要があるな」


「大丈夫ですよ。今回のターゲットにも見張りがついています。もし、助けを呼ぼうと下手な行動したら、そこにいる娘を売って逃げればいいだけだ。あの母親と息子が手に入らないのは惜しいが、命あっての物種ですからね」


「フッ。お前のそういう所が気に入っているのだ。次の都市でもできる限りの援助をしよう。ただ、その為には·····」


「分かっています。気に入られた獲物は優先的にそちらに回しましょう。それと、獲物の調教をご一緒して頂ければと思っております」


「ふむ。お前がそう望むなら、儂も無下にはできんな」


スペースに置いてある椅子に座りながら話す2人を察知魔法で確認する。

話から相手の男が貴族なのは確定した。


男の後ろに護衛が控えるように立っている。なんの武器を所持しているか分からない。

確認したいが、目を開けて身動ぎなどしたら、奴らの関心がこちらに向く可能性がある。

もう少し奴らの事を把握しておきたいし、我慢するしかないな。

それにしても、あの貴族の声·····どこかで聞いたことがある気がする。


「で、今回のメインである女はどのような姿をしておるのだ?」


「髪も瞳も宵闇のような珍しい黒色で、ひとつに纏めて結われている髪は艶やかに腰まで流れており、左から右へ流れた前髪により少し隠れた切れ長な目に、スっと通った鼻、薄くて形のいい唇と全てが艶めかしいんですよ。それに豊満な胸にキュッとしまった腰、手足もスラッと長くて冒険者 にしておくのが勿体ない体つきなんです。冒険者なんてやっているせいで少し日焼けしてますが、息子の肌の白さを見るに屋敷に囲っておけばそのうち綺麗な白磁のような肌になりますよ」


「ふむ。その容姿で気が強い女か·····とても楽しみだよ。前の狐獣人の女は使えなくなったから、場末の娼館に捨て置いたし、次はその女で楽しもうか」


「あの獣人は長く持ちましたね。夫の方は奴隷としてBランク冒険者に高く売れましたし、今頃戦いの最前線に置かれて死んでるでしょう」


「あぁ、あの生意気な男か。目の前であの女を犯したら怒り狂っていたな。あれは笑えたよ。·····そういえば、人質として攫ってきた子供とはあそこで寝ている子か?」


「えぇ。少し強めの催眠剤を使用したようであと1時間は目覚めないとか」


「ほう。どれ、メインの女の子供だ。どのような容姿をしているか見てやろう」


胸くそ悪い会話を聞いたせいで、さらに気持ち悪いのに·····こっちに興味を持つなと叫びたい。

関わりたくもないが、今慣れておかなくては今後が手詰まりになる可能性がある。

はぁ。今すぐコイツらを殺して逃げたいけど、もう少しだけ我慢しなきゃ。

こういう奴らは1人でも逃がすと後々面倒なことになるのよ。でも、触られるのは遠慮したいわね。


兵士の男が牢屋の鍵を開けようと鍵穴に鍵を差し込んだようで、鍵穴に仕掛けた魔法石の衝撃波魔法が発動し、ドゴッという鈍い音がしたと思ったら何かが装飾品などにぶつかったガシャンッガラガラとの音も聞こえた。

たぶん、兵士が吹き飛んで拷問道具が飾られている壁にでもぶつかったのだろう。


「なっ!?何事だ!」


騒ぐ貴族と護衛を後目に、ゆっくり起き上がりベッドに腰掛ける。

部屋に残った貴族とその護衛は、何が起こったか理解出来ず、床に転がって気絶している兵士の男を呆然と見つめて立ちつくしていた。


そんな2人に声をかけずに観察をする。


1人は豪奢な椅子から立ち上がった位置にいる赤地に金の装飾をこれでもかと付けた悪趣味な上着を着たカエルのような顔と醜く肥えた体の貴族だ。腰には、これまた煌びやかな装飾がふんだんに使われたサーベルを帯刀している。


これは実用向きじゃないわね。飾りか·····使えない。


護衛は180cmくらいの背丈に、黒地に銀の装飾が施された見た目重視の軍服の上からも分かるほどの筋肉に覆われた屈強な体つきであるが、敵がいると思われる状況下で視線を外し、呆然と立ち尽くすなんて随分レベルの低い護衛を連れているわね。


腰に帯刀したままの立派な剣は何に使うのかしら?


まぁ、そんなことは置いといて·····やっぱり。

聞いたことがある声のはずだわ。アイツ、前世の私に罪をきせた貴族の1人だ。

確か···伯爵家の次男で独立したが爵位が貰えず、金だけは豊富な男だったはず。

そう、犯罪まがいなことをして金を稼いでいると噂されていた男だ。金はあるが、容姿も性格も優れず、爵位もない事で嫁探しに苦労したと聞いたわね。


前世の私を欲でまみれた眼で見ていたが、地位が低すぎて私に触ることも出来なかった男だ。

はぁ、気持ち悪い。カーナさんをあの時のような眼で見ると思うとゾッとする。

やはり、カーナさんが他の奴らを連れてくる前にコイツら全員殺すか·····


「おい!お前!! お前が何かしたのか!!」

「主様、危ないですので後ろにお下がりください」


煩く騒ぐカエルに、カエルを守るように護衛の男が前に立ち塞がる。


牢の鉄格子越しに喚かれたり睨まれても恐怖など感じるはずもなく、ベッドに腰掛けたまま脚をぶらつかせる。恐怖はなくても気持ち悪さはあるわね。

これ以上近寄られたら吐くかもしれないわ。


どうしましょう。あの男に連れてこられた時間を考えると、カーナさんを見張っている仲間がここに到着するまでにまだ時間があるし·····出来れば一気に片をつけたかったけどしょうがないわね。


「聞いているのか!それとも、まだ自分の置かれている立場も理解出来ず呆けているのか?」


あら。色々考えている間にも、ずっと何か喚いていたのね。


何も答えず、反応も見せない私に先程のことも忘れたのか、気持ち悪くニヤついた顔のカエルと護衛に溜息が出てしまった。


「お前!私が誰か分からんのか!私は伯爵家の者だ!お前のような下民は私のような貴族の奴隷なのだ。貴族の奴隷として働けることを喜び、私に感謝し敬うべきであろう!」


は?このカエルは何を言っているの?

どういう頭をしていたら、その様な愚かな考え方が出来るのかしら。

それに犯罪に加担しているのに自身の身分を明かすなんて馬鹿なのね。


呆れて再度溜息をついてしまう。


カエルは、自身が想像していた反応と違ったことが気に食わないのか、顔を真っ赤にして護衛の男に私を拷問するよう指示している。


厳つい顔の護衛が嬉しそうにニヤつき、床に転がっている拷問道具を物色し始めた。

ご丁寧に一つ一つ手に取りながら軽く説明も付けてくれる親切さを見せながら、醜悪な顔を私に見せてくる。


気持ち悪い。

なんで、こいつらのような奴らは恐怖を煽ろうと行動するのかしら?

その度に醜悪な顔を見せられるこっちの身にもなって欲しいわ。


どんなに恐怖を煽る言動をしても変化がない私に痺れを切らしたのか、カエルが私の目の前でカーナさんを辱め調教してやるとか宣い始めた。

下卑た笑い声を上げながら、醜悪な顔を牢の鉄格子に近づけてくる。

護衛の男も使う拷問道具が決まったようで、苦悩の梨と呼ばれるシルバー製の綺麗な彫刻が掘られた梨型の拷問道具を持って牢屋に近づいてきた。


うん。吐くわね。

腐敗臭どころの話ではないわ。近づかれただけで気持ち悪くなる。

それにしても·····コイツら、やっぱり愚か者なのね。

先程、兵士が牢屋を開けようとして吹き飛んだのを忘れたのかしら?


護衛の男が床に落ちていた鍵を拾い、私に下劣な笑みを向けながら鍵穴に鍵を差し込んだ。

一瞬のうちに後ろへ吹き飛び、受身を取ることもできず壁にぶつかり床に転がった。

動かないところを見るに気絶しているようだ。


「あら。本当に忘れていたのね」


あまりに愚かすぎる行動に思わず心の声が零れてしまった。


「はっ?·····なっなにが·····」


先程まで醜悪な顔をしていたカエルが呆然と立ち尽くし、壁近くに転がっている兵士と護衛の2人を見つめていた。

私の声が聞こえたのか、ゆっくり私へ視線を向けてくる。その顔は少し青ざめており、よりカエルに似てきている。


誰に対しても弱みを見せてはいけない。微笑みに全ての感情を隠し、自身の有利に事を運ぶことが大切。

そう前世の私は叩き込まれてきた。

前世の私は、婚約が決まった8歳から罪を着せられ投獄される前まで王妃教育を徹底的に教えこまれてきたのだ。

その教えは直ぐに消えるものでもない。

既に私の体、魂にも刻み込まれてしまっているものだ。だったら、その全てを使って逃げ切るだけ。

こいつらに気持ち悪さは感じるが、気絶する程じゃない。

あとは、どれくらい冷静に対処できるかだ。



私は気持ち悪さを外に出さないように微笑みを浮かべ、前世の情報を引き出す。

微笑みを浮かべた私と目が合うと、青ざめていたカエルが顔を赤くする。随分忙しい変化だ。


確か·····私が9歳の時、カノリアで人魚が攫われた事件があったわね。

犯人も攫われた人魚も見つからず、その罪も私の行ったこととされたのよね。

攫われた直後に他の人魚達が暴走して呪いの歌を歌ったとかで、兵士と住民の多くが死んだとか·····その為、一時期カノリアへの入国が閉鎖され、経済に多大な影響を与えた事件として教わったのよね。


カエルが私に着せた罪は全て把握している。

その中に人身売買があった。今回の状況も鑑みるに、前世のあの事件の犯人はこいつらだったのでしょう。


ベッドに腰をかけたまま、貴族の近くに転がっている魔法石に向け、構築しておいた魔法発動のキーワードを呟く。

構築内容が容量を超えたようで、発動と同時に魔法石が砕け散った。しかし、人ひとり閉じ込めるには足りたようで、床と同じ材質の柱に囲まれて動けないカエルがいた。


「なっ!クソっ!! 何なんだこれは!お前がやったのか!そんなはずはない!お前のような下民が魔法を使えるはずがない。それに、なんの詠唱もなく構築内容も見えなかったんだ。誰かいるんだろう!出てこい!」


煩く喚くカエルをスルーして、ベッドから立ち上がり牢の外へ出ていく。

他の護衛達が集まってしまうと面倒なため、隠し扉付近に設置しておいた魔法石に近づいて防音魔法を発動させておく。


未だに喚くカエルの手が届かないところまで近づき、声をかける。

「カルジェル伯爵家カール様。もう少し賢ければ長く生きられたでしょうに·····」


「なっ!な、な、何故お前のような下民が私の名前を知っているのだ。はっ!もしや、あの忌々しい兵士長の手先の者達か!」


何を勘違いしているのか、私が会ったこともない兵士長に対して口汚いことを宣っている。

少しすると落ち着いたのか、私に指を指しながら顔を真っ赤にして唾を飛ばし叫びはじめた。

たぶん·····上にいる護衛達を呼ぼうとしているのだろう。


「お前が兵士長の手先だとしても、私を捕まえることは出来ない!何故なら私は貴族だからな。お前らのような下民がどんなに叫び戦おうともこの壁は越えられない。ぐふふ、残念だったな。私にこのような無礼を働いたのだ、お前は私自身の手で壊してやろう!さぁ!さっさとこの柱を退けろ!あぁ、そうだ!お前の母親も私が貰ってやろう」


下卑た笑いを浮かべながら私に命令するカエルの最後の言葉に、殺意が溢れそうになるのを必死に抑えた。

今まで気持ち悪く感じていた視線も臭いも気配も全て消え去り、この愚物のカエルを殺すことしか考えられなくなりそうで感情のコントロールするのが大変だった。

8歳の今の体に引っ張られるように感情のコントロールが難しく感じた。


「ガダーリュ奴隷商とは長い付き合いでしょう?この国では奴隷は禁じられているのに、貴方の所有している屋敷の使用人に奴隷専用の首輪を付けている者がいるのは何故?それも証拠にならないなら、貴方のお兄様にお伝えしましょう。カルジェル伯爵家で貴方が担当している領地の領税を着服していることを。担当している領地で違法博打も行っているわよね。それに·····貴族への暗殺を企ていることは、どう逃れるのかしら?」


情報は少しずつ出しながら、相手を追い詰めるのが常なのに·····前世で得られた情報を半分以上言ってしまったわ。


カエルことカールは、顔を青ざめながら震える手を私に伸ばしてくる。


「な、なぜ、何故お前が、そ、そんなことを知っている?お、お前は·····なんなんだ?」


「ただの下民の小娘ですわ」

ニッコリ微笑みながら伝えると、より一層青くなり尋常じゃないくらい震え始めた。


これ以上このカエルに用はない。

旅の途中にカーナさん達に教えて貰いながら採取して作成した睡眠作用があるお香をたく。

もちろん自身に香りが来ないよう風魔法で空気の流れを調節した。


カエルが眠りについた事を確認して、カエルを囲っていた柱を解除した。

風魔法を駆使し、触らないでカエルとその護衛、兵士の男達を牢屋に放り込むと鍵が閉まっていることを確認した。


色々なところに仕込んでおいた魔法石を回収し、次の行動に移す前に椅子に座り一息ついた。


兵士の仲間の2人はカーナさんを尾行しているようだし·····出来れば先に、兵士の仲間2人を捕まえてしまいたいわ。

護衛達を先に処理して、あの2人に勘づかれても面倒だもの。


キリアさんはたぶん、この屋敷にある犯罪の証拠になるものを探しているのでしょうね。

うーん。先にキリアさんと合流ないし連絡しておく方が今後動きやすくなるかしら。

でも、どうやってここから誰にも見つからず脱出か連絡すればいいかしら?


察知魔法で他の護衛達とキリアさんの動きを確認しながら今後の動きを考え、椅子に体を預け、掌に色とりどりの魔法石を転がした。


ありがとうございました!

まだ、カノリア編続きます( *´꒳`* )


どうぞこれからもよろしくお願いします٩(ˊᗜˋ*)و

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