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【WEB版】この冒険者、人類史最強です ~外れスキル『鑑定』が『継承』に覚醒したので、数多の英雄たちの力を受け継ぎ無双する~  作者:日之影ソラ

第二章

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36.犯人はお前だ

 時間が経過する。

 半日と少しの間、俺たちは部屋から出ない。

 部屋の中にいるのは、俺と弟子たちだけだ。

 他は誰も入れない。

 真実にたどり着くまで、決して動くことはない。


 そして――


「お待たせしました」


 ガチャリと扉が開く音に、外で待機していた二人が振り向く。

 部屋から出てきた俺たちに、アレクセイが尋ねる。


「わかったのか?」

「はい」

「本当か? 一体誰なんだ?」


 グリアナが食い気味で質問してきたが、俺は首を横に振る。


「まだ明かせません。どこで誰が聞いているかわかりませんから」

「そ、そうか……ならばどうする?」

「動くのか?」

「いえ、おそらく勝手に話が進みますから」


 俺たちは待っていれば良い。

 現状が変化し、必ず動き出す。

 俺たちを……いいや、俺を殺すために。


「皆さん!」

「ドレークさん?」


 良き絶え絶えで駆け寄ってくるドレーク。

 危機迫る表情に、俺たち全員の緊張感が高まる。


「何かあったんですか?」

「た、大変です! この場所が奴らにバレてしまいました」

「なっ、それは本当ですか?」

「はい。シェルターの二か所から感染者が押し寄せています」


 地下シェルターの入り口は七か所。

 うちの二か所が襲撃に合い、そこから感染者の群れが押し寄せている。

 すでに地下へ侵入を許してしまったことで、多くの人が感染し狂人と化している。


「早く逃げなくては! ここもすぐに感染者が」

「落ち着いてください。逃げても外は霧です」

「で、ですがこのままでは!」

「我々にお任せください! ユーストス殿、二手に分かれて迎撃しよう!」


 グリアナがそう提案してきた。

 好都合だ。

 俺は頷き、さらに提案する。


「でも、迎撃するだけじゃダメです。場所がバレた以上、一刻も早く本体を探す必要がある」

「そ、それなら私に心当たりがあります!」


 そう言ったのはドレークだった。

 俺は彼に問う。


「本当ですか? 場所は?」

「街の大聖堂です。あの場所から感染が広まったと聞いたことがあります。ただ……あの場所は地下とつながっていないので、一旦外に出なくては」

「なるほど。だったら俺が行きます」

「ユーストス殿?」

「まさか一人で行くつもりか?」


 驚くアレクセイとグリアナ。

 二人には詳しく説明していない。

 タイミング的にも、改めて説明している時間はない。


「はい。皆は迎撃に専念してください」


 察してくれ。

 と、心の中で叫ぶ。

 言葉ではハッキリ伝えられない

 表情と、流れから俺の意図を予測してほしい。


「わかった」

「団長?」

「本丸は彼に任せよう。我々はこのシェルターを死守する」


 アレクセイが視線で訴えかけてくる。

 良かった。

 どうやら彼には意図が伝わったらしい。


「アリア、ティア、マナ、お前たちも頼むぞ」

「うん!」

「任せてください」

「大丈夫」


 突破された二か所の入り口。

 アレクセイとグリアナが北側へ向かい、アリアたち三人が西へ向かう。

 俺はドレークと一緒に、一番近い出入り口から外へと出る。


「こちらです!」


 霧は濃く、視界を妨げる。

 ドレークは壁や床を確認しながら、道を間違えないように注意している様子。

 走れば逸れてしまうから、慎重に歩いていく。

 その道中、彼は突然語りだす。


「ユーストスさんは神様って信じますか?」

「何の話ですか?」

「存在するのかって話ですよ」


 彼は歩みを止める。


「私はいないと思います。だって、こんな状況でも救いの手なんて差し伸べられない。本当に神様がいるのなら、きっと今頃助けの一人でもよこしています」

「……何が言いたいんですか?」

「いやいや、つまりですね」


 そうして彼の姿は霧に紛れる。

 より一層濃くなった霧が、俺の視界を真っ白に変える。


「同情しているんですよ。貴方に」


 声が聞こえたのは後ろからだった。

 気配はなく、意識外から迫る脅威。

 死角をつかれた俺は、反応することが出来ない。

 ただし――


「そう来ると思ったよ」


 事前に備えがある時点で、彼の刃は届かない。


「なっ!」

「大当たりって感じか」


 背中の魔法陣が反応した。

 これは攻撃を一度だけ跳ね返すことが出来る。

 不意打ちをされることは予想できていたから、あらかじめ身体中に仕掛けてあった。

 それによってドレークのナイフが弾き飛ばされ、彼自身と後ろへ飛ばされた。


「初めまして、でいいよな? 呪いの王の眷属」

「……なぜだ? なぜわかった? いいや、一体いつから気付いていた?」


 ドレークの顔つきが変わる。

 人の好さそうな人相だったのに、目の色が真っ赤に染まって恐ろしさが増す。

 俺を睨むその眼から、呪い殺してやろうという気迫が伝わってくるようだ。


「しいて言えば最初からだ」

「最初……だと」


 そう。

 最初から怪しいと思っていた。

 だってそうだろう?

 今だって同じだ。

 この霧は、手練れですら周囲の気配を感知できなくなる。

 認識疎外の効果をもつ霧の結界。

 俺も、アレクセイたちも、迫りくる感染者に気付けなかった。

 それなのに……


「お前は迷うことなく俺たちを見つけた。その時点で、お前だけは見えていたんだろ?」

「っ……ちっ」


 大きな舌打ちが響く。

 

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