2020年12月31日 公開

国際教育の未来とは?インターナショナルプリスクール事情を国際教育評論家が解説

学習指導要領改訂で小学生の英語教育が義務化になるなど、国際教育はいま変化の時を迎えています。それに伴い、注目を浴びているのがインターナショナルプリスクール。国際教育を取り巻く環境の変化を国際教育評論家の村田さんに伺いました。

2020年から始まった新学習指導要領。英語が必修化されたことで、早い時期から英語教育や国際教育を考え始める家庭も多いでしょう。

国の教育方針がなくとも、今はボーダーレスの時代。海外との垣根はなくなりつつあり、これからの時代には国際的に通用する人材が求められています。独立行政法人日本学生支援機構の2018年調査によると、日本人の海外留学者数は115,146人(対前年度比9,845人増)。年々、増え続けており今後も増えていくでしょう。

今後、国際教育を取り巻く教育環境はどうなるのでしょうか?今回は国際教育評論家である村田学氏に今後の国際環境について解説していただきます。

インターナショナルスクールの経営にも携わっていた村田氏から、インターナショナルスクールの実態や未来の話もお聞きしました。

村田学

アメリカ生まれ、日本育ちの国際教育評論家。学校事務などを経て、2012年4月に国際教育メディアであるインターナショナルスクールタイムズを創刊し、編集長に就任。
その後、都内のインターナショナルスクールの理事長に就任し、学校経営の実務を積む。その後、教育系ベンチャー企業の役員に就任、教育NPOの監事、複数の教育系企業の経営に携わりながら、インターナショナルスクールの経営とメディア、新規プロジェクトの開発を進めている。

メディア実績:日本経済新聞、フジテレビ『ホンマでっか!?TV』、日本テレビ『スッキリ』、TOKYO FM TIME LINE ゲスト、ニッポン放送、プレジデント、プレジデントファミリー、朝日新聞AERA、小学館HagKum、帰国便利帳などコメントと記事多数掲載。

幼児教育の変化が激しくなる

小山:今日はよろしくお願いします。いきなり本題から入りたいのですが、今後の国際教育を取り巻く環境はどのように変化していくのでしょうか?

村田:2020年の学習指導要領が改訂されました。小学校や中学校の教育環境も変化していますが、教育施設の変化が激しいのは実は幼児教育です。

小山:幼児教育に英語や国際教育が入ってきているということですか?

村田:もちろん、それもあります。幼児教育においてもバイリンガル教育や英語教育は非常に重要なキーワードです。しかし、幼児教育は英語教育以外にも変化が起きています。

小山:英語教育以外にもですか?

村田:東京都内における幼稚園の利用率は実は下がっています。(※1)「子供を預けられない」という声があるため、気づかれにくいですが幼稚園の競争は激しくなっているのです。そこで、各幼稚園は国際教育やモンテッソーリ、国際バカロレアに沿ったアクティブラーニングなど特色ある教育カリキュラムを用意するようになりました。

小山:国際教育だけではなく、幼児教育そのものが各施設によって独自性を出しているということなのですね。保育園も同じでしょうか?

村田:保育園も認可と認可外の垣根が少しずつなくなってきてますよね。今は認可の条件を満たしていても自由度が高い認可外保育園として運営するところも出てきています。特にフルタイムで働く両親がいる家庭では延長保育が充実している認可外の人気が高まっています。

小山:認可外保育園であれば独自性を出しやすいと。

村田:そうです。認可外は特色を出しやすく国際教育を取り入れている保育園も多くあります。最近では企業主導型保育が増えてきています。私の実感では企業主導型保育には英語をはじめとした国際教育を取り入れている保育園が多い印象です。

※1:東京都総務局「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」(各年1月1日現在)、東京都総務局「学校基本調査報告」、東京都福祉保健局より

幼児から英語を学ぶメリットとは?

小山:幼児教育で英語を取り入れる施設が増えたのは学習指導要領の改訂があったからでしょうか?

村田:学習指導要領の改訂は大きなきっかけです。また、そもそも言語を学ぶには早いうちが良いと言われています。脳や耳を早いうちから英語に慣れさせておくことは言語の習得に効果的です。

小山:早い時期から英語を学ぶメリットは他にありますか?

村田:本質的には英語や国際感覚を身につけながら成長を遂げることです。一方で、現実的にはその後の受験に良い影響があることも大きなメリットでしょう。

小山:その後というと高校や大学受験ですか?

村田:高校受験や大学受験はもちろんです。今は私立中学校の受験でも英語教育を科目に入れている学校もあります。英語でプレゼンテーションができると優遇される学校も。今後、ますます中学校受験から英語が必要になっていくでしょう。

インターナショナルスクールで学べることは英語だけではない

小山:英語や国際教育の最たる教育施設がインターナショナルスクールだというイメージがあります。しかし実態をわかったいない方も多いと思います。インターナショナルスクールとはどのような場所なのですか?

村田:インターナショナルスクールは「主に英語で授業を行う外国人生徒向けの教育施設」です。日本人も入学できる学校があり、外国人生徒と英語で授業を行うため、英語力や国際感覚が身につきます。

小山:幼児からインターナショナルスクールに通う子供は多いのでしょうか?

村田:幼等部(インターナショナルプリスクール)に通わせる家庭は多いです。小学校以上だと学費の問題と義務教育課程から外れてしまうという問題があります。しかし、幼等部はそもそも義務教育ではないですし、学費も小学校相当のスクールよりも安いです。

小山:やはり英語を学べるというのがメリットですか?

村田:英語で授業を行うので、英語を耳から覚えられるのは大きなメリットです。しかし、それだけではありません。各国の生徒と一緒のクラスで過ごすため、文化の違いを学べるのも大きなメリットです。

小山:国際教育は言語だけではないということですね?

村田:そうです。各国の文化や言語の違いを子どもの頃から肌感覚で身につけるのは非常に大きいです。海外に行ったことのある方なら、文化の違いに戸惑う経験はあるのではないでしょうか。幼い頃から文化の違いを受け入れて認め合うことで多様性を知り、国際感覚を身につけた子どもへと成長していきます。

インターナショナルプリスクールの卒業後の進路は?

小山:インターナショナルプリスクールを卒業したら、そのままインターナショナルスクールに通う子どもが多いのでしょうか?

村田:いえ。大体、70%前後は日本語で学ぶ国公立の小学校に進学していますね。やはり、学費の高さとインターナショナルスクールが一条校(学校教育法に則った小学校)ではないことがネックです。

小山:せっかく英語を学んだのにもったいない気がしますね。学びを継続させるためにはどうした良いのでしょうか。

村田:海外旅行など英語や海外に触れる機会を作ってあげることが一番ですね。今ならオンライン英会話も充実しているので、英語に触れる機会を作ってあげやすいと思います。

インターナショナルプリスクール以外での英語教育は?

小山:インターナショナルプリスクールや英語教育をしている幼稚園に通っていない子供はどうしたらよいのでしょうか?

村田:先ほど述べたのと同じように、英語に触れる機会を作ることです。海外旅行やオンライン英会話に加えてインターナショナルスクールのサマースクールもおすすめです。

小山:サマースクールとは?

村田:インターナショナルスクールは夏休み期間中にサマースクールを開講しています。体験授業形式から本格的な独自プログラムを用意しているところまで様々です。費用も抑えながら英語に触れる期間を作れるのでおすすめです。

英語教育を継続するために

小山:なるほど。きちんと探せば英語に触れる機会は作れるのですね。

村田:そうです。そして、英語は継続的に触れる機会を作ることが重要です。

小山:学習の継続は非常に難しいポイント。悩んでいるご家庭も多いと思います。村田さんとしては継続するためのポイントはどこにあると思いますか?

村田:私が考えるポイントは2つ。「きちんと褒める」ことと「目標を持つこと」です。まず、子どもが学習をしていたら、きちんと見てあげましょう。例えば、オンライン英会話だと子ども1人でも進められます。しかし、放置してはダメです。出来るようになったことを確認して、褒めてあげることで子どものモチベーションは変わります。

小山:もう一つの「目標を持つこと」はどういうことでしょうか?

村田:やはり、目標があると人は頑張れますよね。身近なところだと英検。2級を取得すれば受験でもプラスの評価をもらえます。TOEICやTOEFLでも良いです。

小山:やはり資格試験が目標としては良いのでしょうか?

村田:資格試験は一つのわかりやすい指標ですが、資格試験ではなくとも良いです。例えば、「英語の映画を字幕なしで見れる」とか「ロンドン旅行で1人でコミュニケーションを取れる」とか子どもの興味に合わせて目標を設定してください。

国際感覚と多様性を身につける

インターナショナルスクールは都内に多かったが、いま郊外に新設校が増えているという。

「浦和、千葉、静岡、新潟などといった地方都市に次々と新設校ができています。これは、その地域にニーズがあるため。国際教育が今後欠かせない一つの証明でしょう」と村田氏は語ってくれました。

国際教育は単に英語などの言語を学ぶだけではないことを村田氏は強調していました。言語をベースに多様な相手とコミュニケーションを取り、国際感覚を身につけることが今後、重要になってきます。
インターナショナルプリスクールや英語教育をさらに知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

小山直樹 小山直樹  Chiik!編集長。札幌在住。 ライター、フォトグラファーとして大手航空会社など数々のWebメディアや雑誌で執筆。北海道で教育系NPOの立ち上げメンバーとして活動し、高校生を中心に5,000人以上の進路決定やキャリア形成に携わった。現在は、北海道でICT教育やアクティブラーニングを学校に導入するサポートもしている。 みなさんに有益な知育・教育情報を発信していきます!