なぜ人は「最果ての地」へ向かうのか?

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アラスカはゴールドラッシュ時代に開発された無数のトレイルが走る、トレッキング天国でもある。photo/Gentaro Ishizuka
世界中のアングラーの憧れの地、アラスカ・キーナイ半島はサーモン釣りの聖地。遡上が始まる6月頃には、町はサーモンの話題で持ち切りになる。photo/Gentaro Ishizuk
アラスカはゴールドラッシュ時代に開発された無数のトレイルが走る、トレッキング天国でもある。photo/Gentaro Ishizuka
世界中のアングラーの憧れの地、アラスカ・キーナイ半島はサーモン釣りの聖地。遡上が始まる6月頃には、町はサーモンの話題で持ち切りになる。photo/Gentaro Ishizuk
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北の大地に魅せられた写真家&編集者の"アラスカへ行きたい"座談会。

米・アラスカ州に魅せられた写真家石塚元太良と編集者・井出幸亮がアラスカガイド『アラスカへ行きたい』を出版。その刊行を記念して、同じく写真家編集者のコンビで本を作るチームであり、アラスカ経験もある野川かさねと小林百合子がその「最果ての地」の魅力を語った(石塚アラスカ滞在中のため、Skypeで参加)。

井出 
小林さんはかつてアラスカに住んでいたんですよね?
小林 
はい。ニューヨークの大学での留学が終了した後、ビザが余っていたので、動物好きだったからアラスカ大学に入学して野生動物学を専攻したんです。
井出 
星野道夫さんも通った……。
小林 
はい、恥ずかしながら憧れてました(笑)。中学生くらいの頃から読んでましたね。最初はフェアバンクスの大学の寮にいたんだけど、当時はすごく貧乏だったからお金がもったいないと思って、大学近くのホステルの庭を借りてキャンプしてました(笑)。
石塚 
フェアバンクスあたりの内陸部は冬の寒さがすごいでしょ。マイナス50℃とか。あれは日本じゃ体験できないよね。
小林 
私は冬になる前に帰ってきちゃったから、もう一回大学に通いたいくらい。でもやっぱりスケールの違う大自然がすぐ身近にあるのが良かった。サーモンが順番に上ってくるでしょ。キングは6月、レッドは7月、シルバーは8月とか。近所のオジサンがちゃんとその時期にサーモンを釣って持ってきてくれるのを見て季節を感じたりとか。秋はみんな狩猟に行って、ベリーを摘んでジャムを作ったりとか。そういうことを自然にできたのが良かったですね。
野川 
私はフェアバンクスに友達が住んでいて、彼らを訪ねていきました。以前にコロラドで一緒に川下りした仲間で、あんまり働いていない人たちなんですけど(笑)。
石塚 
アラスカは働かない人、多いよね。自給自足みたいな暮らしをしてる移住者の若者とかアーティストがいっぱいいる。やっぱりアメリカ人にとって「ラストフロンティア」というか、開拓精神を刺激する土地なんだろうね。
野川 
彼らが住んでいるところから車で1時間くらい走ったところにトレイルの入口があって、そこから3日間バックカントリーを歩いたんです。その「気軽さ」はすごいなあと思いましたね。
石塚 
自分の責任でどこまでも自然の中に入っていけちゃう場所だから。でも冒険とかそういうことだけじゃなくて、誰でも楽しめる部分もしっかりある。トレイル内のパブリック・ユース・キャビンも、薪ストーブ以外何も置いてなかったり。それってハードル高そうに見えるけど、誰でもスムーズに自然に入っていけるような環境でもあるというか。
小林 
自然とカヌーで川下りしちゃう、みたいな(笑)。1ヵ月も前から色々と用意して……とかじゃなくて、サラッと誰でもそういうことがやれる空気がある。私も初めてテントを張ったのがアラスカなんですよ。必要に迫られて。
井出 
不便だから、自分でやることが自然に増える。自分で発見する楽しみが残されている。まさにラストフロンティアです。今回作ったガイドブックも、あくまで僕と石塚くんの「偏愛アラスカ」だから、これを読んでぜひ現地を訪れてもらって、自分のアラスカ地図を作ってもらいたいですね。
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井出幸亮(左)
いで・こうすけ/1975年大阪府生まれ。編集者行雑誌『PAPERSKY』副編集長を経てフリーランスに。と文化芸術などの分野で編集執筆活動中。

石塚元太良(中左/PC画面)
いしづか・げんたろう/1977年東京都生まれ。写真家アラスカとアイスランドのパイプラインの写真集『PIPELINE ICELAND/ALASKA』(講談社)が発売中。

小林百合子(中右)
こばやし・ゆりこ/1980年兵庫県生まれ。編集者出版社勤務を経てフリーランスに。主な仕事に野川かさねとの共著による山小屋ガイド『山と山小屋』(平凡社)。

野川かさね(右)
のがわ・かさね/1977年神奈川県生まれ。自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉やクリエイティブユニット〈kvina〉としても活動中。

アラスカへ行きたい』
オーロラ、氷河、トレイルウォーク、シーカヤックから先住民文化やゴールドラッシュの遺跡まで。"最果ての地"に魅せられた写真家石塚元太良と編集者の井出幸亮がその魅力をキーワードで徹底的に読み解く、豊富なビジュアルで迫る偏愛アラスカカルチャー・ガイドブック。2,300円/新潮社

アラスカへ行きたい』刊行記念トークイベント 石塚元太良×井出幸亮。8月23日19時30分~、代官山蔦屋書店にて。要予約。

photo/
Koh Akazawa
text/
Keiko Sude

本記事は雑誌BRUTUS784号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は784号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.784
松浦弥太郎の男の一流品カタログ(2014.08.16発行)

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