北の大地に魅せられた写真家&編集者の"アラスカへ行きたい"座談会。
米・アラスカ州に魅せられた写真家・石塚元太良と編集者・井出幸亮がアラスカガイド『アラスカへ行きたい』を出版。その刊行を記念して、同じく写真家と編集者のコンビで本を作るチームであり、アラスカ経験もある野川かさねと小林百合子がその「最果ての地」の魅力を語った(石塚はアラスカ滞在中のため、Skypeで参加)。
- 井出
- 星野道夫さんも通った……。
- 小林
- はい、恥ずかしながら憧れてました(笑)。中学生くらいの頃から読んでましたね。最初はフェアバンクスの大学の寮にいたんだけど、当時はすごく貧乏だったからお金がもったいないと思って、大学近くのホステルの庭を借りてキャンプしてました(笑)。
- 石塚
- フェアバンクスあたりの内陸部は冬の寒さがすごいでしょ。マイナス50℃とか。あれは日本じゃ体験できないよね。
- 小林
- 私は冬になる前に帰ってきちゃったから、もう一回大学に通いたいくらい。でもやっぱりスケールの違う大自然がすぐ身近にあるのが良かった。サーモンが順番に上ってくるでしょ。キングは6月、レッドは7月、シルバーは8月とか。近所のオジサンがちゃんとその時期にサーモンを釣って持ってきてくれるのを見て季節を感じたりとか。秋はみんな狩猟に行って、ベリーを摘んでジャムを作ったりとか。そういうことを自然にできたのが良かったですね。
- 野川
- 私はフェアバンクスに友達が住んでいて、彼らを訪ねていきました。以前にコロラドで一緒に川下りした仲間で、あんまり働いていない人たちなんですけど(笑)。
- 石塚
- アラスカは働かない人、多いよね。自給自足みたいな暮らしをしてる移住者の若者とかアーティストがいっぱいいる。やっぱりアメリカ人にとって「ラストフロンティア」というか、開拓精神を刺激する土地なんだろうね。
- 野川
- 彼らが住んでいるところから車で1時間くらい走ったところにトレイルの入口があって、そこから3日間バックカントリーを歩いたんです。その「気軽さ」はすごいなあと思いましたね。
- 石塚
- 自分の責任でどこまでも自然の中に入っていけちゃう場所だから。でも冒険とかそういうことだけじゃなくて、誰でも楽しめる部分もしっかりある。トレイル内のパブリック・ユース・キャビンも、薪ストーブ以外何も置いてなかったり。それってハードル高そうに見えるけど、誰でもスムーズに自然に入っていけるような環境でもあるというか。
- 小林
- 自然とカヌーで川下りしちゃう、みたいな(笑)。1ヵ月も前から色々と用意して……とかじゃなくて、サラッと誰でもそういうことがやれる空気がある。私も初めてテントを張ったのがアラスカなんですよ。必要に迫られて。

井出幸亮(左)
いで・こうすけ/1975年大阪府生まれ。編集者。旅行雑誌『PAPERSKY』副編集長を経てフリーランスに。旅と文化芸術などの分野で編集執筆活動中。
石塚元太良(中左/PC画面)
いしづか・げんたろう/1977年東京都生まれ。写真家。アラスカとアイスランドのパイプラインの写真集『PIPELINE ICELAND/ALASKA』(講談社)が発売中。
小林百合子(中右)
こばやし・ゆりこ/1980年兵庫県生まれ。編集者。出版社勤務を経てフリーランスに。主な仕事に野川かさねとの共著による山小屋ガイド『山と山小屋』(平凡社)。
野川かさね(右)
のがわ・かさね/1977年神奈川県生まれ。自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉やクリエイティブユニット〈kvina〉としても活動中。
- photo/
- Koh Akazawa
- text/
- Keiko Sude
本記事は雑誌BRUTUS784号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は784号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。