蓬莱の玉の枝
今は昔、竹取の翁というものありけり。野山にまじりて竹をとりつつ、・・・・
日本最古の物語「竹取物語」の冒頭部分である。
この竹から産まれたかぐや姫が月に帰ってしまう物語は、誰もが童話で知っている。
しかしこの竹取物語、古文で読むと味わいがかなり異なってくる。
物語とは作り話と言うことだから、奇想天外な展開は承知の上である。
とは言え、千数百年を経た今日の私達の発想を遥かに超えるのではないかと思う。
例えば「輝くばかりに美しいかぐや姫」を求めて5人の貴公子がやってくる。
姫は、その一人ひとりに驚くような難題を出す。
石作の皇子には、釈迦が使ったと言う「仏の御石の鉢」を探して来たらと言う。
右大臣阿倍御主人には、焼いても燃えない「火鼠の皮衣」を欲しいと言う。
大納言大伴御行には、「竜の首にあるという五色に光る玉」を求めて来いと言う。
中納言石上麿足には、「燕の子安貝」を採ってきてほしいと言う。
もちろん人間が月に行く今日だって、かぐやの望みを叶えるのは困難な話だ。
それでも美しい姫の為に、男どもは知恵を凝らして努力するのである。
果たせぬかな、いずれも空しい結果となるのだが、これぞと言って姫の前に現れた男がいた。
三年の間蓬莱山を捜しようやく「蓬莱の玉の枝」を採ってきたと、くらもちり皇子は言う。
「これやわが求る山ならむと思いて、・・・山のめぐりをさしめぐらして、・・・・・
その山のそばひらをめぐれば、世の中になき花の木ども立てり、・・・その中に、
いとわろかりしかども、・・・この花を折りてもうで来るなり。」
かなり長い苦労話をするのだが、要約は「多分、この花だと思います。」と言うことだ。
くらもちの皇子は「そんなもの、ありっこネェ~」と思いつつ、姫を欺こうとしたのである。
結局、彼に協力して玉の枝を作った玉作りの匠達が押しかけて策は破れてしまう。
男どもはあえなく退いたのだが、今度は時の帝からお召がかかる。
「月の都の者」だから、やがて帰らねば・・」とそれにも応じない。
帝は、月の都からの迎えに対して、2000人の兵士を遣わして守らせたと言う。
しかし、それも無力で帝に天人の持参した「不死の薬」を残し天に昇ってしまう。
帝はかぐやが居ない世を儚んで、天に近い山を探させる。
駿河の国の山が最も天に近いと知って、その山で「不死の薬」の壺を燃やさせた。
物語は「その山をふじの山と名づける。
その煙、いまだ雲の中へ立ち上がるとぞ。」で終わっている。
平安時代の初め頃、富士山は噴煙を上げていたのだろう。
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