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最弱で迫害までされていたけど、超難関迷宮で10万年修行した結果、強くなりすぎて敵がいなくなる~ボッチ生活が長いため、最強であることの自覚なく無双いたします。 作者:力水

第二章 神聖武道会編

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第35話 魔王の苦悩


  四大魔王――闇の魔王アシュメディアの居城――闇城玉座の間


「とても信じられんな。本当に我らの神が負けたというのか?」


 重鎮の一人の疑問に、


『計画が動き出した直後、バルセの街で一斉に不審者の捜索が開始されました。故に、我らはバルセを離れていたので、実際に一連の現場を目にしたわけではありません。ですが、状況からいっておそらくは……』


 黒装束の男の自信なさそうに肯定する声が玉座の間に響き渡る。


「我らの神をも下したのは、やはり、伝説の勇者か?」

「一応可能な範囲で情報収集をしてはいますが、どうやらバルセ全体に事件につき箝口令が敷かれているようで、はっきりしません。申しわけございません」


 黒装束の男は俯き気味に、謝罪の言葉を述べる。途端に、玉座の間の至る所から、焦燥たっぷりの言葉が飛び交う。


「静まれ」


 玉座に座す重苦しい女の声に、重臣一同口を閉ざす。一瞬で玉座の間には耳が痛くなるような静寂と緊張が訪れた。


(じい)はどう考える?」


 黒色の法衣を纏った青色の肌の美しい少女は、脇に控える同じく青色の小柄な老人に問いかけた。


「勇者はいくら強くても人。人では神を倒せませぬ」

「ならば、この事態、どう見る?」

「考えられる可能性は二つ。

 一つ――我らが神を倒したのが神である場合。

 一つ――儀式が不完全で現界したのは神でもなんでもない弱き者だった場合。

 このいずれかですじゃ」

「はぐらかすな。爺はいずれだと考える?」

「仮に我らが神を下す神が現界するようなことがあれば、今頃、我らはこうして呑気に話してなどいられますまい。それが答えですじゃ」

「ふむ、それもそうか」


 老人の断定的な言葉に玉座に座す美少女も大きく頷き、重臣たちから安堵のため息が漏れる。


「何れにせよ儀式の精度を上げる必要がある。そういうことか?」

「はい。異界とのゲートを繋ぐ事には成功しているのです。儀式方法には瑕疵はなく、今回の失敗はおそらく、儀式場自体が不完全だったからに他ありますまい。ならば――」

「新たな儀式場を見つければよい。そう爺はいうのだな?」

「その通りです。今次の儀式場の候補を絞り込んでおりますれば、もうしばらくのお時間をいただきたく……」

「うむ、頼んだぞ」


 玉座に座す青肌の美少女は右の親指と人差し指で鼻根部を触れると、


「まったく、人間どもが異界から勇者などというバケモノを召喚さえしなければ、こんな他力本願的方法に頼ることもなかったものを……」


 疲れ果てたように独り言ちる。重臣たちの顔は、例外なく苦渋に歪んでいた。


「勇者は強い。そして人間どもは我ら魔族という種の根絶を願っているのです。このまま無策で放置しておけば、我ら魔族に待つのはよくて奴隷、最悪、根絶やしですじゃ」

「わかっておる! わかっておるが、憎き人族とは言え無辜の民を巻き込むのはどうにも納得がいかぬのよ」

「王よ。それは――」

「爺、言わんでよい。重々承知しておることだ」


 青肌の美少女は、天井を見上げて瞼を堅く閉じる。

 それを合図に脇に控える重鎮たちも一礼すると玉座の間を退出していく。


「そうだ。余は我が民を導かねばならぬ。例えこの身がどのような汚辱にまみれようともな」


 青肌の美少女の呟きは出口から吹き抜けてくる強風に煽られ掻き消えていく。


 遂に女魔王の登場です。カイと異なり、性格は至極まっとうなようですが。魔王たちもカイという真正の怪物のせいで、計画や陰謀は木端微塵に粉砕されてしまいます。ま、それは人側にも言えることです。この物語で人はけっして善ではありませんから。


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