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追放されたけど、スキル『ゆるパク』で無双する 作者:篠浦 知螺
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うちの子達のためならば、もしかしなくても湖の主とか倒しちゃうぜ

 森の中には草地や湿地もあり、様々な動物や魔物が暮している。

 定番のゴブリン、コボルトもいれば、六本脚の鹿などもいて本当にファンタジーな世界だ。


 探知や鑑定のレベルが上がったし、何よりも身体機能が滅茶苦茶上がっているので俺が危険を感じる事は殆ど無い。

 ただ、サンクとシスが一緒なので、危険度の高い魔物には離れた場所からゆるパクした後、コースを変えて迂回している。


 例えば、小さな魔物の集団がいるだけなのに、なぜかポッカリと魔物も獣もいない場所があった。

 鑑定を使ってみると、コカトリスと表示される。


 鑑定のレベルがあがり、魔物の種類、性質、個々の能力値まで表示されるようになった。

 その説明によれば、石化の能力があるらしい。


「どれどれ、ゆるパク! おっ、来た来た、石化レベル9、石化解除レベル9か……」


 ゆるパクのスキルは、魔法阻害に合わなければ離れた場所からでも有効で、本当に相手に気づかれずに能力の一部をパクれる。

 今回は、三十羽近いコカトリスからゆるパクしたので、レベル9まで一気に獲得できたのだろう。


 石化解除のスキルも手に入れたから、襲われても撃退出来るだろうが、アン達が石化した場合に不測の事態が起こらないとも限らないので、コカトリスの縄張りは避けて通った。

 千里眼を使ってコカトリス達の様子を眺めていると、相手を石化させて倒した後、部分的に石化を解いて食料としているようだ。


 コカトリスの縄張りには、飛び掛ろうとした体勢で固まっているトラのような獣や、恐怖に顔を歪めたゴブリンの形をした石が転がっている。

 たぶん、それらの石も部分的に解除されながら、コカトリスの胃袋に収まることになるのだろう。


 歩き始めて三日目に、大きな湖に辿り着いた。


「待て! みんな戻って、水ならば俺が出してやるから」


 湖を見た途端、走り出したアン達を呼び戻す。

 探知魔法で探ると、湖の周囲や水の中にも多数の反応があった。


「おぉ、スライムか……何か、色んなのがいるな」


 黄緑色のゼリー状でプルプルのいかにもなスライムから、一見すると水溜りに見える平べったいものもいる。

 青いスライムと赤いスライムが混じりあって紫に変化したり、分裂しているものもいる。


「えーっと……一部の肉食種を除いて、殆どのものが草食……食べている草の種類によっては毒性を持つものもいるので要注意か。鑑定……詳細」


 湖の周囲や水の中まで、危険なスライムがいないか詳細に鑑定を進めていく。

 膨大な情報が流れ込んで来そうになったので、安全な情報はカットして、危険を知らせる情報だけをピックアップした。


「危険なスライムは、対岸にいる一部のものだけか……それよりも、問題はこいつか」


 湖の中には多数の魚影と共に、底にジッと身を潜めている大物の反応があった。

 鑑定結果はグリーンサーペント、体長が20メートル近い大蛇だ。


 間違いなく、この湖の主だろう。

 とりあえず、ゆるパクして魔力やスキルの一部を奪っておいた。


「んー……泳いでもいいけど、遠くに行かない。呼んだら、すぐに戻って来ること。いい?」

「ワフゥ!」

「行っていいよ」


 許可を出すと、アン達は湖に向かってまっしぐらに走って行った。

 って、子守は俺に任せきりかよ。


 アン達を追いかけてポテポテと走り出したサンクとシスだったが、ポヨポヨと跳ねているスライムに興味を惹かれたようだ。

 というか、俺もめっちゃ興味がある。


 種類はグリーンスライムだが、食べている葉の影響なのか濃い緑色をしている。

 サンクとシスは、恐る恐る匂いを嗅ごうとしては、鼻先で跳ねられて慌てて後退りしている。

 俺も腕を人化させて、指先で突いてみた。


「おぉぉ、これは……」


 プルプルとして感触はまさにゼリーで、少し強めに押してみると固くなった。

 俺がツンツンと突いて遊んでいると、サンクが俺を真似をして前脚で軽く叩くと、スライムの表面が破れて中身が地面に広がった。

 当然サンクは、飛び上がって後退りしている。


「うわぁ、スライム弱いなぁ……えぇぇ?」


 でろーんと地面に広がった時点で、てっきりスライムは死んでしまったのかと思いきや、核と思われるエメラルドグリーンの球体を中心にして、再び丸い形に戻り始めた。

 サンクとシスと一緒に、じーっとスライムが丸くなるのを見ていたが、元の形に戻った途端ポヨポヨと弾んで逃げていった。


 たぶん、あの核の部分さえ壊されなければ再生できるのだろうが、再生するためにはエネルギーを消費するのだろう。

 ポヨポヨと去って行くスライムを見送り、ふと視線を戻すと、サンクとシスが走り回ってスライムを潰して遊んでいた。


 いや、危険は無いから良いんだけど……なんて思っていたら、サンクとシスに潰されたスライムが集まり始めた。

 一個だけならサンク達の三分の一程度の大きさだけど、三個集まれば同じぐらい、六個集まると倍ぐらいの大きさになる。


 集まったスライムは、核の部分も中央に集まって、グルグルと動き回りながら何やら相談をしているようにも見える。

 合体したスライムが十個を超えた頃、シスの前脚が捕まった。


「キャン! キャン、キャゥーン!」


 どうやらスライムは、ゲル状の体内にシスを引きずり込もうとしているらしい。


「うちの子に、何すんじゃ、ぼけぇぇぇぇぇ!」


 人化のスキルを解いて、火属性の魔法をまとわせた竜人の拳でスライムをぶん殴る。

 撃ち出された真っ赤な火の玉が、一瞬にして核を蒸発させ、スライムはベシャっと粘り気のある液体と化した。


「キャウ、キャウ……」

「おぉ、怖かったなシス、でも、もう大丈夫だぞ。よーしよしよし……はっ! アン、ドゥ、トロワ、キャトル、みんな陸に戻れ!」


 スライムに捕まったシスに気を取られている間に、湖の底にいたグリーンサーペントが動き出していた。

 長い身体をくねらせて、想像以上のスピードで水面を突き破って浮上すると、巨大な口を一杯に開いてトロワに襲い掛ってくる。


「うちの子を食おうとしてんじゃねぇぇぇぇ!」


 飛行魔法を使って、カタパルト発進したジェット戦闘機のような勢いで、火属性魔法をまとわせた拳を突き出し、グリーンサーペントの口の中へと突っ込んだ。

 喉の奥を突き破る抵抗は一瞬で、空中で急制動を駆けて振り向くと、グリーンサーペントの頭は水飛沫を上げて水中へと没していくところだった。


「おっと、殺しちまったら、せめて食って供養してやらないとだな……」


 湖に潜ってグリーンサーペントの死骸を引き上げてくる。

 湖の主を殺しちゃうと、生態系に多大な影響を与えそうだけど、トロワを食おうとしたのだから是非も無しだ。


 ゴーレムに手伝わせて、ベリベリと皮を剥ぎ、必要な分だけ輪切りにして、俺達の食事になってもらう。

 俺が最初に手にしたものは、グリーンサーペントの魔石だ。

 長径が20センチぐらいある楕円形をしている。


 色は綺麗なエメラルドグリーンで、体内にあるだけあってツルンとしていた。

 俺が魔石を手にしていると、アン達が物欲しげな視線を向けてくる。


「後学のために、一口食ってみるか……」


 グリーンサーペントの魔石に歯を立てて齧り取る。

 竜人の牙と顎だから噛み砕けるけど、人間の歯では砕けてしまうだろう。


 硬い飴を舐めずに噛み砕いている感じで、若干の塩味を感じる。

 味については特筆することは無いが、噛み砕いた魔石が胃に落ちていくと、かっと熱を持つように身体に活力が湧いてくる。


 グリーンサーペントが溜め込んでいた魔力が、一気に俺の身体に流れ込んで来るようなものなのだろう。

 魔物にとっては、効き目抜群の滋養強壮剤といった感じだ。


「俺は、自前の魔力があるからいいや」 


 魔石は、砕いてアン達に分け与えた。

 この後、グリーンサーペントの肉を炙って食べたのだが、想像を遥かに超える美味さだった。


 強力な魔物だけに魔力が籠っているからなのか、適度な弾力のある肉を噛みしめる度に溢れる肉汁の旨みが濃厚だ。

 森牛とかキラーエイプとは段違いの美味さで、この肉は取り引きに使えそうなので残しておくことにした。


 食事を終えた後は、もふもふ天国で昼寝を楽しみ、グッスリと眠った後は、水属性魔法を使って魚を獲った。

 ニジマスに似た魚も、アイテムボックスに放り込んでおく。

 というか、俺のアイテムボックスの中って食料ばっかだな。


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