干すだけで変身!キノコの栄養パワー
干すだけで変身!キノコの栄養パワー
ここまで野菜を見てきましたが、天日干しをすることで栄養成分が増えるのは、野菜だけじゃないんです。
それを教えてくれるのは、白衣姿のこの方、森林総合研究所主任研究員 平出政和さん。
キノコ研究の第一人者です。
そう、干すと栄養成分が増えるもう1つの食材とは、キノコのこと!
キノコといえば「日陰で育つもの」というイメージですが、平出さんによると、そんなキノコに日光を浴びせると驚きの変化があるのだそう。
「キノコには、エルゴステロールという物質が含まれているんですけれども、これが紫外線を浴びることによってビタミンDという物質に変換されます。」(平出さん)
ビタミンDは、骨をつくることや筋肉の維持に欠かせないビタミン。
その大切なビタミンD、どれくらいとればいいのか。
管理栄養士 金子明子さんにききました。
「ビタミンDの1日の目安量は8.5μgなんですけれども、平均の摂取量としては6.6μgなので、摂取量が足りてないというところです。」(金子さん)
そう、ビタミンDの平均摂取量は6.6μg。
健康のための目安を1.9μg下回っているのです。
では、天日干ししたキノコを食べると、どれくらいのビタミンDをとれるの?
平出さんの協力のもと、8種類のキノコのビタミンD量を計測しました。
対象は、エリンギ、マッシュルーム、マイタケ、エノキダケ、シイタケ、ブナシメジ、ホワイトブナシメジ、ナメコです。
通常使うカットした状態で、3時間、日に当てました。
第3位は、ホワイトブナシメジ。
第2位はマイタケ
そして、栄えある第1位はエノキダケ。ダントツの数値です。
1位のエノキダケであれば、干しエノキ3.3g分。
1株の3分の1程度の量をとるだけで、不足分のビタミンDを補うことができるのです!
さらに、このエノキダケを干すと、もうひとつ新しい効果が見つかっています。
それを明らかにしたのが、エノキダケについて長年研究している横浜薬科大学客員教授 渡邉泰雄さんです。
「脂肪を減らせるということが、エノキダケのパワーかと僕は思っています。理由は、エノキタケリノール酸が細胞膜のところにくっついて、脂肪を分解させるということが、我々の研究で分かってきたからです。」(渡邉教授)
エノキダケの中には、エノキタケリノール酸という成分が含まれています。
この成分が、肥満の防止と解消に役立つのだとか。
こちらは渡邉教授が行った実験。
男女250名が8週間、400mgのエノキタケリノール酸を摂取すると、2%も体重が減少。
60kgの人の場合、1.2kg減ったことに!
しかし、エノキダケからエノキタケリノール酸をとるにはある難点が…。
実はエノキタケリノール酸は、エノキダケの食物繊維にとじこめられている物質。
エノキダケの食物繊維はとても丈夫で普通に食べるだけでは、なかなか壊すことができません。
「これをいかにとるかというと、まず水分をいかに飛ばしてやるかです。それが「干す」ということになります。「干す」ことによって、はじめてエノキタケリノール酸が効率よくとれるという風に僕は思っています。」(渡邉教授)
エノキダケのほどよい干し加減は、1本の細さがこのくらいになるまで。
この干しエノキを毎日5g、1株の半分程度をとるだけで、肥満防止の効果が期待できます。
料理に使うのも良いですが、渡邉さんおすすめのとり方も教えて頂きました。
まず、干しエノキをできるだけ細かく刻みます。
刻んだ干しエノキを、大さじ1杯強ほど保温容器の中に入れ、
30分ほど置くと、干しエノキ茶の完成!
エノキダケそのものも全部食べちゃってください。
「実はビタミンDは、私たちのカラダの中でも日光に皮膚を当てるだけで、合成して作ることができるんですけれども、食品で取り入れなくてはいけません。それでいちばん効率がいいのは、キノコなんです。干しエノキダケのお茶以外のとり方は、たとえばスープにしたりとか、チャーハンに混ぜたりとか、炊き込みご飯とかもおいしいとり方です。干し野菜、例えば干しトマトでトマトスープみたいにして一緒に頂いてもいいです。」(宇山さん)
干した食材 戻し方のひと工夫
干した食材 戻し方のひと工夫
乾燥した食材を水で「戻す」こと、ありますよね?
実は、そこにもひと工夫が。
教えてくれるのは、乾物料理を研究するサカイ優佳子さんです。
乾物を戻すのに使うのは、ある驚くべきもの。
なんとヨーグルト。
「乾物ってなんとなく、ババくさいとかという風に思う方もいらっしゃるんですけども、ヨーグルトは、白くて朝のイメージですよね。そういうイメージを乾物にまとわせたら、印象が全然かわるのではないかと思って、始めました。」(サカイさん)
戻し方は意外と簡単。
まず、乾物に対し4倍ほどの重さの無糖ヨーグルトを用意。
「ヨーグルトの水分は、だいたい、85%くらい含まれているんですが、それを乾物が吸って戻っていきます。ヨーグルトと接してない部分は水分を吸い取ることができないので、戻りません。なので、よくよく混ぜてあげてください。」(サカイさん)
しっかり混ぜたら、保存容器に入れて冷蔵庫へ保管します。
8時間ほど寝かせて完成。ヨーグルトは流さずそのまま使います。
戻した大根を料理にしたものが、こちら。
納豆とトマトとのしょうゆ味の和え物です。
ヨーグルトを使って乾物のイメージを変えようと始めたサカイさん。
切り干しダイコン以外にもあらゆる食材をヨーグルトで戻したそうです。
「たとえば干しシイタケは、ほんとにつやつやふっくら戻るんです。見た目にも違うくらい厚みが違ってもどるので、たとえばカレー系の味付けにしてたりとかするとすごくおいしかったです。あとは干しワカメ。お安い干しワカメでも、なぜかヨーグルトで戻すとシャキシャキの食感になるんです。これはいいなと思っています。」(サカイさん)