News | 2001年6月29日 11:26 PM 更新 |
科学技術振興事業団の創造科学推進事業(ERATO)で進行中の「北野共生システムプロジェクト」。人工知能学者である北野宏明博士率いるこのプロジェクトから誕生したヒューマノイド「PINO」が,いよいよ表舞台に登場しようとしている。大盛況となった世界初のロボット総合イベント「ROBODEX2000」では,ソニーの「SDR-3X」やホンダの「ASIMO」の影に隠れ,どちらかという地味な存在だったPINOだが,ここに来て動きが活発化してきた。
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2000年4月の発表以来,世界中で注目を集めた「PINO」。目指すは「ロボット界のLinux」(北野博士) |
こうした業務は,研究機関である北野共生システムプロジェクトが行うのではなく,北野博士のほか,PINOのデザイナーである松井龍哉氏などが提唱して今年1月に設立されたZMPが技術移転を受け,PINOの製造までを含めたビジネスを担当するという形をとる。社名のZMPは,2足歩行を実現する生命線である「ゼロ・ポイント・モーメント」の略語からきている。
PINOのレンタル料金は,4日間で150万円(初日と最終日はセットアップおよびメンテナンス)。レンタルキットには,PINO本体,各種コントローラ,ならびにソフトウェアなどが含まれる。買い取り価格は800万円だ。「PINOのパーツは,ほとんどが秋葉原で手に入るもの。そのため,精度はそれほど高くない。逆に言えば,まだまだ改良の余地はあるということ。研究機関や大学の研究室で,より優れたPINOを作ってもらいたい」(北野博士)。
ZMPの谷口恒社長によれば,既に国内外の複数の研究機関や大学からPINOには引き合いがきているほか,7月10日に東京・お台場にオープンする「日本未来科学館」にも2~3体のPINOが納入される予定だという。「2002年以降に展開する第2フェーズとして,PINOで使用しているテクノロジーをモジュール化して提供することも計画している」(谷口氏)。
またZMPでは,PINOのデザイン使用権をラインセンス供与するなど,各種版権ビジネスも展開する。既に,宇多田ヒカルのプロモーションビデオに登場しているPINOだが,このようにメディアへの露出度を高めることでPINOの認知度を高めていく方針だ(ちなみに,プロモーションビデオの中でPINOが車の運転手を演じる場面ではモックアップが使われている。本物だと小さすぎて運転しているように見えないためだ)。
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ツクダが発売する完全2足歩行可能な「ロボットフレンド PINO DX」(左)と廉価版の「ロボットフレンド PINO」(5980円,8月末発売予定) |
最近,2足歩行を謳ったロボット玩具がいろいろ登場しているが,ほとんど“すり足”状態で,満足に歩いているとは言い難い。もちろん,玩具だということを考えればそれでも十分かもしれないが,このPINO DXは「人間のように,歩行時に片足を上げて歩くことができる」(ツクダ取締役開発本部長の佃義啓氏)のが最大の特徴となっている。
さらに,障害物センサーを備え,障害物がある場合は前後左右によけることができるほか,高さセンサーによって,テーブルの縁まで来ると停止またはバックする仕組みになっている。また,音声認識機能を持ち,持ち主(声の登録者)が呼びかけるとそちらに向かって歩いてくるという。ただ残念ながら「現在開発中」(佃氏)とのことで,デモンストレーションを見ることはできなかった。なお,PINO DXの本体サイズは,横幅23×奥行き12センチ×身長45センチ(2/3スケール),材質にはABSを使用している。バッテリーは,単2乾電池×4本。
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記者会見で披露されたのは,PINO DXの廉価版である「ロボットフレンド PINO」のほう。こちらもまだ開発段階で,外部コントローラから指示を送っていた(動画を見る/MPEG-1・約600KB) |
PINO DXの対象年齢は,8歳以上。ツクダは昨年夏頃から2足歩行ロボットの開発に取りかかったが,この年齢層をターゲットにするなら,「子ども同士が戦えるような戦闘ロボットの開発も考えた」(佃氏)という。これは,“人間との共生”がコンセプトのPINOとは正反対の存在だ。
だが,ツクダがペットロボットとして発売した「愛犬マックス」が3歳以上を対象としていたにもかかわらず,20~60代まで幅広く売れたことから,「戦闘に特化するのではなく,人々を癒してくれるようなロボットにしようということになった。PINOは,まさにその象徴だ」(佃氏)。
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