魔物である大蜘蛛からもスキルを奪取できたので、もう少しゆるパクというスキルを検証してみることにした。
まず、植物からもゆるパクできるか、巨木を対象として発動させてみた。
「ゆるパク! おぉぉぉ……」
新しく得られたスキルは無かったが、耐久力と生命力の数値が増えていた。
同じ巨木を対象として、もう一度ゆるパクしてみたが、今度は何も得られなかった。
三回、四回と繰り返しても、やはり何も得られない。
これ以上パクると、相手にバレるということなのだろうか。
「ゆるパク! ゆるパク! ゆるパク! ゆるパク!」
蜂、毒蛇、ムカデなど、毒を持っていそうな生き物を見掛けたら、片っ端からゆるパクしていたら、毒作成と毒耐性のレベルが2に上がった。
鳥を見掛けた時も、片っ端からゆるパクしたのだが、飛行レベルは1のままで、飛翔レベル1というスキルを得た。
空を飛んでみたいという思いがあるので、両方のスキルを試してみたが、飛行は魔力を使って飛ぶ感じで、飛翔は羽ばたいて飛ぶ感じのようだ。
ちなみに、現状ではどちらのスキルを使っても、僅かに滞空時間が伸びる程度で、飛んでいる感じはしない。
昼食は、アイテムボックスに入れておいた、蜘蛛の脚で済ませて、検証を続けながら歩いていると、探知魔法に複数の反応が出た。
もしかして人がいるのかと淡い期待を抱いて千里眼を使ってみると、イヌ科の動物のようだ。
こげ茶色の毛並みに、所々白い毛が混じっていて、ちょっとハスキーっぽい感じだ。
「鑑定……魔狼?」
どうやら狼の魔物らしく、数は探知魔法では六頭と出ているが、千里眼でみると子狼が二頭いるらしい。
魔狼の群れは、俺の前方を左斜め後方から横切るように進んでいる。
「数も多いし、子狼もいるから回避していこう」
魔狼の群れと鉢合わせにならないように、右側へ一旦避けてから左側へ大きく迂回する。
千里眼で観察すると、魔狼だけあって身体はかなり大きく、成体は牛ぐらいの大きさがありそうだ。
一方、子狼はまだ生まれてから日が浅いらしく、歩き方も危なっかしい。
足の太さが将来の成長を物語っているが、フワフワモフモフして愛くるしい。
「くっそカワイイじゃんか、そう言えば……おっ、あった」
ゆるパクのステータスを開いてみると、テイマーレベル2の表示があった。
レベル2で、どの程度の魔物や獣を手懐けられるのか分からないが、子狼ぐらいはいけそうな気がする。
できれば成体の魔狼を寝床に出来ないだろかと考えていたのが、レベル2で一度に六頭をテイムするのは無理だろう。
「テイムが無理なら……ゆるパク!」
魔狼からは、疾走レベル3、咆哮レベル4、牙砕レベル4、爪破レベル2などが手に入った。
これで硬い肉も食べられるのだろうか。
魔狼の群れをやり過ごし、コースを少し南寄りに修正して、再び森を歩き始める。
昨夜の教訓を活かして、今夜は早めに宿の準備もしたいし、寝床の改善策も見つけたいところだ。
羽毛を布団に出来るほど集めるには、相当な数の鳥が必要だし、綿のような植物も生えていない。
こんなことならば、最初の草地で草を刈って、アイテムボックスに放り込んでおけば良かったのだが、あの時はそこまで頭が回る状態じゃなかった。
「あぁ……やっぱり、さっきの魔狼をテイムして……なんだ?」
先程の魔狼達が向かった方から、猛烈な咆哮が聞こえてきて、探知魔法には反応が一つ増えていた。
「千里眼……ドラゴン、ではないのか?」
魔狼達と戦っているのは恐竜のような生き物で、鑑定には魔蜥蜴と表示される。
後ろ足二本で立った状態で、身長は3メートルを超えていそうだ。
「とりあえず、ゆるパク! おっ、失敗。ゆるパク、ゆるパク、ゆるパク……来た!」
四回ほど失敗した後で、魔蜥蜴のスキルの一部を奪取できたのだが、魔狼六頭の分も加わっているのだろうが、魔法阻害レベルが3に上がっている。
毒作成、毒耐性のレベルも上がっている所をみると、どうやら毒持ちのようだ。
魔狼達は、魔蜥蜴を四頭で取り囲んで激しく吠え立てている。
残りの二頭は、子狼を咥えて先に進もうとしているようだ。
魔蜥蜴を取り囲んだ四頭は、時折、噛みつき攻撃を仕掛けているが、鱗が硬いようでダメージは通っていないようだ。
魔法阻害のレベルは大蜘蛛よりも高そうだし、やはり蜥蜴というよりドラゴンに近い印象だ。
「あれ? 何で戻って……げぇ!」
先に進んだはずの二頭の魔狼が、こちらに戻って来るのを探知魔法が捉え、更に、その後ろから追って来る反応に千里眼を向けると、三頭の魔蜥蜴の姿があった。
二頭が追われているのに気付いたのか、救援に向おうとした四頭の内の一頭に向けて、魔蜥蜴が口から液体を吐きかけた。
「ギャゥン!」
まだ150メートルは離れているのに悲鳴が聞こえ、毒液と思われる液体を浴びせられた魔狼は魔蜥蜴に頭を食い千切られてしまった。
更に、もう一頭の魔狼も毒液を食らって動きを止めてしまっている。
「ヤベえじゃん、もう四対四だよ。ちっ、まずは、ゆるパク、ゆるパク、ゆるパク! んでもって、フレイムランス!」
新たに現われた三頭の魔蜥蜴に向って、ゆるパクを発動してスキルを奪い、レベル7相当の火属性攻撃魔法を撃ち込んでやった。
「ギャゥゥゥゥ!」
先頭を走っていた魔蜥蜴が火達磨になったので、残りの二頭の足も止まった。
だが魔蜥蜴の動きが止まったのに、魔狼達も驚いて足を止めてしまっている。
「ちっ、テイム! テイム! テイム! テイム! テイム……」
レベルが低いせいだろう、一発ではテイム出来なかったが、有り余る魔力に任せてテイムを連発して、四頭の魔狼を手懐けた。
「来い!」
俺の命令に従って、四頭の魔狼が駆け寄って来るが、同時に混乱から立ち直った魔蜥蜴達も動き出している。
「食らえ……ストームジャベリン!」
レベル8の風属性攻撃魔法三連発で、魔蜥蜴達は粉々に吹き飛んだ。
爆風が押し寄せてきたが、ゴーレムが盾になって防いでくれる。
「うわぁ……やりすぎたか?」
魔蜥蜴が居た辺りは、地面が大きく抉れて巨木も薙ぎ倒されている。
犠牲になった魔狼の死骸も吹き飛ばされてしまったようだ。
「クゥーン……」
「お、おぉ……そうか、お前らテイムしたんだよな」
四頭の魔狼が、ハァハァと舌を出しながら擦り寄って来る。
「おぉぉ……これは、想像以上にモフモフ」
「キャン、キャン」
「おぉ、かわぇぇ……って、痛っ! あれ、お前はテイム出来てないの? 一応、テイム!」
子狼の一頭をテイムし終えて、親子六頭の魔狼を仲間にし終えた。
同時に、これで硬い寝床の問題も解決されそうだ。
私が『ゆるパク』を書いた理由
切っ掛けは、知り合いの若いWeb作家さんの「自作も『ゆるパク』とか難癖を付けられるようにならないか心配だ」といった趣旨のツイートを目にしたことからでした。
『ゆるパク』って何だ? 初めて目にした言葉なので、ネットを漁る事から始めましたが、元ツイの是非は別にして、一人歩きした『ゆるパク』なる言葉に、少なからぬWeb作家さんが危惧を抱いている事を知り、『ゆるパク』という曖昧な言葉に憤りを覚えました。
書き手として出来る事は何かないかと考えた時に、『ゆるパク』なる言葉で思いっきり遊んでやる事を思い付き、この作品を書き始めました。
誤解してもらいたくないのは、盗作や剽窃を推奨している訳ではありません。
そうした行為は、クリエイターとしての才能を殺してしまう行為に他ならず、断固として反対です。
その一方で、創作の世界にはパロディーという楽しみ方があります。
法律に従い、サイトの規約に従って活動する限り、我々Web作家は創作に関して自由であるべきです。
『ゆるパク』などという言葉によって、萎縮してしまったり、パロディーの楽しみが失われるような事はあってはなりません。
だから、この場を借りて、若きWeb作家さんに伝えたい。
ルールを守って活動する限り、貴方達は自由です。
才能の翼を広げて、創作という大空に思い切り羽ばたいて下さい。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。