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転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます 作者:謙虚なサークル
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元暗殺ギルドの本領発揮です

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 空間転移で訪れたのはロードスト領、領主ガリレアの屋敷である。

 扉を開けて中に入ると、禿頭の大男が驚いた顔で俺を迎えた。


「誰かと思えばロイド様、それにレンじゃねぇか! 久しぶりだなぁ! オイ!」

「久しぶり、ガリレア! 領主の格好、似合ってるよ」

「ははは、ありがとよ! お前こそメイド姿が板についてきたんじゃねぇのか?」

「こわーい先輩に鍛えられてますから。それより本題に入っていい?」


 久々の再会を早々に切り上げ、レンは俺に話を譲った。


「悪いね。着いて早々。実は人探しを頼みたいんだけど」

「人探し、ですかい?」

「あぁ、イドという名の少年だ。年齢と背恰好は俺とほぼ同じ、幼少期に裏社会に身を置いていた可能性がある。直近ではバートラムで錬金術師をしていたんだが……知ってるかい?」

「知ってるも何も、かつてターゲットにしたことがあるぜ。若くして頭角を現した出自不明の天才錬金術師。まぁ下調べの段階で依頼者の逆恨みだとわかったから断ったがよ」

「筋の通らない殺しはご法度だもんね」


 ガリレアたちの暗殺者ギルドは世直しを目的に構成された組織だ。

 それ故か、罪のない者を殺すのは禁止しているのだろう。

 というかあいつも恨みを買い過ぎだろう。

 よそ者が成り上がっていくにはそれなりに無茶もしなければならないのだろうが、もう少し自重すべきである。


「てなわけで奴の過去はある程度洗っているからよ、行動パターンも。目星がつくぜ。行きそうな場所もな」

「おおっ! どこだ?」

「奴がねぐらとしているのは城の近くの研究所、中央街の住居……後は街から東の荒野に拠点を持っていた気がするな」

「イドは街から東の方向へ向かっていた。その荒野である可能性が高いな。詳しい場所はわかるか?」

「おう、大船に乗ったつもりで任せときな! 必ずイドとやらの居場所を突き止めてやるからよ!」


 任せろとばかりに分厚い胸板を叩くガリレアだが、相手はあのイドだ。

 そう易々と見つかってくれるとは思えないし、最悪の場合戦闘になる可能性もある。

 そうなった場合、ガリレアたちではどうしようもないだろう。戦闘能力に差がありすぎる。

 俺も一緒に行ければいいんだが、長期間城を留守にするわけにはいかないからな。


「そうだ、シロを呼ぼう」


 ポンと手を叩く。

 使い魔であるシロならば、俺と感覚を共有出来るので何かあってもすぐに空間転移で駆け付けられる。


「あの犬っころですかい? そりゃありがてぇ、連れてきてくれりゃあすぐにでも……って何してるんですかい?」


 俺がポケットから笛を取り出すのを見て、目を丸くするガリレア。

 これは犬笛。

 言うまでもなく犬にのみ聞こえる音を鳴らし呼ぶ為のものだが、魔術で強化しているのでその範囲は相当に広い。

 思い切り吹くと、空気の震える僅かな音だけが部屋に響く。

 そして、しばらく――


「おや、何か床が揺れてるぜ?」


 ドドドドドド! とうるさいくらいの地響きが聞こえてくる。

 どうやらもう来たようだ。俺が屋敷の大扉を開けた瞬間である。


「オンッ!」


 巨大な白い毛玉が俺に飛びついてくる。

 ぼふっと真っ白な毛皮に包まれ押し倒された。

 そしてベロンと大きな舌が顔を舐め上げる。


「な、なんだぁこいつは!?」

「何って……シロじゃないか」


 起き上がってシロの頭を撫でていると、それを見たガリレアが驚愕の顔を浮かべている。


「あの犬っころはせいぜい一メートルほどだったじゃないですか。それが何でこんなバケモンになるんですかい!? 五メートルは軽く超えてるぜ!」

「そういえば大きくなったなぁ。シロ」

「オンッ!」


 嬉しそうにブンブンと尻尾を振るシロ。

 以前は抱き上げられる程の大きさだったシロだが、今では逆に俺を乗せられるくらい大きくなっている。

 従魔というものは主人の魔力に呼応して強く大きくなるらしいが、いつの間にかこんなに大きくなってたのだな。

 今まではずっと一緒に過ごしていたが、最近はよく出かけているので気づかなかった。


「オンッ!」「オンオンッ!」「オンッ!」


 鳴き声と共にシロの毛皮がもよもよと動き、数匹の子犬が顔を出す。


「よしよし、お前たちも来てくれたんだな」


 そう言って一匹ずつ頭を撫でてやる。

 こいつらはプチシロとミニシロ。シロと共に俺についてきた魔獣だ。

 まだ小さいがこいつらもそのうちシロくらい大きくなるのだろうか。


「それじゃあみんな、ガリレアについて行ってイドを探して欲しい」

「オンッ!」


 シロたちの鳴き声が綺麗にハモる。

 こいつらの戦闘力はかなりのものだ。

 ガリレアたちと共闘すれば、イド相手でもそう簡単にはやられはしないだろう。


「ボクも行くよ。この間調合した薬で足跡の追跡が出来るかもしれないし」


 そう言って胸元から小瓶を取り出すレン。

 最近のレンは修行の成果もあり、色々な薬品を作り出せるようになっていた。

 ガリレアやシロの追跡能力にレンの薬学が加わればイドといえども追い詰められるかもしれない。


「よし、じゃあ任せたぞ。みんな」

「うんっ!」


 皆に別れを告げ、俺は城へと戻るのだった。

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