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「トランプのアカウント凍結」と「メルケルのツイッター批判」、多くの人が誤解していること

成原 慧 プロフィール

プラットフォーマーの責任

——いままでのお話は憲法と表現の自由の関係に重心がありましたが、アメリカではより具体的な法律においてはどのようなルールが定められているのでしょうか。

成原 アメリカでは、インターネットが広がり始めた1996年に「通信品位法」という法律が作られています。この法律の230条では、ユーザーが行った違法な投稿について、プラットフォーマーは責任を負わないというルールを定めています。ユーザーがプライバシーや名誉など他人の権利を侵害する投稿をした場合、ユーザーはもちろんその責任を問われる可能性があるのですが、場を提供したプラットフォーマーは責任を負わないのです。

他方で230条は、ユーザーが有害な投稿をした場合、それを削除したとしても責任を負わないというルールも定めています。つまり、削除したとしても削除しなかったとしても、プラットフォーマーは責任を負わないわけです。これは、プラットフォーマーにとっては非常に「おいしい」ルールですね。

〔PHOTO〕iStock
 

ですから、今回のアカウント凍結は、アメリカにおいては憲法との関係でも表現の自由の問題になりにくいうえに、通信品位法230条の観点からも違法ではないということになるかと思います。

ちなみにアメリカでも、通信品位法230条はプラットフォーマーに甘すぎではないかという批判があり、改正論も出てきています。

改正論には二つの方向があって、民主党の議員は、ヘイトスピーチやフェイクニュースなどについてもっとプラットフォーマーに責任を負わせようという方向の主張をしています。それに対して共和党、とくにトランプ大統領に近い議員は、プラットフォーマーは保守派に不利になるような恣意的な検閲を行っていると主張したうえで、プラットフォーマーの判断が恣意的なものにならないよう公平性を求める必要があるし、プラットフォーマーはもっと説明責任を果たすべきだとしています。

ちなみに、アメリカの通信品位法に比べると、日本のプロバイダ責任制限法はそれなりにバランスの取れたルールになっている面があるのではないかと思います。