台本を読むだけの“茶番劇”。「緊急事態」でも菅首相の言葉が響かない理由

最後まで「台本を読み上げながら」行われた菅首相会見

1月13日の会見で、下を向いて用意された「台本」を読み上げる菅義偉首相

1月13日の会見で、下を向いて用意された「台本」を読み上げる菅義偉首相

 菅義偉首相は1月13日、新型コロナウイルスの感染が拡大している大阪・京都・兵庫の関西3府県と、愛知・岐阜の東海2県、栃木・福岡の両県の計7府県に対して、特別措置法に基づく緊急事態宣言を決定し、午後7時から記者会見を行った。    菅首相は会見の冒頭、「みなさんも不安だと思うが、全国に拡大するのを防ぐため、宣言対象地域の拡大は欠かせない措置だ。あらゆる手段を尽くして取り組む。制約の多い生活でご苦労をおかけするが、国民のみなさんの協力をお願いしたい」と、下を向いて台本を読みながら訴えた。  菅首相は1月7日の会見で述べた「午後8時以降の外食の自粛」など4つの対策を示し、緊急事態宣言発出中の外国からの入国の一時停止を表明した。菅首相の冒頭発言の後は、いつものように山田真貴子内閣広報官(元総務官僚、安倍政権で秘書官)の司会のもと、記者の質疑応答が始まった。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長が菅首相の横に立った。  これまでの記者会見と同じように、内閣記者会(正式名・永田クラブ、官邸記者クラブとも呼ばれる)の幹事社2社が質問。その後、記者会の記者、外国メディア、ネットメディアの記者が質問し、40分で終了した。

記者が会見の続行を求めるも、「次の予定」を理由に強制終了

司会の「次の予定が」の声に、台本をしまって帰ろうとする菅首相

司会の「次の予定が」の声に、台本をしまって帰ろうとする菅首相

 菅政権の会見では珍しく、幹事社の質問には厳しい内容のものもあった。 「結果的に見通しが甘かったのではないか。すでに全国に拡大しているのではないか」(時事通信・大塚記者) 「五輪優先で対策が遅れたのではないか」(テレビ東京・篠原記者)  内閣支持率の急降下で、記者たちもやや強気になってきたのだろう。しかし菅首相は質問の時から台本を見ており、回答も問答集を読んでいる。  菅首相の回答は冒頭発言の繰り返しで、同じことを二度言う場面もあった。首相は政府の対策本部の会議で「福岡」を「静岡」と読み間違えて訂正もしないなど、“裸の王様”になっている。「そうした」「こうした」と言う時にトーンが上がって耳障りだ。NHKの長内記者の「国民の間に自粛疲れがあるのでは」という問いにも、「4つの対策を」としか答えなかった。  ブルームバーグのノブヒロ記者が「感染率は外国に比べて低いのに、医療崩壊が起きているのは、根本的に医療体制に問題があるのか」と聞いたが、菅首相は「国によって医療体制が違うので、比べることは難しい」としか答えない。  最後に質問したビデオニュース・ドットコムの神保哲生氏は「医療体制の質問に、外国と比較できないとしか答えなかった。体制を整えるのが政治だ。医療法の改正をするべきではないか」などと聞いた。  これに対して、菅首相は「議論、検討する」としか答えなかった。このやりとりは台本にはなかったようだ。山田氏は「次の予定」を理由に会見を強制終了した際、神保氏らが「(質問に)きちんと答えていない」などと、珍しく数人が会見の続行を求めて声を上げた(これは首相官邸の動画からはカットされている)。しかし記者会のメンバーは沈黙し、会見は終わった。
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会見をするたびに菅政権の支持率がどんどん下がっていく
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